駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

インフルエンザ流行に頭を冷やそう

2019年01月31日 | 医療

   

 

 今朝は冷たい雨がそぼろに降っていた。風がないので寒さは身に染むほどではなく、これでインフルエンザも一段落かなと思いながら駅まで歩いた。インフルエンザは十日ほどの急峻な立ち上がりでピークに達し一週間ほどの猖獗後一か月ほどのだらだらした下り坂で消退してゆくのを常とする。唯、湿気が苦手なので雨が降ると一段勢いが落ちる。

 今年はインフルエンザの新薬ゾフルーザが出たので最前線の治療法に変化が起きている。今までの抗インフルエンザ薬と作用機序が違うので早く効く?とメーカーは宣伝しており、其れに乗った医師は殆ど全例にゾフルーサを出しているようだ。これはジャパニーズ現象とでもいうべきもので、メーカーの宣伝を鵜呑みに五種類の中から考えて選ぶ手間を省いた反応と見る。私は十人に一人くらいと症例を選んで使用している。

 新薬というのは思いがけぬ副作用が出ることがあり、慎重に使った方が良い。ゾフルーザに関しては耐性が出きやすいと専門家の意見が医学雑誌に載っていたし高価なので飛びついていない(ここにきて実際に耐性ウイルスが見つかったようだ)。インフルエンザは健康な人であれば自力で自然治癒する病気で、新薬も時の試練に耐え評価が定まってから使うのが良いと思う。尤もこうした意見を医師会の新年会などで匂わせると、ゾフルーザ一辺倒の外科医や耳鼻科医からじろっと睨まれるから要注意だ。

 もう一つ困るのはインフルエンザと診断するとネットで出ていた新薬と指名してくる患者さんだ。残念ながら私もこうした患者さんと言い争うのは避けてしまうので、ちょっと高いですよと確認して出すことになる。幸い今までのところ二名だけだ。

 薬品メーカのMRは宣伝マンでもあることを忘れてはなるまい。目に付いただけのネット情報を鵜呑みするのは考えものだ。

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