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元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「EAST MEETS WEST」

2008-07-30 06:32:09 | 映画の感想(英数)
 95年作品。「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」と似たような無国籍風活劇だが、「ジャンゴ」同様ちっとも面白くない映画だ。時は幕末、サンフランシスコに到着した幕府の使節団から強奪された三千両を追う元水戸藩士(真田広之)と彼を狙うお庭番(竹中直人)らが繰り広げる和洋折衷ウエスタンで、監督は岡本喜八御大。

 どこがダメかというと、もう単純にヘタな点である。ストーリーはシンプルで納得できるが、演出がまったくサマになっていない。“西部劇を撮るのが映画を志したときからの長年の夢”と言う監督、実は西部劇の何たるかを全然理解していない。保安官、ならず者、インディアン、酒場での撃ち合いetc.それら西部劇の“外見”は確かにある。だが、なぜ西部劇かという確信犯めいたものがどこにもない。サムライを西部の荒野に置けば絵として面白いだろう、という低レベルの発想しかない。

 西部劇に描かれる世界がアメリカ人の精神的基盤だ、という一説が何かの文献に書かれていたが、それならばアメリカの原風景である西部劇に産地直送の(?)日本文化が入り込むカルチャー・ショックとディレンマを気合い入れて描くべきだろう。結局は損得勘定で動くフロンティア・スピリッツとやらと、義理と人情と忠義に厚い非合理的な大和魂の確執。シビアに描き込めば収穫は大きかったろう。だが、しょせん「独立愚連隊」の岡本だから、難しいこと言いっこなし、面白ければいいじゃん、の世界を目指している。それはそれでいいのだが・・・・。

 居合い斬り以外のアクション場面のヒドいこと。ただ、ピストルをバンバンぶっ放すだけで活劇にはならない。アクションは呼吸と間と段取りである。登場人物をバタバタ走らせるわりには背景の絵の切り取り方が素人っぽく、アクションを必然性ではなく帳面合わせみたいなやっつけ仕事で進めているから、画面にすきま風が吹きまくる結果となる。西部劇をネタに別の面白さをデッチ上げる手口では、マカロニ・ウエスタンの方が数段上。同じような設定の「レッド・サン」(71年)とも比べようがない。

 ガンマンに転身する元教師やら、手下の元生徒たちや、ウロウロするインディアンの皆さんも印象が薄く、悪役もインパクトがなく、残ったのはなんとか個人芸で盛り上げようとする竹中直人の涙ぐましいガンバリだけ。こうなったら時代劇と西部劇のパロディ場面を満載して思いっきりおちゃらけに走ればよかったものを。とにかく煮えきらない珍作に終わってしまった。エンド・クレジットの杏里の歌のなんと茶番なこと(脱力)。
コメント
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