元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「水辺の物語」

2010-09-28 06:35:11 | 映画の感想(ま行)

 (英題:Woman on Fire Looks for Water )アジアフォーカス福岡国際映画祭2010出品作品。これはどうにも受け付けない映画だ。マレーシアの地方都市で漁師として生計を立てている中国系の父子。父親は若い頃に好きな人がいたのに彼女と結婚しなかったことを、年取った今でも悔やんでいる。息子には好きな女の子がいるが、ひょんなことから雇われた水産物加工会社の社長の娘から猛アタックを受ける。父と子は同じ運命をたどってしまうのか。監督はウー・ミンジンなる人物。

 上映前に舞台挨拶に現れたウー監督はどう見ても20代の若造だ。ならば若者らしい溌剌とした展開で観客を引っ張ってくれるのかと期待したが、これがまったくのハズレである。演出テンポは極端に遅く、主人公達が扱う魚のアップや周囲の風景などを固定カメラで追っただけの意味もない映像の連続。さほど効果もないカメラの長回しも満載だ。

 おそらくは登場人物の心象スケッチか何かのつもりだろうが、冗長極まりない。こういう撮り方は、いかにも頭でっかちの映画青年が好みそうな遣り口である。やっている本人はさぞや気持ちが良かったと思うが、それに付き合わされる観客はたまったものではない。

 それでも肝心のストーリーが面白ければ許せるのだが、これがまた要領を得ない。サッと流せば10分で終わるような話を、前述のフィルムの浪費で引き延ばしているだけだ。出てくる連中にサッパリ魅力がないのも困った話で、特に父親の行動なんか作者の人間観察の浅さが露呈している。昔の“結婚するはずだった女”のもとに今も通い、彼女の旦那に嫌味を言われた挙げ句に自滅するなんて話を、背景をまるで描いていないまま示されても脱力するだけだ。

 ロケ地の珍しい風習や自然がたっぷりと紹介されているわけでもなく、わずか1時間40分の映画ながら、眠気を抑えるのに苦労した。監督と一緒にやってきた主演女優も“ただ身体の線が細いだけ”で見るべきものなし。こんな低調な映画がどうしてこのイベントで公開されるのか、さっぱり分からない。映画祭プロデューサーは一体何を考えていたのだろうか。
コメント
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