最近ソニーから発売されたブルーノ・ワルターのステレオ盤のモーツァルト後期交響曲集を聞く。宇野功芳氏みたいに言えば、滋味豊かな演奏である。私はモーツァルトの交響曲を余り持っていない。有るのはベームとマッケラスとラインスドルフだ。ベームは実直で構成感が明確で堂々とした演奏。マッケラスは軽やかで明るい室内楽的な新鮮味のある演奏。ラインスドルフは粗削りで思い切りが良いところが取り柄。ラインスドルフはボストン交響楽団とのベートーヴェン交響曲全集を持っているが、これも粗削りで思い切りがよい演奏。トスカニーニの影響かと思われる。
ブルーノ・ワルターのモーツァルト集では仏ソニーのモノラル盤も聞き所満載である。ワルターはベートーヴェンもモノラルの方が良いという人もいるぐらいで、モノラル盤も侮れない。ワルターのベートーヴェン交響曲全集はモノラル盤はアンドロメダが手に入りやすく聞きやすい。けれどもユナイテッド・アーカイヴス社のモノラル盤はたっぷりとリマスターを掛けていて、雑音が少なくイヤホンでも聞ける音質だが、音が少々痩せている。ミュージック&アーツ社のモノラル盤は、音質はアンドロメダと大差ないが、第九が差し替え前の音源を使っていてアンサンブルが乱れているのが聞き物。
ワルターのベートーヴェン交響曲全集のステレオ盤は前に仏ソニーで出ていて、温厚な分厚いこれまた滋味豊かな演奏が聞ける。鈴木淳史氏は初めて買ったレコードがワルターのステレオ盤の田園だったと回想しているが、今思えばひじょうに暑苦しい熱帯の田園みたいだったなどと悪口を言っているが、ワルターのステレオ盤の田園は名演として名高い。他に田園を得意とした指揮者はクーベリック、マゼール、アバドなどで、全集でも六番を特別扱いしている。
私が今楽しみにしているのはシャイー&ゲヴァントハウス管のベートーヴェン交響曲全集で、私はブルックナー全集を聞いて以来シャイーの実力を良しとするし、シャイーはレコード芸術のインタビューで僕もいつかベートーヴェン交響曲全集を録音してみたいけどそんなもの聞きたい人がいるのか疑問だと謙遜していたが、ゲヴァントハウスの指揮者になって、ベートーヴェン交響曲全集を作るには最適の楽団じゃないか、チャンス到来だシャイーと密かに思っていたので全集の完成は悦ばしい。曲順を見ると交響曲の合間に序曲を入れているのは興をそがれるところだがシャイーには期待している。アンドラーシュ・シフのシューベルトピアノソナタが楽興の時や即興曲付きで廉価で再発売されるのもうれしい。
行く夏を名残り惜しんで聞いている滋味の豊かな温厚な音