恐る恐る書いてみれば多和田葉子さんはどこか麗子像に似ている。別に恐る恐るでなくてもよいのだろうが、麗子像は作品によっては愛くるしいとは言えず、多和田洋子さんも女性作家なので、素朴な感想も余計なお世話に響くのではと気遣ってしまう。
「溶ける街透ける道」が寝しなに読む本に加わった。短い旅行記の形をした文章が一つ一つ美しい花瓶のような作品になっている。こうした端正でつややかな美しさを持った文章に出会うのは初めてのような気がする。睡眠薬の世話になることなく眠りに誘われる本が一冊増えた。
多和田葉子さんは写真でしか見たことはなく、それもぼんやりとした記憶だったので、こうした文章を生み出す人はどんな人なのだろうとインターネットで画像を探し拝見してみた。佳人というのではないが才能を秘めた異彩を放つ人に見えた。私の古びた灰色の脳細胞が光り、どこか麗子に似ていると閃いたのだが、三人ともいい顔はしないだろうな。