goo blog サービス終了のお知らせ 

元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「アポロ13」

2013-04-25 06:31:06 | 映画の感想(あ行)

 (原題:Apollo 13 )95年作品。予想通りの出来だった。1970年4月、三度目の月着陸を目指したアポロ13号の奇跡の帰還を描くノンフィクション・ドラマ。ここでも監督ロン・ハワードは水も漏らさぬ演出を見せる。細部に凝りまくったセット、正確な時代考証、堂々としたジェームズ・ホーナーの音楽、実物としか思えないSFXなどを武器に、絶対の危機に陥った飛行士たちと彼らをフォローする地上クルーの活躍をスピード感たっぷりに映し出す。

 3人の飛行士のキャラクターはちゃんと描き分けられ、突然のトラブルで飛行チームから外されるが結局は彼らを助けようとする飛行士の心意気も示され、残された家族の情愛も盛り込まれる。また、飛行士たちを助ける手段が徹底的に理詰めに展開されており、曖昧なところはない。

 “月着陸も3回目になると飽きた”と最初はシカトを決め込むが事故が起きてから騒ぎだすマスコミの無責任さを攻撃し、そして何より輝かしい“成功”より惨めな“失敗”を題材として取り上げ、それを克服するアメリカの強さを観客にアピールしている。実に上手い、お手本のような作劇だ。トム・ハンクスはじめとするキャストも適材適所で言うことなし。

 しかし、やっぱりというか、観ていてあまり面白くないのである。きっちりと整備された定石の決まりごとを巧みに追っても感心はするが夢中にはならない。プラスアルファの観客の琴線に触れるゾクゾクするような企みがなければ観た後すぐに忘れてしまうだろう。この映画の場合、実話をもとにしているからあまりストーリーはいじれないが、方法はある。たとえば宇宙の広大さと恐ろしさだ。

 “宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない”というのは「エイリアン」のキャッチフレーズだったが、このパターンで、たった3人で虚無の空間に投げ出された極限の恐怖を畳み掛けるように描いてほしかった。暗黒の宇宙の恐ろしさと何ともいえない美しさ、それをトリップしてしまうような映像で攻めてこられたら、これはなかなかの映画になっただろう。

 または飛行士とNASA当局の微妙な確執をギリギリにまで描き出し、一種の密室心理サスペンスに仕上げても面白い。斯様にこのネタを取り上げる際にはいろいろと工夫する点はあったはずだが・・・・。

 やっぱり当時「フォレスト・ガンプ」が大ヒットしていた状況では、“アメリカ万歳、わが家が一番”の保守的スタンスを取る方が作りやすいしヒットも見込めたということだろうか。国威掲揚映画のような雰囲気もあり、愉快になれなかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする