(原題:Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull)おそらくは近い将来作られるであろう“新シリーズ”への繋ぎの役割を果たす作品であり、それ以外は何ら存在価値のない映画である。
本作の時代設定は1957年だ。映画の中では前三作から約20年の時が経過し、地球上にある秘境・魔境の探索は一段落して宇宙開発と核戦略が注目の的になる。第二次大戦前において、辺境の地でムチを片手にナチスや怪しい邪教集団なんかと戦ってきた、往年のヒーローであるインディ・ジョーンズの出番は少なくなってきている。有り体に言ってしまえば“時代遅れ”なのだ。
ただし、いきなり主役を交代させての心機一転となると、興行的には難しい。そこで何とか“引退の花道”みたいな筋書きをデッチあげ、次なる展開の布石にしたかったと思われる。そういう積極的とは言い難い製作動機のせいか、作劇もアクション場面も弛緩しきっている。
序盤の米軍基地でのソ連軍との追いかけっこは、いくら“悪者が放った弾丸はすべて外れる”というお約束があるとはいえ、段取りとカット割りの切れ味は前三作とは比べようもないほど低レベル。続く核実験施設からの脱出劇は完全に“有り得ない”パターンであり、観ていて脱力するのみ。大学構内での大立ち回り、ジャングルの中でのカーチェイス、いずれもスピード感が欠如してまるで盛り上がらない。古代遺跡のセットと仕掛けはどこかで見たようなものばかりだし、虫の大群が出てくるのも二番煎じで、クライマックスは第一作「レイダース」の焼き直しのようでいてヴォルテージの高さはまるで及ばず。全体的にエピソードを行き当たりばったりに並べているだけで、ドラマにまるでメリハリがない。
作中ではインディは58歳という設定で、演じるハリソン・フォードは60歳をとうに過ぎている。老体にもかかわらず飛んだり跳ねたりの頑張りは敢闘賞ものだが、正直言って痛々しい。久々登場のカレン・アレン扮するマリオンとの“夫婦げんか”は確かに微笑ましいけど、どうも年寄り臭くてマッタリとなり過ぎてしまうのは痛し痒しである。わずかに目立っていたのは悪役を楽しそうに演じていたケイト・ブランシェットぐらいだ。
さて、主役が替わっての今後の方向性はどうなるのだろうか。冷戦時代に付き物のスパイ・アクション仕立てで行くか、今回のようなSF風味にするのか、いろいろとネタは考えられるが、観る側としてはとりあえず生暖かく見守っていくことにしよう(爆)。