映画を観た。
★THIS IS ENGLAND
少年が海に向かって投げるのは、いわゆるUKのイギリス国旗ではなく、白地に十字マークのイングランド国旗である。このラストシーンが、未来に向け、一人の「大人の個人」として自立しようと決意する瞬間。そこで突然、映像は消える。見事な青春映画である。
80年代のイギリスといえば、ダイアナが週刊誌を賑やかにしてくれた時代と記憶する。そして、あの「鉄の女サッチャー」の時代であり、彼女が指揮した「フォークランド戦争」を思い出す。「紛争」というか、「戦争」というかはともかく、数ヶ月戦い、イギリスの勝利で終了したが、軍事力で勝っていたはずのイギリス側が思っていた以上に苦戦した。人的、物的被害も相当なものだった。 数年後、メキシコワールドカップ、マラドーナの活躍などで、アルゼンチンがイングランドに勝利し、アルゼンチンは狂乱乱舞した。いまでもあのはしゃぎぶりを思い出す、20年以上も前のことである。
映画は、80年代イギリスの一断面を見せてくれた。
不況と貧困の中で生きる青年たちの、はけ口を吐き出すような、あるいは吐き出しようのないような、やるせない物語。当時のファッションや、スカやレゲエ、そしてパンク、ニュー・ウェイブなど流行した音楽がBGMとして流れ、ある種のノスタルジーを感じさせるが、あの時代の閉塞的状況は、現代の若者にもどこか通じるような気がした。経済、政治状況が苦しくなると、保護主義が復活し、右翼勢力が勢いを増し、排他主義に陥る。ちょっとやばい。
パソコンも携帯もまだ日常化していないアナログ時代。
パンクのリズムと、アコースティックなメロディーが同居して、ちょっと可笑しいが、そんな時代もあったかと振り返ったが、パンクとスキンヘッドがくっつき、極右になると、不気味だ。そんな気まずい雰囲気の時代感を鮮やかにきりとって見せてくれた。