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「葦」というイネ科の植物があります。
湿地に群生する植物で、古代から人が利用してきた、大変身近な植物でした。
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それもそのはず、日本は昔「葦原国(あしはらのくに)」と呼ばれていました。
「葦原(あしはら)」とは 葦(あし)の生い茂る原の意です。
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日本神話では、天上界の「高天原(たかまがはら)」、地下の世界「黄泉国(よみのくに)」の中間の世界、つまり日の本のヒトの世界を、高天原からみて、海辺にアシの繁茂するいまだ開けない(これから開き、治めるべき)土地と位置付けていたようです。
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さらに、日本神話では、伊邪那岐(いざなき)・伊邪那美(いざなみ)が最初に産んだ子(=神)が 「水蛭子(ひるこ)」と呼ばれる不具(体に欠陥/欠損がある)の子であったため、葦船(あしふね/あしぶね)に乗せられて流されてしまいます。
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パスカルの「パンセ」の冒頭の一節
L'homme n'est qu'un roseau, le plus faible de la nature; mais c'est un roseau pensant.
を今でも私たちは
「人間は自然のうちでも最も弱いひとくきの葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。」
と訳しています。
un roseau pensant が 「考える葦」で、葦(あし)と読んでいます。
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それがどうして 葦(ヨシ) と発音するようになったんでしょう?
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「8世紀、日本で律令制が布かれて全国に及び、人名や土地の名前に縁起のよい漢字2字を用いる好字が一般化した。「アシ」についても「悪し」を想起させ縁起が悪いとし、「悪し」の反対の意味の「良し」に変え、「葦原」が「吉原」になるなどし、「ヨシ」となった。」(wiki 「ヨシ」)
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要するに 音韻主義?で [Ashi] ではなく [yoshi] にしたわけですか?
それなら、「手足」の「足」はなにゆえ(あし)のままなのですか?身体の一部なのに?
「関西地方では、お金を意味する「お足」に通じるため、「アシ」の名前が残されている」(同上)
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2018-10-05 撮影
「ヨシキリ」という鳥がいます。
「葦」を切り裂いて中にいる昆虫などを食べる鳥のことです。
アシキリとは呼ばないので、ヨシキリという名前が付けられたのはそんなに古くは無いようですね
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吉原の語源
「2説あるよ。1つは、吉原の創設者・庄司甚内が東海道の吉原宿出身であったためという説と、 葦(=悪し)の 生い茂る低湿地帯だったのを転じて吉という縁起が良いものとしたという説があるよ。」(浅草観光のオトモ「吉原の遊郭の歴史を知ろう!」)
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