現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

皿海達哉「チンドン屋の雨やどり」なかまはずれ 町はずれ所収

2019-02-23 09:23:22 | 作品論
 小学校三年生の男の子と三人のチンドン屋の男たちの交流を描いています。
 チンドン屋たちがその日で商売を辞めるといったので、主人公の少年は彼らのそばを立ち去りがたくなります。
 演奏する曲などは出版年に合わせて新しくしてありますが、舞台は作者の郷里の広島のようです。
 チンドン屋は60年代後半から衰退し、この本が出版された70年代の前半にはほとんど姿を消したようです。
 おそらく作者は、滅びていくチンドン屋という文化への幼いころの郷愁を、この作品に託したのでしょう。
 懐かしい物への惜別、マイナーな物への愛着、繊細な少年の内面描写、新しい世界への恐れやあこがれが混じったような不思議な感情など、作者の世界の特徴がこの作品にもよく表れています。
 作者は「あとがき」で、同人誌「牛」の友人である日比(茂樹)や小倉(明)などへ謝辞を述べていますが、彼らは四十年以上たった今でも同人活動を続け、「プールのジョン」などの共作も出しています。
 「牛」の同人たちの息の長い活動に敬意を表したいと思います。

0点をとった日に読む本 (きょうはこの本読みたいな)
クリエーター情報なし
偕成社

 
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きたやまようこ「いぬうえくんがわすれたこと」

2019-02-23 09:18:57 | 作品論
 人気絵本シリーズの第5作目です。
 大事なことを忘れること、忘れないようにする覚えかたなど、この作品でも作者は幼い読者に大事なことを伝えようとします。
 冒頭で、気のいいお人好しのくまざわくんとしっかり者で少し図々しいいぬうえ君のキャラクタ設定が、いつものようになされますが、この作品ではあまりうまく生かされていません。
 また、お話が観念的で教訓的な部分が多すぎて、このシリーズの良さである物語のおもしろさやユーモアが弱く、読者はあまり楽しめないものになっています。

いぬうえくんがわすれたこと (いぬうえくんとくまざわくん)
クリエーター情報なし
あかね書房
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吉村萬壱「家族ゼリー」虚ろまんてぃっく所収

2019-02-23 09:09:55 | 参考文献
 エロとグロで描く家族愛とでも呼べる作品です。
 ここまでグロテスクに描かれると、読んでいて吐き気を覚えるほどです。
 「ついていけないなあ」というのが、率直な感想です。

虚ろまんてぃっく
クリエーター情報なし
文藝春秋
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