超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

<span itemprop="headline">映画プールの幻想風景</span>

2010-01-14 17:13:02 | 無題

百貨店の映画館で、映画「プール」見る。
タイのチェンマイが舞台の映画。ゲストハウスの支配人として小林聡美(京子)が働く田舎に娘役の伽奈(さよ)が卒業旅行で訪ねてくる。けれどもビーちゃんというタイ人の孤児と半ば同居しているのでさよは不信感を持ち、情緒不安定になる。さよとビーちゃんは母の教えてくれた歌を一緒に歌って仲直りし、近所のお兄さん加瀬亮(市尾)や病気療養中のゲストハウスのオーナーもたいまさこ(菊子)と親しくなる。
最後に願い事をするおまじないの紙製の凧に燃料をつけた気球を皆で飛ばす。燃えるだけ燃えて跡形もなく消えて無くなるのよ、と菊子。魂みたいだ、とビーちゃん。夜の闇に飛んで行く紙の気球は何とも言えず幻想的だ。さよは母には家を捨てて自分と祖母を残したことが寂しかった、母は勝手だと不満を言うが、母の刺繍してくれたショールを羽織って旅から帰る。
市尾さんの車で送られて帰る途中、プールサイドで寝ているはずの菊子がお茶を町で飲んでいる光景が一瞬目に入る。その菊子は死んだようにプールサイドで眠っている、というような映画だった。
基本的にテレビドラマ「すいか」、映画「かもめ食堂」「めがね」と同様の配役なのだが、若い客層を取り込むためか、今回の映画は娘さよの視点で一貫して描かれている。
そのため、「かもめ食堂」や「めがね」で中心だった小林聡美やもたいまさこの颯爽とした自由な生き方という主題に対して、自由に母親が出て行って勝手なことをしていては家族としては堪らない、という現実的な批判の視点が付け加えられている。それゆえ、今までの一連の作品にあった、現実を忘れて小林聡美やもたいまさこの飄々とした自由な姿を見て元気づけられた解放感に加えて苦い後味が残る。
舞台はチェンマイ、かわいいタイ人の子供、定番の俳優陣、タイの珍しい風物とお膳立ては揃っているのだから、「自由が一番でしょう教」と家族の葛藤みたいな対立劇を持ち込まないでほしかった。
そうは言っても、並んで歩くタイの僧侶の群れ、夜にまぶしく光る紙の熱気球が飛んでいくようすなど、いくつかのカットはひじょうに幻想的で、映画の醍醐味を味わえた充足感はある。
これからもこの俳優陣の映画は作り続けてほしい。



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