現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

大江志乃夫「書斎の合理主義」書斎の王様所収

2019-02-21 09:21:00 | 参考文献
 1980年代前半における、蔵書家における理想的な書庫ないし書斎が紹介されています。
 著者は日本近現代史が専門の学者で、膨大な蔵書を持っているので、それらを効率よく検索するための電動式書架と、文章を効率よく量産するための上級ワープロが、いかに原稿執筆の効率アップにつながるかをやや自慢げに語っています。
 それから三十年以上がたち、ご存知のようにこういった書斎ないし書庫はすっかり時代遅れになっています。
 私自身の書斎を振り返ってみると、1987年までは、とにかくたくさんの本棚を用意することと、この著者同様にワープロの導入による原稿のディジタル化に集中していました。
 1988年に新しい家を建てたときには、壁一面の作り付けの書棚のある、パソコンないしワープロ通信用の専用電話回線を備えた書斎を作りました。
 1995年からは、WINDOWS95によるパソコンの導入とインターネット対応(初めはADSLでした)が図られました。
 その一方で、子どもたちの成長に伴って、彼らの個室のために書斎を明け渡しました。
 2012年に下の子の大学卒業に合わせて書斎を復活させてからは、天井までの四基の書棚(発想が古いですね)、光ネットワーク、ノートパソコン、ハンディスキャナ(その記事を参照してください)、携帯テキストエディタ(ポメラ、その記事を参照してください)、アーロンチェア(その記事を参照してください)、タブレット端末などを導入して、作業の合理化を図りました。

書斎の王様 (岩波新書 黄版 324)
クリエーター情報なし
岩波書店
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内田麟太郎 作、降矢なな 絵「ともだち くるかな」

2019-02-21 09:15:16 | 作品論
 オオカミを主人公にした絵本です。
 独りよがりなオオカミが、自分の誕生日をめぐっていろいろと考えすぎて独り相撲します。
 ドタバタストーリーの中で、生きていくうえで大切なことを、さりげなく読者に考えさせてくれます。
 内田麟太郎「文」でなく「作」になっているのは、絵本全体の構成を内田が創造しているからです。
 作者は、優れた絵本のライターであるだけでなく、敏腕な絵本のプロデューサーとして有名です。
 普通は編集者が選ぶことが多い絵描きさんも、作者が自分で指定する場合が多いそうです。
 この作品でも、降矢の迫力のある絵が、作者の物語世界にフィットしていて、楽しい絵本に仕上がっています。
 ところで、内田は2016年から日本児童文学者協会の理事長になりました。
 現在の児童文学における絵本の占めるポジションからいって、絵本作家が日本児童文学者協会の理事長になるのは至極妥当なことでしょう。
 私の所属する同人誌でも、同人の出版する本は絵本が増えており、毎月の合評会に提出される作品も、絵本の原稿がかなりの割合を占めています。
 幼年童話と絵本は、エンターテインメント作品に席巻されている日本の児童文学に残された、最後の聖域なのかもしれません。

ともだちくるかな (「おれたち、ともだち!」絵本)
クリエーター情報なし
偕成社
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磯田道史「穀田屋十三郎」無私の日本人所収

2019-02-21 09:03:30 | 参考文献
 映画「殿、利息でござる」の原作です。
 歴史学者の作者ですが、この本では小説(あるいはノンフィクション)風の書き方で、お話としては劇的になっていますすが、恣意的な感じが強くなっていて、評価は分かれるところでしょう。
 主人公たちをあまり美化して書くと、肝心の歴史的な事実によるインパクトが弱まってしまいます。
 作者は自分の強みである歴史学者としてのポジションを、確認しなおす必要があるように思えます。

無私の日本人 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋
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