駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

街道を行くを読む

2014年04月12日 | 

                     

 司馬遼太郎のよい読者ではなく、街道を行くや考えたことなどを拾い読みする程度だが、知らないうちにそうなのかなるほどと自然に頷いている。司馬さんの文章は読みやすい。なぜかよく分からないがゴツゴツしておらず、すんなりと頭の中に入って行く。該博な知識も教えるというでなく、ご自身の考えも主張というでなく、まるで問わず語りのように書かれているからだろうか。

 周りに清明な空気を漂わせながら、目に入り耳に入るものを、時に同行者や土地の人と会話を交わしながら味わってゆかれる。それがまるでドキュメンタリーを見るように紙上に再現されている。

 司馬さんは悲劇的なものに親和性を持っておられるようだが、陰険悪辣誹謗といったものへの受容器に乏しいようで、ところどころに織り込まれている鋭い批評が温和に響くので見逃されているように思う。こうした分析は私ごとき浅学非才の町医者の手に余ることなのだが、一読者として首肯される方も居られよう。

 どうしてこんな事を書いたかというと、今の世を見てなんと言われるだろうかと聞いてみたい人だからだ。逆に言えば今の時代に司馬さんのような人が居ないのかも知れない。

 

コメント
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