駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

痛風レギュラー争いに加わる

2013年08月07日 | 医療

                                            

 痛風は古くは帝王病などと呼ばれ御馳走を食べている男性の病気だったのだが、現在は飽食の時代で、誰でも(男性に多い)罹患する庶民の病気になった。

 痛風は痛みという字が付いているので分かる通り、痛風発作や尿管結石で突然の痛みを引き起こす原因となり、救急外来受診を余儀なくさせる困った病気だ。典型的な痛風発作は足の親指の付け根が赤く腫れて猛烈に痛くなるもので、靴も履けなくなる。風が当たっても痛いくらいで、だから痛風と命名されたと言う説もある。

 尿管結石も痛風発作も痛みは耐えがたいが、医療機関を受診すれば様々な処置で痛みは軽減し数日で軽快することが多い。そのため医者は痛風に生活習慣病要因のベンチ入りは認めてもレギュラーポジションを与えてこなかった。

 ところがこの数年、痛風の原因物質である尿酸が動脈硬化を引き起こす悪玉として注目を集め始めている。動脈硬化を引き起こす悪役では悪玉と呼ばれるLDLコレステロールが筆頭で、治療対象として厳しく追及されてきた。尿酸の方は少々値が高くても痛風発作や腎尿路結石がなければ、要注意ぐらいで見過ごされてきたのだが、どうもこれも厳しく正常値以下に抑えた方が良さそうな研究結果が集積しつつある。

 なぜ痛風の元である高尿酸血症が比較的軽く扱われてきたかというと、尿酸が動脈硬化を引き起こすということが医学常識ではなかったからなのだが、その他に診療上の都合もあった。生活習慣病には肥満、高血圧、高血糖、高脂血症、運動不足・・と治療対象のレギュラーが揃っており、それだけで数種類の投薬が必要となり、同時に口やかましい食事運動指導をしなければ成らず、尿酸までレギュラー扱いにすると投薬数は増えるし、食事制限が更に厳しくなって、患者指導が難しくなる事情があった。

 しかし、どうもここにきて尿酸も成人病治療対象のレギュラーの座を確保しそうな勢いである。そうなると表面だけを見てされる薬漬けなどという批判に抗して診療しなければならない機会が増えそうで、少々憂鬱である。

コメント (2)
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