ケパとドルカス

『肝心なことは目では見えない』
これは星の王子さまの友達になったきつねの言葉。

仇(かたき)を裁くな! エエッ?

2013年03月05日 | 随想

Photo  広島弁がブームらしい。らしいと言うのは、確認してないから。でもドラマで聞くことも何度かあった。役者が上手に広島弁を言ったとしても、広島人には「なーんか、違う」と分かるのはどこも同じだ。私がどんなに東京言葉で話したつもりでも、江戸っ子にはあっさり「あのぉ、どこか、西の方の方ですね」と見破られてしまうのだ。
 それで・・・・最近私は東京同化志向を放棄、広島弁で堂々と話すことも増えた。最大の理由の一つは、自分のネイティブ言語(発想・思索とか夢で無意識で使っている言葉)は広島弁なのだ。広島弁を抑圧することなく、大切にしてやりたい、そうしなければ思考が伸びない、そんな思いからだ。

 ともあれ広島弁で困る言葉がいくつかある。二つほどおもしろおかしく紹介したい。
「かたき」は「仇・敵」ではない。
 「かたき」と言う言葉がある。例えば、我が家にリンゴが箱で届いたとする。私はリンゴが大好物なので、当然そればっかりムシャムシャと齧(かじ)っていると、母がよく「かたきに食べんさんな」とたしなめる。この「かたき」とは無論、仇の意味ではない。「ばっかり」のことを指している。

「さばく」は「裁かない」
 さらに面白い言葉がある。例えば昔、はるか遠い東北の地方からお嫁に来てもらった人がいて、その夫君から「新妻にいきなり泣かれ」て困ったとの報告があった。「どしたんじゃ?」と当然聞く。

Photo_2 「朝、新居から勤めに出ようと行きがけに、荷物がある部屋の方を見ながら『さばくなや』と妻に言ったら急に泣き出した」と。そして「私、あなた(夫)を裁いてなんかいません」と。
 広島弁で「さばく」と言うと、「散らかす」という意味がある。つまりこれは「(まだ開いてない荷物は自分が解くので)散らかさないで(やらないでおいて)くれ」という意味で夫は言ったのだ。とんでもない誤解なので、聞いた私たちは大笑いをしてしまった。

ここで白状すると、実は広島弁で言う、ということ自体には大きな注意書きがつく。今でこそあまり語られなくなったが、広島ワースト認知に「ピカドン」と「やくざ」がある。前者はさておいて、映画にもなった指定暴力団の抗争劇には、「広島弁」が大いに用いられた。なぜ?広島弁は「コワイ」のである。
 学生時代にしばらくぶりに帰郷し、広島駅から芸備線に乗った。しばらくすると、何だか後ろの席の方で喧嘩が始まった。最初「困ったな」と思ったが、でもなんだか変だ。おそるおそる後ろを覗くと、なんと普通に楽しくおしゃべりしている。「ええっ!」と。広島弁は喧嘩言葉で、コワイのだ。だから広島弁を使う時は、怖くないように、威圧感を与えないように気を遣わなければならない。これは愛する広島弁への注意書きである。  ケパ

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