「コレクション日本歌人選・西行」が届いた。
数ある名歌のなかから、厳選された38首なので
誰もが耳にしたことのあるような歌が勢ぞろい。
① 風になびく富士の煙の空に消えて行方も知らぬわが思ひかな
訳 風になびいて富士の煙が大空に消えてゆく。私の思いも行方も知れず漂ってゆくことよ。
●「転がる石みたいに」という英語の慣用句もあるが、西行は「富士の煙の空に消えて」が当て所もないわが身の文学表現。
② 年たけてまた越ゆべしと思いきや命なりけり小夜の中山
訳 年老いて再び越えるとは思わなかった。運命なのだな、小夜の中山を越えることは。
●回想に胸を打たれる所がプルースト的。命なりけりと書いて運命なのだな、と読ませるのは見事。
③ 暇もなき炎のなかの苦しみも心起こせば悟りにぞなる
訳 絶え間ない無間地獄の炎の苦しみも、発心すれば、悟りにつながる。
地獄を歌によって追体験している、凄絶な歌。地獄のような現世でも、発心すれば、救いに変わる。
④ 鈴鹿山うき世をよそに振り捨てていかになりゆくわが身なるらん
訳 この憂き世を捨てて、鈴鹿山を越えるが、この先どうなるわが身だろうか。
●出家直後の心境を歌った一首。「この先どうなるわが身か」は、他人ごとではないな。
⑤ 願はくは花の下にて春しなん その如月の望月のころ
訳 できるなら桜の下で果てたいな。現在で言う三月の終わりの満月のときに。
●ザ・名歌。仏が入寂した頃、満開の桜の下で果てたいな、と人も羨む、風流出家の面目躍如。
世阿弥の「西行桜」では、花が咲くのも仏界との結縁なんだと言っているから、そういう意味で、花や月を詠んでいるなら、風流と仏教がうまく重なる。
満開の桜も実は仏なり常ならぬ世のただ中に出づ
数ある名歌のなかから、厳選された38首なので
誰もが耳にしたことのあるような歌が勢ぞろい。
① 風になびく富士の煙の空に消えて行方も知らぬわが思ひかな
訳 風になびいて富士の煙が大空に消えてゆく。私の思いも行方も知れず漂ってゆくことよ。
●「転がる石みたいに」という英語の慣用句もあるが、西行は「富士の煙の空に消えて」が当て所もないわが身の文学表現。
② 年たけてまた越ゆべしと思いきや命なりけり小夜の中山
訳 年老いて再び越えるとは思わなかった。運命なのだな、小夜の中山を越えることは。
●回想に胸を打たれる所がプルースト的。命なりけりと書いて運命なのだな、と読ませるのは見事。
③ 暇もなき炎のなかの苦しみも心起こせば悟りにぞなる
訳 絶え間ない無間地獄の炎の苦しみも、発心すれば、悟りにつながる。
地獄を歌によって追体験している、凄絶な歌。地獄のような現世でも、発心すれば、救いに変わる。
④ 鈴鹿山うき世をよそに振り捨てていかになりゆくわが身なるらん
訳 この憂き世を捨てて、鈴鹿山を越えるが、この先どうなるわが身だろうか。
●出家直後の心境を歌った一首。「この先どうなるわが身か」は、他人ごとではないな。
⑤ 願はくは花の下にて春しなん その如月の望月のころ
訳 できるなら桜の下で果てたいな。現在で言う三月の終わりの満月のときに。
●ザ・名歌。仏が入寂した頃、満開の桜の下で果てたいな、と人も羨む、風流出家の面目躍如。
世阿弥の「西行桜」では、花が咲くのも仏界との結縁なんだと言っているから、そういう意味で、花や月を詠んでいるなら、風流と仏教がうまく重なる。
満開の桜も実は仏なり常ならぬ世のただ中に出づ