元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「奇人たちの晩餐会」

2013-04-24 06:29:33 | 映画の感想(か行)
 (原題:Le Diner de cons)98年作品。吉本新喜劇を思いっきりハイ・ブロウに仕上げるとこういう感じになるんだろうか(笑)。監督も担当したフランシス・ヴェベールによる同名の舞台劇を元ネタにした場面変化の少ない作劇だが、テンポの良い演出とキャストの個人芸、そして会話の面白さにより、なかなか気の利いたフレンチ・コメディに仕上がっている。

 パリに住む編集者のピエールは、毎週友人たちと夕食会を開くのを楽しみにしているが、その集まりの目的は単なるディナーではない。参加メンバーが毎回“こいつ、アホだろ”というような奴をゲストとして連れてきて、そのアホぶりを皆で笑おうという、すこぶる嫌味なものである。



 今回ピエールが選んだゲストは、公務員のフランソワ・ピニョンなる人物。彼はマッチ棒で模型を作るのが趣味で、何かにつけてその“実績”を延々と自慢する変人である。しかし、ピエールはディナーの直前にギックリ腰を患ってしまい、おまけに嫁さんにも逃げられてしまう。仕方なくディナーをキャンセルしようとするが、その前に当のピニョンがピエール宅に現れる。ピニョンはピエールを助けようと奮闘するが、事態は悪化するばかり。

 とにかく、出てくるキャラが濃い。しかし、不思議と胃にもたれないのは傑出したネタの作り込みにある。各キャストに決してオーバーアクトをさせない節度を保ち、見た目の面白さよりも滑稽なシチュエーションの方で笑いを取ろうという、作者の冷静さが印象に残る。上映時間が1時間20分だというのも嬉しい。

 なお、本作は2010年に「奇人たちの晩餐会 USA」という題名でハリウッドリメイクされたが、評判がよろしくないのか、日本では劇場公開はなくビデオスルーであった(私は未見)。まあ、ハリウッドで再映画化された他国のネタが面白かったためしがないので、それも同様だったのだろう。
コメント
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