戦時中の物不足の時に、主人公の主婦(作者の母がモデルだと思われます)が、実家の父から貰った、舶来(懐かしい言葉ですね)の上等な毛布の数奇な流転の話です。
客用の毛布に、夫から北陸の義母へ、義母から満州にいた義弟へ、義弟戦死後はその若い未亡人へ、そして、再び戻ってきてからは客用の毛布に、戦後の混乱期に仕立て直して息子(作者自身と思われます)の外套に、最後は屑屋行きと、一度も貰ってきた当人は使うことなく終わり、いかにも当時の主婦らしい姿が描かれています。
作者の他の作品同様、驚異的な記憶力(本人および母親のものでしょう)により、戦時中の山の手の中流家庭の様子がくっきりと浮かび上がっています。
戦争、学歴、出世、コネなどに対して無批判な点や、ジェンダー観や結婚観に対する保守性は、発表当時から批判されていましたが、それから、五十年近くがたった今では、それらの古さが一層強くなっていることは否めません。
しかし、こういった生活や家庭を平易な文章で克明に描く作者ならではの筆力は、今の作家にはないこともまたますます鮮明になっています。
客用の毛布に、夫から北陸の義母へ、義母から満州にいた義弟へ、義弟戦死後はその若い未亡人へ、そして、再び戻ってきてからは客用の毛布に、戦後の混乱期に仕立て直して息子(作者自身と思われます)の外套に、最後は屑屋行きと、一度も貰ってきた当人は使うことなく終わり、いかにも当時の主婦らしい姿が描かれています。
作者の他の作品同様、驚異的な記憶力(本人および母親のものでしょう)により、戦時中の山の手の中流家庭の様子がくっきりと浮かび上がっています。
戦争、学歴、出世、コネなどに対して無批判な点や、ジェンダー観や結婚観に対する保守性は、発表当時から批判されていましたが、それから、五十年近くがたった今では、それらの古さが一層強くなっていることは否めません。
しかし、こういった生活や家庭を平易な文章で克明に描く作者ならではの筆力は、今の作家にはないこともまたますます鮮明になっています。
柏原兵三作品集〈第1巻〉 (1973年) | |
クリエーター情報なし | |
潮出版社 |