和牛商法の先駆者である、安愚楽牧場の経営行き詰まりが報道されています。
メディアの報道は「払い込んだ元金だけでも返してほしい」と憤る出資者を、「被害者」として取り扱っています。
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今回は、宮崎での口蹄疫、そして福島での原発事故という、事業者にとっては気の毒な事情が重なった結果の経営行き詰まりだと報道されています。
しかし、和牛商法への出資者の方々が損失をこうむっても、競馬で負けた人と同じレベルにしか見えないというのが、私の冷めた本音です。
他人のお金を預かり、きちんと利息を付けて期限に返すというビジネスは、とてつもないコストのかかるものなのです。
巨額のシステム投資、人材教育、国際基準に従った財務管理とディスクロージャー、業務監査、信用格付けの取得、株式公開…
気が遠くなるぐらい手間のかかる業務を常に走らせながら、お客様からお金を預けていただいているのが銀行です。
かたや、そのような負担を行うことなく、多くの人から資金集めを行う和牛商法の業者。
野球で例えるならば、銀行がメジャーリーグの球団で、和牛商法の事業者は町内会の草野球チーム。
船で例えるならば、銀行が最新鋭のイージス艦で、和牛商法の業者は小さな漁船。
そう言い切ることができるくらいの自負が、銀行マンにはあります。
メディアには、消費者教育という観点からも、和牛商法への出資者を安易に被害者扱いしてもらいたくありません。
「貯蓄」と「投資」は全く異なるものであること。
「投資」の場合は、全額を失っても人生が狂わない程度の金額に投資を抑えること。
そんな金融取引の基本を、このような機会を捉えて、繰り返し啓蒙するのも、メディアの責務です。
何でもかんでも「被害者=弱者」というような安易な図式をあてはめないでいただきたい、
メディアは安っぽい社会正義を気取らないでもらいたいものです。
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ところで、金融機関におけるカスタマー・デューデリジェンス(口座開設時の顧客審査と、取引開始後の定期レビュー)は、厳格化の一途です。
少し前までは、マネーロンダリング、すなわち犯罪収益等を正規の資金と判別がつかなくしようとする行為を感知して排除することが、金融機関への社会的要請でした。
しかし、今は、テロリストへの資金移動を排除することも、新たな要請として加わりました。
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マネーロンダリング管理の対象となる資金とテロ資金とは、全く異なるものです。
すなわち、マネーロンダリング管理の場合は麻薬、賭博、強盗、誘拐などの犯罪を通じて生まれた資金ですから、預金者や送金者の職業・業種、あるいは資金移動の頻度や金額などモニタリングなどを注意深くレビューすることで、ある程度把握することができると言われています。
一方、テロ資金は全く違います。
テロ資金の源泉は、多くの場合、合法だからです。
例えば、銀行マンである私が、勤務先から受け取る給与や賞与の一部を、過激派の活動家である学生時代の友人にカンパしたとします。
そうしたところ、その友人が所属する過激派集団が、皇居に向かってロケット弾を発射した。
この場合、私がカンパした資金の源泉は、あくまでもサラリーマンとして正当に得たものではありますが、結果的にテロ活動の支援資金として使われたことになります。
このような資金の動きを感知することが、金融機関に要請される時代となったのです。
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テロの脅威に立ち向かっている国々においては、単なる普通預金を開設する場合であっても、本人確認はもちろん、職業や所得水準を把握し、口座開設後は日常の資金移動を常にモニタリングして、不可解な動きがないかどうかを点検することが銀行の義務となっています。
時おり、テロを計画していた集団が未然に拘束されたという海外のニュースが流れます。
このような捕物の裏側では、金融機関におけるモニタリングで捕捉された情報も大いに活用されていると聞きます。
このような金融機関の管理強化の結果、ある国では人口の8%余りが銀行に預金口座を開くことのできない状況になっています。
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かたや、テロ行為の脅威が今一つ身近に感じられない日本の預金者は、またまだノンビリしています。
しかし、金融機関には、次々と厳しい要請が届いています。
「普通預金を開設するぐらいで、あれ出せこれ出せと銀行は言うな。」
「私は、まともな職業人。そんな私を、銀行は疑うのか」
というようなお叱りを受けることが、これからは更に増えるでしょう。
でも、それは、犯罪収益の資金洗浄、そしてテロリストへの資金移動をくい止めようとする社会の要請によるものなのです。
言ってみれば飛行機搭乗前のボディチェックと手荷物検査と同じこと。
ですから、ご理解ご協力を宜しくお願いします。
m(__)m
メディアの報道は「払い込んだ元金だけでも返してほしい」と憤る出資者を、「被害者」として取り扱っています。
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今回は、宮崎での口蹄疫、そして福島での原発事故という、事業者にとっては気の毒な事情が重なった結果の経営行き詰まりだと報道されています。
しかし、和牛商法への出資者の方々が損失をこうむっても、競馬で負けた人と同じレベルにしか見えないというのが、私の冷めた本音です。
他人のお金を預かり、きちんと利息を付けて期限に返すというビジネスは、とてつもないコストのかかるものなのです。
巨額のシステム投資、人材教育、国際基準に従った財務管理とディスクロージャー、業務監査、信用格付けの取得、株式公開…
気が遠くなるぐらい手間のかかる業務を常に走らせながら、お客様からお金を預けていただいているのが銀行です。
かたや、そのような負担を行うことなく、多くの人から資金集めを行う和牛商法の業者。
野球で例えるならば、銀行がメジャーリーグの球団で、和牛商法の事業者は町内会の草野球チーム。
船で例えるならば、銀行が最新鋭のイージス艦で、和牛商法の業者は小さな漁船。
そう言い切ることができるくらいの自負が、銀行マンにはあります。
メディアには、消費者教育という観点からも、和牛商法への出資者を安易に被害者扱いしてもらいたくありません。
「貯蓄」と「投資」は全く異なるものであること。
「投資」の場合は、全額を失っても人生が狂わない程度の金額に投資を抑えること。
そんな金融取引の基本を、このような機会を捉えて、繰り返し啓蒙するのも、メディアの責務です。
何でもかんでも「被害者=弱者」というような安易な図式をあてはめないでいただきたい、
メディアは安っぽい社会正義を気取らないでもらいたいものです。
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ところで、金融機関におけるカスタマー・デューデリジェンス(口座開設時の顧客審査と、取引開始後の定期レビュー)は、厳格化の一途です。
少し前までは、マネーロンダリング、すなわち犯罪収益等を正規の資金と判別がつかなくしようとする行為を感知して排除することが、金融機関への社会的要請でした。
しかし、今は、テロリストへの資金移動を排除することも、新たな要請として加わりました。
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マネーロンダリング管理の対象となる資金とテロ資金とは、全く異なるものです。
すなわち、マネーロンダリング管理の場合は麻薬、賭博、強盗、誘拐などの犯罪を通じて生まれた資金ですから、預金者や送金者の職業・業種、あるいは資金移動の頻度や金額などモニタリングなどを注意深くレビューすることで、ある程度把握することができると言われています。
一方、テロ資金は全く違います。
テロ資金の源泉は、多くの場合、合法だからです。
例えば、銀行マンである私が、勤務先から受け取る給与や賞与の一部を、過激派の活動家である学生時代の友人にカンパしたとします。
そうしたところ、その友人が所属する過激派集団が、皇居に向かってロケット弾を発射した。
この場合、私がカンパした資金の源泉は、あくまでもサラリーマンとして正当に得たものではありますが、結果的にテロ活動の支援資金として使われたことになります。
このような資金の動きを感知することが、金融機関に要請される時代となったのです。
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テロの脅威に立ち向かっている国々においては、単なる普通預金を開設する場合であっても、本人確認はもちろん、職業や所得水準を把握し、口座開設後は日常の資金移動を常にモニタリングして、不可解な動きがないかどうかを点検することが銀行の義務となっています。
時おり、テロを計画していた集団が未然に拘束されたという海外のニュースが流れます。
このような捕物の裏側では、金融機関におけるモニタリングで捕捉された情報も大いに活用されていると聞きます。
このような金融機関の管理強化の結果、ある国では人口の8%余りが銀行に預金口座を開くことのできない状況になっています。
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かたや、テロ行為の脅威が今一つ身近に感じられない日本の預金者は、またまだノンビリしています。
しかし、金融機関には、次々と厳しい要請が届いています。
「普通預金を開設するぐらいで、あれ出せこれ出せと銀行は言うな。」
「私は、まともな職業人。そんな私を、銀行は疑うのか」
というようなお叱りを受けることが、これからは更に増えるでしょう。
でも、それは、犯罪収益の資金洗浄、そしてテロリストへの資金移動をくい止めようとする社会の要請によるものなのです。
言ってみれば飛行機搭乗前のボディチェックと手荷物検査と同じこと。
ですから、ご理解ご協力を宜しくお願いします。
m(__)m