元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ルディ 涙のウイニング・ラン」

2008-07-22 06:52:33 | 映画の感想(ら行)
 (原題:Rudy)93年作品。アメリカ映画得意のスポ根もの。でも、ここで描かれるクライマックスはワールド・シリーズの九回裏でもなく、オリンピック陸上競技のゴール前の攻防でもない。大学フットボールの公式戦、しかも主人公がフィールドにいたのはわずか27秒間、カッコよくタッチダウンするわけでもなく、難しいパスを決めたりもしない。ただ走り回っているだけ。かといって、シニカルに構えたり視点を別のところへ持って行って雰囲気を変えたりもしない。まことに正攻法でストレートなドラマ。そして十分感動的なのだ。

 70年代前半、フットボールの名門ノートルダム大学にあこがれる少年ルディ(ショーン・アスティン)だが、家庭の事情で進学を断念する。しかし、いつか家族の前でノートルダム大チームの一員としてプレイしたいという夢はふくらむばかり。4年間、父の経営する工場で働いて学費を稼ぎ、カレッジに入りノートルダム進学を志す。

 想像を絶する苦難の連続。一流大学に入学するため猛勉強する主人公だが、何度も何度も落ちる。もーあきれるぐらいに落ちる。おまけに好きな女の子からはフラれる。死ぬ思いで末席で入ったものの、名門チームにおいそれと入部できるわけがない。160センチしかない体格。技術もパワーもない。それでも熱心さに打たれて入部できるが、当然補欠である。来る日も来る日もレギュラー達の練習台をつとめて数年が過ぎ、気がつくと最終年度だ。自分を認めてくれたコーチは転任となり、4年生最後の試合は近づいてくる。果たしてルディはフィールドに立てるのか。

 この逆境を演出はまさに容赦ない筆致でたたみかける。通常だと“ここで状況は好転するだろう”と観客が思う部分はすべてその期待を裏切る。さらに、金もなく試合も見られない主人公の惨めさや、家族からも疎んじられる境遇も手加減なく描く。しかし、だからこそ、これをはねかえすルディの熱意が素晴らしく輝いて見えるのだ。言い忘れたが、実話である。フィクションとは違う、等身大の主人公の焦りや挫折、そして希望を観客が感情移入しやすいように盛り上げていく手法は、まさにあなどれない。

 監督はデヴィッド・アンスポー。知る人ぞ知るスポ根映画の快作「勝利への旅立ち」(87年)を手掛けて注目されたが、今回もクライマックスの試合場面は、怒涛のような高揚感で圧倒させる。ジェリー・ゴールドスミスの音楽。オリヴァー・ウッドのカメラ。スポーツ映画好きには見逃せない秀作である。
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