人間原理というのは物理学で、なぜ宇宙が現在の有り様であるかを、人間存在の条件によって説明しようとする考え方のことだ。何だか当たり前と言えば当たり前で、宇宙物理学を十分理解していない私でも、千載一遇に人類は生まれ、世界を認識し、世界を存在たらしめているという説明には成る程と思ってしまう。
もう一つの人間原理と呼んでよい実態が政治の世界に認められる。それは政治の世界では不都合不効率不公平な制度や仕組みでも、機械相手のようには改良廃棄が出来ないという原理だ。機械であれば、ここのシャフトは省ける、このコンデンサーは劣化していると、簡単に改良交換ができる。しかし、社会の制度や仕組みは人間が絡んでいるので、それを改良交換しようとすると被害を受ける人間が必ず出てくる。不都合不効率不公平な制度仕組みに生きている人間が居るのだ。例えば零細農家を部品のコンデンサーと同じように劣化したからと簡単には廃棄できない。
循環器の専門医であるT医師が、酒の席で農協なんて零細農家と自分達を守ることしか考えておらず日本の農業改善の足枷だ、潰してしまえと主張されても、人間原理が働いて、おいそれとは行かない。時代遅れ馬鹿共と呼んでも、血の通う人間が其処に生きている以上、簡単には改良廃棄が出来ないのだ。
そうはいっても一方にはそれによって大利益を得る小集団と小利益を得る大集団が居るわけで、歴史を紐解けば、結局人間も廃棄されて大量の血が流れてきたのがわかる。
これからTPPの交渉結果によっていくらかあるいはかなりの血が流れる。政治の人間原理だ。これがどのように報道されていくだろうか。