元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「至福のとき」

2013-04-28 06:43:15 | 映画の感想(さ行)
 (原題:幸福時光)2002年作品。大連を舞台に、冴えない中年男と目の不自由な少女との交流を描く。ノーベル賞作家・莫言の短編小説の映画化で、メガホンを取ったのは張藝謀。

 正直、あまり印象に残らない映画である。要するに健気な盲目の少女を取り巻く他愛のない人情話でしかなく、張藝謀の作品としては「あの子を探して」はもとより「初恋のきた道」に比べても大きく後退。辻褄の合っていない展開も目立ち、こんな気合の入らないストーリーで感動しろと言われてもそうはいかない。



 でも逆に考えれば、単なるお涙頂戴映画を作らずにはいられないほど現代の中国社会が殺伐としていることの証だろう。目の見えないヒロインを家族は邪険に扱うばかりで、当局側も全く面倒を見てくれないようだ。リストラされた独身中年男とその仲間だけが“個人的な善意によって”彼女の相手をする。その程度の大時代的なメロドラマが現時点で立派に一本の映画として成立してしまうこと自体が悲しい。

 しかし状況がどうあれ、張監督にはこういう後ろ向きのシャシンは撮ってほしくない。もっと問題意識を持った意欲的なネタに挑戦してほしかった。なお、主演女優ドン・ジエの存在感はかなりのもので、彼女のおかげで何とか最後まで観ていられたようなものだ。
コメント
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