学生柔道の名門 天理大学が、上級生が下級生に暴力をふるったという事件で揺れています。
今後の調査で、この部内暴力が常態化していたかどうかも明らかにされてくるでしょう。
学生スポーツの名門校における不祥事の報道に接して、私が思い浮かべる海外での事例があります。
2011年に米国ペンシルバニア州立大学(PSU)で発覚した、アメリカン・フットボールチームのアシスタント・コーチによる性的虐待事件です。
おぞましい犯罪を起こしたアシスタント・コーチは、45の罪状により終身刑が言い渡されるだろうと報道されていました。
何よりも私が驚いたのは、大学に対する厳しい処分です。
米大学スポーツの管理組織である全米大学体育協会(NCAA)などから下された処分は次の通りです。
罰金6000万ドル(約60億円)
主要大会への4年間出場禁止
スポーツ特待生への奨学金給付を4年間停止
在学中及び入学予定のスポーツ特待生の無条件転校を認める
犯罪行為が確認された期間(1998~2011)の、チームとしての優勝記録を全て抹消
当該期間の競技収入没収 1600万ドル(約16億円)
当該時期の監督が有していた最多優勝監督という個人タイトルの剥奪、およびキャンパス内に立つ同監督の銅像の撤去
この厳しい制裁により、同校のフットボール・チームは少なくとも向こう20年間 再建することはできないと言われているようです。
このような厳しい制裁となったのは、アシスタント・コーチの犯罪行為そのものというよりも、その行為が学内で判明した際に、大学当局とフットボール部関係者が事実を隠蔽しようとしたことです。
NCAAは次のように説明しました。
「PSUのフットボール部は、あまりに大きな存在となりすぎた。その結果、自らの誤りを認めることができなくなった。これは大学スポーツからの明らかな逸脱だ。」
すなわち、PSUのフットボール部は、同校の誇りであり、学生と卒業生の団結の証であり、大学周辺の地域住民の生活にも貢献する存在だった。
そのような存在感の肥大が、強大な権力を生み、事件隠蔽を選択する原因となった。
だとすれば、問題の再発を防ぐために、このフットボール部の栄光と伝統を剥奪して、再出発させるしかないというわけです。
我が国の大学スポーツ関係者の多くも、この事例をご存知のはずです。
不心得者が現れる可能性をゼロにするのは難しいことかもしれません。
大切なことは、事が起きた後の対応です。
もちろん早稲田においても、学生スポーツポーツの範となるよう、自らを律していかなければなりませんね。