日本はほぼ単一民族国家のせいか、物事に均一に反応する傾向がある。斉唱になってしまうのだ。前線臨床医の私は、薬の使われ方を見ていてそれを強く感ずる。
高血圧の薬のARB、今話題のディオバンもその一つ、が出てきて僅か三年ほどで日本で使われる降圧剤使用額のトップに躍り出てしまった。確かにARBには好ましい面があるのだが、既存の薬を押しのけるほどのものかには疑問もある。しかし新薬で良いとなると瞬く間に、大多数の医者が新薬に移行してしまう。その背景に薬価(値段)が高い新薬を売ろうとする利潤第一の薬品メーカーの猛烈な売り込みがある。全国津々浦々で、頻回に開催される薬品メーカー後援の勉強会の講師は謝礼を受け取る手前?、どうしてもそのメーカーの薬を褒めてしまう。聞いている方は大学の教授が勧めるのだからとその気になりがちだ。
現在、日本ではARBが降圧剤の額量とも一位となっているが、諸外国ではそうではない。新薬は高価で、医療費のことを考えれば、同等なら廉価の薬を使うのが一般的だからだ。こうした事実を臨床医の多くは知らないというか知らされていない?。日本では医師も患者も費用対効果の感覚が薄い。厚労省と支払い側は何とかして費用を減らそうと躍起になっており、大きな乖離がある。
今、降圧剤のARBに代り糖尿病治療薬DPP4阻害剤が白熱の売り込み合戦になっている。一年間でDPP4阻害剤j関連の薬品メーカー後援の勉強会が三十回になる。一地方都市でこのありさまだ。そして高価なDPP4阻害剤はうなぎ登りの売り上げを示している。DPP4が優れた薬としても、それ一辺倒になってしまうと冷静な判断がしにくくなるのではと危惧する。