2010年に出た日本児童文学のガイドブックのリアリズム編で、こちらも50作品が選ばれています。
同様の本は1979年、1998年にも出ていますが、この本は日本児童文学者協会編という縛りが取れたせいか、選考範囲はかなりバランスのとれたものになっています。
特長としては、戦前および戦争直後の児童文学作品(有島武郎、椋鳩十、竹山道雄、壺井栄など)が復権したこと(従来のガイドブックは、1950年代以降の狭義の「現代児童文学」に偏っていました)、一人一作という総花的な縛りをなくして重要な作家は複数の作品を入れたこと(椋鳩十、今西祐行、山中恒、大石真、古田足日)、単独作品だけでなくシリーズ物も取り上げたこと(新十津川物語シリーズ、バッテリーシリーズなど)、90年代以降の新しい作品も取り上げられたこと(森絵都、梨木香歩など)があげられます。
巻頭に、編者の一人である佐藤宗子が、「日本の現実を生きる子どもたち」というタイトルで、大正時代から現代までの日本のリアリズムの歴史について概観しています。
それによると、かつて文芸の1ジャンルであった童話(読者は子どもに限定されていませんでした)が、50年代にスタートした「現代児童文学」により読者を子どもに特化したものになって、それが80年代から一般文学との境界があいまいになっていき、現在ではまた大人も含めた文芸の1ジャンルになったことが良くわかります。
ただし、佐藤の文章には書かれていませんが、かつての童話が芸術的な文芸であったのに対して、現在の児童文学はエンターテインメントを中心とした文芸(特に女性向きの)である違いはあります。
各作品の評者は、編者たち(佐藤宗子、藤田のぼる)が属する日本児童文学者協会評論研究会のメンバー(必ずしも日本児童文学者協会の会員とは限りません)を中心に、日本児童文学学会の会員など、評論、研究分野の人たちがほとんどで、先行研究なども紹介しつつバラつきのないものになっています。
ただし、対象期間が長くなったことと、50作品の限定されたことにより、重要な作品がかなり抜け落ちていますので、先行の同種の本と併用して使う必要があるでしょう。
同様の本は1979年、1998年にも出ていますが、この本は日本児童文学者協会編という縛りが取れたせいか、選考範囲はかなりバランスのとれたものになっています。
特長としては、戦前および戦争直後の児童文学作品(有島武郎、椋鳩十、竹山道雄、壺井栄など)が復権したこと(従来のガイドブックは、1950年代以降の狭義の「現代児童文学」に偏っていました)、一人一作という総花的な縛りをなくして重要な作家は複数の作品を入れたこと(椋鳩十、今西祐行、山中恒、大石真、古田足日)、単独作品だけでなくシリーズ物も取り上げたこと(新十津川物語シリーズ、バッテリーシリーズなど)、90年代以降の新しい作品も取り上げられたこと(森絵都、梨木香歩など)があげられます。
巻頭に、編者の一人である佐藤宗子が、「日本の現実を生きる子どもたち」というタイトルで、大正時代から現代までの日本のリアリズムの歴史について概観しています。
それによると、かつて文芸の1ジャンルであった童話(読者は子どもに限定されていませんでした)が、50年代にスタートした「現代児童文学」により読者を子どもに特化したものになって、それが80年代から一般文学との境界があいまいになっていき、現在ではまた大人も含めた文芸の1ジャンルになったことが良くわかります。
ただし、佐藤の文章には書かれていませんが、かつての童話が芸術的な文芸であったのに対して、現在の児童文学はエンターテインメントを中心とした文芸(特に女性向きの)である違いはあります。
各作品の評者は、編者たち(佐藤宗子、藤田のぼる)が属する日本児童文学者協会評論研究会のメンバー(必ずしも日本児童文学者協会の会員とは限りません)を中心に、日本児童文学学会の会員など、評論、研究分野の人たちがほとんどで、先行研究なども紹介しつつバラつきのないものになっています。
ただし、対象期間が長くなったことと、50作品の限定されたことにより、重要な作品がかなり抜け落ちていますので、先行の同種の本と併用して使う必要があるでしょう。
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