紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

『きのう何食べた?』

2008-08-13 22:10:03 | 読書
 と、いうのがタイトルの漫画家よしながふみのマンガである。

「洗濯機が洗濯終えるのを待つ間だけ」と思って手をつけたら、ついのめり込んで、干すのがお昼前になってしまったのでした。

 ゲイで同棲しているふたりの(もしくはそれぞれの)男の日常をスルドく深く淡々と描いている。でもBLではないし、ゲイの事をもっとわかって!というメッセージマンガでもない。日常の小さなあれこれの出来事を描く、日本人のエッセイのような繊細さに溢れたマンガ。一般のゲイ視線で、というのが新味ではあるけど。そして、このゲイ視線、なかなかに鋭い問題提起があったりするのだ。

 余韻が残るというか、自分では気付かない盲点を発見する心地よさがある。
 苦笑しつつも、ま、しょうがないよね(実の両親が息子がゲイであることを内心なかなか受入れられない)とか、ほんの小さな仕事がいつのまにか気持ちをリセットさせてくれる、とか、自分がパートナーにしてほしくないことをされて激怒するも、パートナーが泣いて謝りながらも、自分の辛いところやさみしいところをャ鴻bと吐露してしまい、自分の価値観で相手を知らない内に縛っていたことに気付いて反省したりとか。

 それからDV(ドメスティックバイオレンス)を実に的確なのに、しかもショートストーリーなのに、あんなに温かに!?描いているので、思わず拍手喝采してしまった。絶対暴力なんかと縁がなさそうな加害者、「ウチに帰らないとまた伴侶に殴られてしまう」と帰宅しなければならないという激しい思い込みによって、自分の言葉の矛盾にすら気付かなくなっているDV被害者の精神構造とか、「自分がいなければあの人(伴侶)はいきていけない」という思いやりに満ちた優しい(または傲慢な)の被害者の人柄とか。
 なんとなく一般の人が思っているDV感を覆す、一般的なDVの実態を、爽やかに描いているなんて、凄過ぎ。

 読み終えた後、晩ご飯を作る気力が出て、手づくりの家庭料理が食べたくなるというオマケ付の1冊。もちろん食材は格安で購入して、ね(笑)
『きのう何食べた?』は、現在1巻(既刊)、以下続刊。