中高年の女性で高脂血症の患者さんに多いのだが、三、四ヶ月振りにやって来て、しれっと診察室椅子に坐られる。。
何となく用向きはわかるのだが「どうされました」と聞く。
「いえ、薬が無くなったので取りにきました」と微かな後ろめたさを漂わせながら答えられることが多い。ここでどう答えるかが難しい。医者によって答えが違って来るだろう。若い医者は理詰めのことが多いだろう、大学病院の教授は指導的に対応するだろう。とは言っても、こうした患者さんは圧倒的に町医者にやってくる。町医者組みやすしと思っておられるのだろう?。
掛かりつけ医として既にある選択がなされているので、私の答えもそれに沿ったものなのかもしれないが、「時々飲み忘れるものですから」という聞かず答えられる言い訳に、「これからは一日置きに飲んで下さい」と間髪をいれず答え 、念を入れるようにしている。一日置きにきちんと飲むのは実際には難しいのだが、患者さんの心理に歩み寄って、まずいくらかでも実利を確保する手法なのだ。
高脂血症のような自覚症もなく、高血圧症や糖尿病ほどには恐さが市民に浸透していない病気では、医者の言葉をすり抜けて周りの無責任な「飲み始めたらやめられなくなるよ」や、テレビで流れる夢のように元気になるサプリメントの広告などの情報によって心が揺れる患者さんが、特に女性、結構多い。ここで、一発逆転を狙うのは、さはどうまくゆかない。少しではあるが実利を確保しながら時間を掛けて外堀を埋めてゆくのが良い方法のようだ。