アブリル - どこにでもあり、どこにもない

岡崎平野を中心とする 植物 と カメラの対話

日本にセイヨウヒイラギはあるのか

2020-12-08 13:20:55 | みんなの花図鑑
この時期になると 園芸コーナーにクリスマスの飾りつけ用として 葉っぱがトゲトゲで赤い実の木が並べられるようになります。クリスマスホーリー(ホーリーというのはモチノキ科のことです)として売られている木には 3種類あって、ヨーロッパでは セイヨウヒイラギ、アメリカでは アメリカヒイラギ、そして日本では シナヒイラギが使われることが多いのです。日本在来のヒイラギも葉っぱはトゲトゲなのですが、赤い実はなりません。


これらの3種のモチノキ(ホーリー)は 葉で区別することができ、またそれがいちばん分かりやすい区別法です。

(上の図は 荒木武夫氏:葉と枝による樹木検索図鑑「ヒイラギ ・セイヨウヒイラギ・ アメリカヒイラギ・ シナヒイラギ 」より引用させていただきました。記して感謝申し上げます。)
いちばん左の ヒイラギだけは モクセイ科、その他の3種は モチノキ科です。
このように 葉を比べてみると、それぞれちがいがあり、(アメリカヒイラギとセイヨウヒイラギは 多少似たところがありますが)とくに シナヒイラギの四角張った葉と葉の先端中央についている大きな棘は他と違い 間違いようがありません。
モチノキ科の3種は 原産地を名前にして セイヨウヒイラギ、アメリカヒイラギ、シナヒイラギとなっています。(名前が ヒイラギで終わっていますが ヒイラギモチを省略してヒイラギと呼んでいると思ってください)

また セイヨウヒイラギは クリスマス・ホーリー、 アメリカヒイラギは アメリカンホーリー、シナヒイラギは チャイニーズホーリーとも呼ばれます。ホーリーというのはモチノキ科 (Ilex) のことです。

先ほども触れたように、3種の ホーリーのうち、日本では 圧倒的に シナヒイラギ(モチ)が多いです。
2か所の施設でそれを確認します。


最初の3枚は 京都府立植物園の シナヒイラギ(チャイニーズホーリー) です。最近の撮影です。

シナヒイラギは ウィキにもある通り「ヤバネヒイラギモチ」の名前のほうが正式のようで、ここの樹名板もその名が書いてあります。



とげとげの葉っぱと赤い実が可愛いので、この時期になると クリスマスの飾りつけ用に園芸店に出回ります。



とげとげの葉っぱは ヒイラギの葉に似ているので、ヒイラギの仲間と思われがちですが、ヒイラギは キンモクセイなどと同じモクセイ科であるのに対し、今日の主題である クリスマスホーリーと呼ばれる木は 赤い実の付くモチノキ科で 黒い実の生るモクセイ科とは全く別の種類の木です。



つぎは 安城デンパークのシナヒイラギ(チャイニーズホーリー、ヤバネヒイラギモチ)です。

ヤバネヒイラギモチの名は 葉が弓矢のやばねのような形をしているからですが、学名も Ilex cornuta で 種小名の cornuta は 四角張っている、角が尖っているの意で、四角張った葉に最大の特徴をもつモチノキの仲間です。
(トゲトゲは ヒイラギの棘と付き方が違うので、ヒイラギモチという呼称は 個人的にはあまり好きではありません)



シナヒイラギ(チャイニーズホーリー)の名の通り、原産地は 中国です。



クリスマスの飾りとして流通するときは (日本の)クリスマス・ホーリーとして売られていますが、この「ホーリー」というのは 赤い実をつけるモチノキのことを指し、本来のクリスマスホーリーは 「セイヨウヒイラギ」というモチノキを意味していました。



ところが 日本(を含め 東洋)には セイヨウヒイラギというモチノキ(ホーリー)は自生してなく、その代わりとして 同じモチノキ科(ホーリー)で葉にトゲがある このヤバネヒイラギモチをクリスマスの飾りつけに使うようになりました。
同じことが アメリカでも起きました。アメリカにも セイヨウヒイラギ(モチ)はなく、代わりに アメリカヒイラギというよく似たモチノキがあったので これをクリスマスの飾りつけに使うようになりました。



安城デンパークにあるヤバネヒイラギモチの 解説板です。


このように、シナヒイラギ(チャイニーズホーリー、ヤバネヒイラギモチ)は日本にいればよく出会います。

その次に (たま~に)見るのは アメリカヒイラギ(モチ)のほうです。

これは 安城デンパークに植わっている アメリカヒイラギ(モチ)です。園芸品種で、品種名を「サニー・フォスター」と言います。



アメリカヒイラギ(モチ)の葉のほうが いくぶんヒイラギに近いです。



これは アメリカヒイラギの花です(2019-5-22撮影)。
ですが、シナヒイラギもセイヨウヒイラギも、花では見分けがつかないほどそっくりです。


3つのホーリーのうち 残るセイヨウヒイラギですが、実は、私は 実物を見た記憶がありません。
そこで、ネットを検索したのですが、セイヨウヒイラギの画像になかなか 出会えません。

唯一、これは正しくセイヨウヒイラギという画像は ウィキペディアのこの画像だけでした。

あとは、皆、偽物でした(ToT)


以下に、いくつかその フェイク画像 をお見せします。皆さんも、最初の4種の比較画像と比べながら、本当の名を当ててください。


画像の木は 西洋ヒイラギでなく シナヒイラギ(チャイニーズ・ホーリー)ですね。
なお 「クリスマスのリースでおなじみのヒイラギは、欧米では・・・」の記事は正しいです。



クリスマスホーリーといえば西洋ヒイラギですが、画像は明らかに シナヒイラギモチ(チャイニーズホーリー)です。



これも同じくです。画像は クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)でなく、シナヒイラギモチ(チャイニーズホーリー)です。



セイヨウヒイラギでなく、シナヒイラギ(モチ)ですね。なお、花が咲いていますが、先ほどご紹介したアメリカヒイラギ(アメリカンホーリー)の花とそっくりです。したがって、ホーリーと名がつく木の花はみな同じようなので、花による区別は不可能です。




画像は セイヨウヒイラギではなく、シナヒイラギ(チャイニーズホーリー)です。



記事内容はセイヨウヒイラギ(モチノキ科)のことが書いてありますが、画像は(シナ)ヒイラギモチ(モチノキ科)が正解です。



西洋では セイヨウヒイラギ(クリスマスホーリー)が主としてクリスマスのリースに使われることは正しいようですが、いかんせん、画像は (シナ)ヒイラギモチ(モチノキ科)で 不適当です。
また 「日本古来の」は「ヒイラギ(モクセイ科)」のことで、「シナヒイラギ」(チャイニーズホーリー)は中国原産です。




セイヨウヒイラギの記事なのに、画像は シナヒイラギ(チャイニーズホーリー)を載せてます。
記事も「この株は・・・日本ではセイヨウヒイラギの名で通っています。」とありますが、写真のシナヒイラギ(チャイニーズホーリー、ヤバネヒイラギモチ)は これまで見たように、セイヨウヒイラギとは全く別の種ですので、明らかに間違った情報を発信しています。

・・・というわけで、正しくセイヨウヒイラギの画像で、かつ、日本で撮影された画像は 見つけられませんでした。

日本に セイヨウヒイラギはないのではないでしょうか。



8 コメント

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セイヨウヒイラギ (さざんか)
2020-12-08 15:50:58
アブリルさん、こんにちは。
これらのヒイラギは混同し易いですね。
近所で葉のトゲトゲがいっぱいある木を見たような気がします。
近いうちに確かめに行って来ます。
その時は「これがセイヨウヒイラギだな」と思ったのですが、確信がありません。
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Re: さざんかさん^^ (アブリル)
2020-12-08 17:34:04
さざんかさん、こんにちは~
それは、それは、ぜひお目にかかりたいものです(^^♪
今日も西尾市憩の農園へ行ってきたのですが、5カ所くらい ヒイラギモチ(シナヒイラギ)、ひとつだけアメリカヒイラギでした(´v_v`)
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アブリルさん、こんにちは (さざんか)
2020-12-10 16:17:24
再度お邪魔します。
今日セイヨウヒイラギと思えるを木を見に行って来ました。
垣根になっています。
アブリルさんが「唯一正しい西洋ヒイラギと思える画像」と書かれている物にそっくりです。
お見せしたいのですが、それだけ載せるのも変ですので、次回の「近所の花」と一緒に載せようと思います。
多分明日か明後日になるかと思います。
もう少しお待ち下さい。
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Re: さざんかさん(^^) (アブリル)
2020-12-11 10:28:35
再度ありがとうございます。
そうですか!楽しみに待ってますね
(チェック遅れて スミマセンm(_ _)m)
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本日のブログ記事からリンクをさせていただきました (koji)
2021-11-23 14:27:13
事後承諾になりますが、本日の記事(クリスマスホーリー)からリンクさせていただきました。ありがとうございます。
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Re: kojiさん^^ (アブリル)
2021-11-23 15:39:45
kojiさん、わざわざありがとうございます。
記事を使ってくださり、お礼を言わなければならないのはこちらのほうです(^^♪
安達太良の上の虹が すごくキレイ!
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黒葉西洋ヒイラギ (ユーレタイド)
2023-10-24 00:10:04
通りすがりですが、大変勉強になりました。
よく見かけるのがヤバネヒイラギで、サニーフォスターは黄色っぽい葉でした。
どちらもクリスマスリースで使われているような葉の形とは異なりますね。
アブリルさんが紹介して下さっているように、本物の西洋ヒイラギは見つかりません。
それでも近い物を庭に植えたくて、探して探して…、やっと見つけたのがブループリンセスという黒葉西洋ヒイラギでした。
葉の形が、本来の西洋ヒイラギによく似ています。
黒葉と言っても、冬季に歯の色が紫色になるようです。春から秋にかけては濃い緑色です。
このプリンセスは雌木で、赤い実を多く生らせるには、ブループリンスという雄木が必要なようです。
検索すると意外と出てきて、販売もされています。
ご参考まで。
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Re: ユーレタイドさん^^ (アブリル)
2023-10-25 00:18:51
ユーレタイドさん、こんばんは
なるほど葉の形はヒイラギ風ですね
私も、楽天の通販サイトに
Ilex meserveae Blue Prince
とあったので、そちらで検索してみました。
そうしたら
https://www.missouribotanicalgarden.org/PlantFinder/PlantFinderDetails.aspx?taxonid=265249&isprofile=0&
などにあるように、花は小さな白花で
Ilex x meserveae 'Blue Princess' (Blue Holly)
で画像検索すると、確かに赤い実のなっている画像がいっぱい出て来ました。
セイヨウヒイラギモチの園芸品種のようですね
情報有り難うございました。
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