原宿ラフォーレ6階で開催されている、ヤン&エヴァ・シュヴァンクマイエル展に行く。
ヤン・シュヴァンクマイエルはチェコアニメの巨匠。エヴァは夫人でともにシュルレアリストである。
まず最初に目に飛び込んで来たのは拾った物を合わせたオブジェ。巨大なえんどう豆のさや、木の枝、木の葉、石などで作られている。
それから粘土と写真や絵を組み合わせたオブジェ。粘土が突き出して三次元作品となっている。それから動物の化石のような古びた感覚のある創作オブジェ。ビーチコーミングには興味があるのでこの手の作品も参考になる。
次に切り絵を組み合わせた絵画や写真と絵のコラージュがシュヴァンクマイエルの本領を発揮しているように感じた。特に特撮アニメ映画で使うためのコラージュや国書刊行会の不思議の国のアリス、および鏡の国のアリスの挿絵に使われた写真と絵のアリスの世界のコラージュが素晴らしい。
それから同じく国書刊行会の小泉八雲の「怪談」の挿絵に使われた日本の版画とヨーロッパ絵画の不気味なコラージュが傑作だ。日本の妖怪を手本にした絵や版画がシュルレアリスム的グロテスクを醸し出していて見逃せない。
チェコのシュルレアリスムの感性がアリスや妖怪の世界にはまったときのコラージュの絶妙な表現には何度も唸らされた。チェコの大衆人形劇や大衆民俗絵画の伝統を背景に持っているところも奥深い。
チェコアニメ特撮映画の傑作「ファウスト」に使われた人間より大きい人形の展示にも仰天した。この世界が実際動くのだから特撮人形アニメにはぞくぞくさせられる。「ファウスト」は中世的魔術とシュルレアリスムの危うい共存で懐が深い。
新作「サヴァイヴィング・ライフ」は笑えない精神分析コメディだとシュヴァンクマイエルは語るが、中年男性の幻想的日常を特撮や写真と絵のコラージュで描く意欲作だ。フロイトやユングの写真が人形アニメで使われているのも独創的である。ア・デイ・イン・ザ・ライフのシュルレアリスム版と言える。物販売り場で国書刊行会の不思議&鏡の国のアリスと小泉八雲の「怪談」のシュヴァンクマイエルのコラージュが挿絵の絵本が欲しくて仕方がなかったが高くて買えなかった。
シュヴァンクマイエルのシュルレアリスム感覚満載の展覧会で大いに創作意欲を刺激された有意義な時間だった。
手作りで切り絵にされた日常が魔物とともにうねり始める