外苑茶房

神宮外苑エリアの空気を共有し、早稲田スポーツを勝手に応援するブログです。

桑港けし飛ぶ

2013-09-02 13:52:44 | 社会全般

週末は大地震に関連するテレビ番組が数多く放送されていました。
私の住む神奈川県は、南海トラフ大地震で大きな被害が予想されるとともに、関東大震災の震源地であるは相模湾沖合いにも程近いのですから、我が家にとって、まさに直面するリスクです。

CGを駆使した想定被害の画像は迫力満点。
大地震の威力と火災の恐ろしさに改めて驚きました。
その一方で、「個人レベルでの努力は、『焼け石に水』なのではないか」という感情も生まれてきます。
一緒にテレビを観ていた母(昭和2年生まれ)も、「これでは、どこかに疎開しないとダメねえ」と、戦中派らしく呟いておりました。
(^^;;

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古書店で、「日米架空戦記集成」(長山靖生 編。中公文庫)を買いました。
明治から第二次大戦末期までに発表された、米国を仮想敵国とする架空戦記の短編集で、「空中戦」「新兵器」「諜報戦」「さまざまな銃後」の4つのテーマ別に11作品が収録されています。

陸海軍から独立した空軍の創設に始まり、空中軍艦、殺人光線、太平洋縦貫トンネル等々、大国アメリカへの対抗策に関するアイデアが満載です。

その中に「桑港けし飛ぶ」(立川 賢。昭和19年発表)という作品を見つけました。
作者の立川賢さんの本名は波多野賢甫で、明治40年静岡県生まれ。
横浜高等工業学校応用化学科(現・横浜国立大学工学部)を昭和5年(1930年)に卒業し、インキ製造業、陸軍航空技術研究所員を経て、『新青年』に科学読物を多く発表
戦前に2回、直木賞候補となった人物です。

この作品も「新青年」に発表されたものなのですが、ずばり内容は原子爆弾!

1939年に米国コロンビア大学のハロルド・ユーリーにより発見されたウラン235を利用して、原子力の固形燃料と原子爆弾を日本が米国に先んじて開発に成功。
日本軍は、原子力推進の長距離爆撃機により太平洋を無着陸で横断し、桑港(サンフランシスコ)に原子爆弾を投下し、一瞬にして市街地を消滅せしめた。
この圧倒的な破壊力に驚いた米国は、日本に降伏

こんな空想科学小説が、昭和19年に一般雑誌に発表されていたのですから、当時の科学者の世界では、遠からず原子爆弾が実戦で使用されると考えられていたのでしょう。

なお、「新青年」(しんせいねん)は、日本で1920年に創刊され、1920年代から1930年代に流行したモダニズムの代表的な雑誌の一つであり、「都会的雑誌」として都市部のインテリ青年層の間で人気を博しました。
江戸川乱歩、横溝正史を初めとする多くの探偵小説作家の活躍の場となっており、平均発行部数は3万部前後、多い時は5~6万部に達していたと言われています。

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