遠い昔、外国に行った時は政治と宗教は話題にしない方が宜しいとアドバイスを受けた。そんなものかと思って気を付けたが、実際には敬意と理解があればさほどではなかったように記憶する。殆どの人は違いを認め、物別れは当然とする姿勢で対立を避ける智慧を持っているのだ。
むしろ日本の方が皆同じという感覚が蔓延しているので、些細なことが対立の原因になるところがありそうだ。
宗教は日本では話題になることは殆どなく、宗旨の違いなどよくわかっていない人も多そうで、笑いのネタにはなっても熱い議論になることは少なそうだ。政治のことは結構話題に上がり、あそこは駄目あいつは駄目と驚くほど簡単な決め付けがされ、私などはびっくりして食べているものを吹き出しそうになってしまう。みんな自分と同じ考えだろうと思っている人が多いのだ。だから厳しい決めつけ表現も通るという感覚があるらしい。少なくとも同業者の会合ではその傾向が強い、異業種の友人達でも似たような決めつけは時々ある。
私は年を取っても半世紀前の学生運動の心情が残っているので、そうかなあと思うことも多いのだが、真っ向から反論することはしない。まあ親しく信頼する友人でも、そのあたりは微妙に違い、確かに政治のことは議論の対象にしない方がいいのかなと感じる。
来る者は拒まず去る者は追わずと仕事しているし、誰でも病気になるから、仕事では宗教政治は白紙で通している。希に今度はこの人をと診察室で選挙運動をされてゆく方もおられるが、口は重宝で、「はいはい」とお答えしている。