今日までの数値はわかったとしても、明日どうなるかはわかりませんよね。それが限界です。自分たちにはそれがわかっていない、ということをわかっていないと困る。データを使って最後は人が判断をしないといけません。判断しやすくするためにデータは必要ですが。
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これは、銘酒「獺祭」を造っている山口県岩国市の旭酒造の社長さんのインタビューです。
数値は色々なことを語るけど、それが全てではないです。最後の最後はデータを蓄積してきた人の経験値が必要です。とは言っても、これは醸造の中でも世界で一番難しい日本酒の世界です。
多くの場合、この判らない部分を「職人ワザ」とか「勘」で片付けてしまいますが、この「獺祭」さんには、その職人である「杜氏」(職人)さんもいないのです。そこが根本的に大きく違います。
もっと単純で簡単な作業である(技術ではない)珈琲焙煎の世界でさえ、自称「珈琲焙煎士」なんて名乗る職人きどりの人が沢山います。
美味しい珈琲には「キレイな酸味」も「甘み」もあります。日本人の美味いと思う「甘み」を出すのは職人ワザではありません。良質の豆を買えば良いだけです。そして、不思議な話ですが、この「甘み」は一体どういう化学変化で起こったか、未だに判らないのです。誰にも変わらないのです。
職人だから「甘み」を出せるわけではありません。
何やら、麻酔の話に似てます。あの手術の時の「麻酔」ですが、この科学が発達した現代でも、何故「麻酔」が人体に効くのかという根本のメカニズムは解明されてません。
それでも「麻酔」は使われるし、杜氏がいなくても「獺祭」のような「日本酒」は作れる。
珈琲も同じ。データは重要だが、全てではないだけだ。その不明な部分を「珈琲焙煎士」という言葉で単純に埋めているだけだ。判らないということが判っていないのではないでしょうか?たとえば,焙煎はその日の湿度で変わるのなら、具体的に数値tと操作方法を明示して、どう味が変わるか(予想出来るか)キチンと説明擦れば良い。今日は昨日より14%湿度が高い(当り前だが昨日より気温が低いから相対的に湿度が上がるだけだ)私もデータとして記入するが、一切考慮に入れない。
「蒸らす」こともありません。 「中点」なんて概念もありません。
生命判断、四柱推命、星座占い、印相、墓相、家相、果ては動物占い、タロットカード、おみくじ、どれか一つはその日の自分に都合が良いものがあるだろう。神頼みも「職人ワザ」も似たものでる。
普段は、やたらデータ(数値)を羅列して、都合が悪いと「職人技」と来る。
本当の職人は目の前で見せてくれるが、決して真似が出来ない世界を見せてくれる、だから大工さんは素敵ですね。
「珈琲焙煎士」なんて資格はないのです。
安いキロ500円のブラジルを煎り、キロ5000円のブルーマウンテンの香りと酸味が出れば、その人は珈琲焙煎士です。