安倍首相の施政方針演説を読んだ。今までと一寸趣が違う、野望の憲法改革が影を潜め、自画自賛でアベノミクスの効果を歌い上げ、成長と分配を押し出している。文字通りであれば、成る程その通りの立派なことを言われているが、今までの物言いとその後を記憶しているから、巧言令色少なし仁と感じる。タカ派的な政治色を薄め経済と福祉そして外交に言葉を費やしたのは参院選を前にした戦略的な言い回しに聞こえてしまう。平成以降の明日を切り開いていこうではありませんかと呼びかけられても、中々そうだと声を合わす気になれない。明日を切り開くには寛大誠実で公正な社会の醸成が必須なのに、真摯にと言いながら責任を感ずると言いながら謙虚にと言いながら、言葉だけで言い逃れ、実際には弱者切り捨て異論排除の体質が透いて見えてしまうからだ。
現役世代の生活保護世帯が減っていると言っているが、全体ではどうか?。介護認定基準と同じように現役世代の生活保護の基準が厳しく変わっているのではないかと、生活保護患者数が十年で二倍に増えた駅前医院の医者は聞きたくなる。都合の良い所を切り取って見せるのは宣伝の常套手段だが、消費者が学んでいるように有権者も学んでいる。
もし、本当に安倍首相が豹変し弱者の立場に立て異論を理解するようになっておられるとしたら、失礼な物言いになったかもしれない。しかし、この本当はというのも安っぽく堕した言葉になった。本当の本当は本当かと聞く虚しさ、売り家を唐様で書くに似て、平成をフェイクで締める三代目であってはならないと申し上げたい。