駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

「風立ちぬ」から伝わってくるもの

2013年09月18日 | 映画

                        

 一昨日は祝日で休みだったが台風で遠出が出来ず、機会を捉え「風立ちぬ」を見てきた。画の美しい透き通るような不思議な映画だった。

 物語は、飛行機設計を志す理知的な青年が肺結核を患う可憐で健気な少女と出会い、激動の時代に翻弄されながらも芽生えた恋を貫き、優れた飛行機を完成させて行く様を静かに夢のように描いてゆく。宮崎駿が大切にしたいと望むものと、美しいと思うものが融合した物語なのだろうと想像した。物語と言うよりも心と光景かもしれない。世俗に惑わされない純朴な心と美しい光景。その光景の中に風が吹いている。風は空間を呼び起こす。宮崎駿は野の緑、透き通る流水そして空の青と白い雲をはらむ空間を描く詩人のように感じた。

 声優に違和感はない。二郎が計算尺を駆使して飛行機を設計する理知的な人なのが自然に声に出ている。平板で独白のように聞こえるのは、物語が現実のようでいてどこか追憶のように展開されているのに符合している。

 戦争賛美だとか煙草を吸う場面が多くけしからんという人は「風立ちぬ」を見たとは言えない。物語というものを理解しない人達なのだろう。

 

コメント
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