A&K の NOTES

あちこちスケッチ行脚 。映画館で映画を見ることが楽しみ。いつか何処かでお会いしましょう。

何者

2017-06-08 | 

本を読んだ。

★何者
著者:朝井 リョウ
出版社: 新潮社

直木賞(2012年下半期)作品である。
平成生まれの作家が何で直木賞?
映画化されたが観ていない。

就職活動に集中する学生群像物語ではあるが、
青春の臭いのまったくしない、閉塞感漂う、ある種、不気味な世界である。
《これが現代就活学生の日常実態》
といえば、それまでの話で、
《で、それがどうした?》

就活スタイルは時代とともに大きく変わってきたが
(パソコン、携帯等の時代になり、いっきに変わった。
持ってないとあるいは知らないと、就活そのものができない)
ひとり一人の学生にとって、その悩みと苦労は変わらない。
(何十年前の僕らの頃も変わらない)
若者は、常にいつも何者かになろうと悪戦苦闘する。

登場するのは就職活動する男女数人のみ。
まるで半径1キロメートルの範囲の中で蠢いているような閉塞感を感じた。
同年代の若者が、互いを意識し監視しているようにさえ思う不気味な日常。
面と向かっては素直な言葉を言えず、ツィッターの世界で自分の想いをつぶやく。
互いにツィッターを覗きながら、身近な生身の人間を瀬踏みをする。
《これは密室劇か?》
とさへ感じた。

以前に、朝井さんの《桐島、部活やめるってよ》を読んだが、
ある状況を設定し、そこに蠢く高校生の姿を観察描写した作品だった。
《箱庭の世界を作り上げ、その中で生息する人間を観察する》
瑞々しい観察力に驚いた。

人生経験を積み重ねることによって少しずつ世界が広くなり、
登場人物に多様性が出てくると、
彼の観察眼力を生かしたさらに面白い物語が期待できそうだ。

コメント
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