三か月ほど受診されなかったKさんがやってきた。Kさんは高脂血症と頻尿症で五年前から通院している77歳独り暮らしの女性だ。
コレステロールの薬を飲んでいると呆けると言われて、**という健康食品を勧められたんでそれを飲んでいたら皮膚が痒ゆくなった、どうしたものかと言う。
「ここで出していた薬は厚生省が認めている薬で何百万人の人が飲んでいる薬です。このお薬で呆けるということはありませんよ」。
「ええ、そうなの。でも飲んでいると呆けると言われるとねえ」。
「誰ですか、そんなことを言うのは」。
「あの、素人なんだけどねえ。でもそう言われるとなんだか」。
「痒くなったって、文句を言いましたか」。
「会社は遠いからねえ」。
「それって幾らなんですか」。
「これ、一箱九万円。何箱も勧められているのよ」。思わず看護師と声を揃えて
「それは止めた方がいいですよ」。
勿論、世の中に100%正しいことなぞありません。進歩した医学でもまだよくわからないことはたくさんあります。薬が効かないこともあるし、副作用が出ることもあります。厚生省はそれを十分考慮して、有用有益と判断した薬に保険適応の認可をしています、薬の使用に利潤が絡んでいるのは事実ですが、行き過ぎ不正のないように監視されています。
生きていることは不安なものです、まして高齢の一人暮らしでは心細く感じられるのは当然でしょう。しかし、お為ごかしに其処に付け込む人達が後を絶たないのは非常に遺憾。
石川五右衛門の言葉を思い出す。