超人日記・作文

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

富沢赤黄男の名句読む

2023-06-12 05:05:07 | 無題
〇恋びとはもぐらのようにぬれている
 抒情性にあふれた句、とある。む しろ、官能性が際立っている。
〇南国のこの早熟の青貝よ
 映像的な初夏の句、とある。これも異性を思わす官能的な句。
〇春宵のきんいろの鳥 瞳に棲める
 なんと日本画的な映像だろう。外界が目に住んでいる、というのは意表を突く。
〇貝殻の青き肌に雨くるよ
赤黄男は外界を官能的にみる感性に優れていたようだ。
〇絶壁へ冬の落日吹きよせられ
何とも、破壊的な句だ。日本的美意識に、意図的に緊迫感が向けられている。
〇賑やかなカルタの裏のさみしい絵
この句には、自画像という副題が添えてある。明るい世界に馴染めない自分がカルタに込められる。
〇黄昏は枯れ木が抱いている竪琴
竪琴には、ハープとルビが振ってある。枯れ木の想像上の音を高音の竪琴に例えている。夢ある句。
〇少年の雲白ければむく蜜柑
純真な少年の無垢さに、なぜか恥じらいが感じられる句。そう受け取れるのが、俳句の妙。
〇美しきネオンのなかに失職せり
他人事ではない事態が、耽美的にまとめられていて、救われる。
〇一本のマッチをすれば湖は霧
寺山が、マッチする束の間海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや、と真似した句。両方いい。
コメント
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