去る4月29日から5月1日にかけて、福岡市博多区石城にある福岡国際会議場で開催された「九州ハイエンドオーディオフェア」に行ってきた。このイベントは3月末に行われることが多いのだが、今回はちょうどその時分に他の地区でオーディオフェアが開催されていたためか、大型連休中に開かれる運びになったらしい。
ただし内容は低調だった。出品数が少なく、目玉になるようなイベントも無い。評論家を招いての試聴会は行われていたが、紹介されていた機種は他の時間帯にも聴けるものだったので、あえて参加する必要性は感じなかった。

そして何より気になったのは、入場者数がかなり減ったと思われたことだ。もっとも前回・前々回からその傾向はあった。しかし行楽に出かけている層が多い連休中に開催時期を持ってきた今回は、それが一気に表面化したと言える。その理由はいろいろと考えられるが、個人的な意見としてはハイエンドオーディオの購入者自体が数を減らしていることが考えられる。
数年前のフェアで“我々は、経済的にゆとりがある団塊世代をターゲットに商売を行っていきます”と堂々と宣言していたメーカーもあったが、現在はこの世代が現役を退いてからすでに6,7年は経っているのだ。退職金などを元手に長年のあこがれの的であったハイエンド機を購入した者は多いのだろうが、その需要はすでに一巡したと考えるのが自然である。もちろん今後は買い換え需要が発生することは否定できない。しかし、年金生活に入った彼らにとって、自由に使える金は少ない。しかも、すでに耳が遠くなってきた者もいると思われる(苦笑)。グレードアップなんか、そう簡単に出来るものではない。
現在のハイエンドオーディオは一部の金持ち(正確に言うと“一部の金持ちの、そのまた一部”)にしか売れないシロモノに成り下がっているのだと思う。そんな市場の状況に気が付かないのか、相も変わらず会場には一千万円超のシステムが漫然と並べられている。
少し前に、某ディーラーのスタッフがこのイベントについて“あんな高いものばかり展示して、何か意味があるんでしょうかね。いくら良いと思っても、おいそれと「購入を検討します」なんて言えるはずもないです”と冷ややかに語っているのを聞いたが、当人にとって他店の催し物であることを差し引いても、正鵠を射たコメントだと思う。

ちなみに、会場では高齢の入場者がメーカーや代理店の担当者に食って掛かったり皮肉を言う場面を何度か目撃した。いわく“アンタ達は数百万円のプレーヤーがリーズナブルプライスだと説明するが、これのどこがリーズナブルな価格なんだ! 普通のサラリーマンや年金生活者が買える値段なのか!”といった具合だ。
購入層が縮小していく超高額商品ばかりを、送り手があたかも“これがオーディオの本流だ”みたいなノリで紹介しても、市場の状況は何ら好転しないどころか、自らの商売もジリ貧になるばかりだ。市場を拡大させる努力を怠っている業界に明日は無い。
余談だが、同じビルで若者を多く集めたイベント(おそらくアニメか漫画に関するもの)が開催されていた。ここで利に聡い経営者ならば“絶好のチャンス”とばかりにアライアンスを仕掛けるはずだ。たとえば“アニソンをもっと良い音で聴こう”みたいな宣伝文句をブチあげて(笑)、アニメや漫画の催し物に足を運んだ若い衆をオーディオフェア会場にも引きずり込むような施策を打ち出せば、そのうちの一部はピュア・オーディオに興味を持ってくれるかもしれない。しかしながら、オーディオフェアの主催側はそんな能動的なマーケティングを仕掛けることを考えもしていないようだ。
ともあれ、(前にも書いたが)本当に必要なのは“ハイエンドフェア”ではなく“ローエンドフェア”なのである。まずは入手しやすいものを紹介することから始めないと、顧客の増加には繋がらない。
(この項つづく)
ただし内容は低調だった。出品数が少なく、目玉になるようなイベントも無い。評論家を招いての試聴会は行われていたが、紹介されていた機種は他の時間帯にも聴けるものだったので、あえて参加する必要性は感じなかった。

そして何より気になったのは、入場者数がかなり減ったと思われたことだ。もっとも前回・前々回からその傾向はあった。しかし行楽に出かけている層が多い連休中に開催時期を持ってきた今回は、それが一気に表面化したと言える。その理由はいろいろと考えられるが、個人的な意見としてはハイエンドオーディオの購入者自体が数を減らしていることが考えられる。
数年前のフェアで“我々は、経済的にゆとりがある団塊世代をターゲットに商売を行っていきます”と堂々と宣言していたメーカーもあったが、現在はこの世代が現役を退いてからすでに6,7年は経っているのだ。退職金などを元手に長年のあこがれの的であったハイエンド機を購入した者は多いのだろうが、その需要はすでに一巡したと考えるのが自然である。もちろん今後は買い換え需要が発生することは否定できない。しかし、年金生活に入った彼らにとって、自由に使える金は少ない。しかも、すでに耳が遠くなってきた者もいると思われる(苦笑)。グレードアップなんか、そう簡単に出来るものではない。
現在のハイエンドオーディオは一部の金持ち(正確に言うと“一部の金持ちの、そのまた一部”)にしか売れないシロモノに成り下がっているのだと思う。そんな市場の状況に気が付かないのか、相も変わらず会場には一千万円超のシステムが漫然と並べられている。
少し前に、某ディーラーのスタッフがこのイベントについて“あんな高いものばかり展示して、何か意味があるんでしょうかね。いくら良いと思っても、おいそれと「購入を検討します」なんて言えるはずもないです”と冷ややかに語っているのを聞いたが、当人にとって他店の催し物であることを差し引いても、正鵠を射たコメントだと思う。

ちなみに、会場では高齢の入場者がメーカーや代理店の担当者に食って掛かったり皮肉を言う場面を何度か目撃した。いわく“アンタ達は数百万円のプレーヤーがリーズナブルプライスだと説明するが、これのどこがリーズナブルな価格なんだ! 普通のサラリーマンや年金生活者が買える値段なのか!”といった具合だ。
購入層が縮小していく超高額商品ばかりを、送り手があたかも“これがオーディオの本流だ”みたいなノリで紹介しても、市場の状況は何ら好転しないどころか、自らの商売もジリ貧になるばかりだ。市場を拡大させる努力を怠っている業界に明日は無い。
余談だが、同じビルで若者を多く集めたイベント(おそらくアニメか漫画に関するもの)が開催されていた。ここで利に聡い経営者ならば“絶好のチャンス”とばかりにアライアンスを仕掛けるはずだ。たとえば“アニソンをもっと良い音で聴こう”みたいな宣伝文句をブチあげて(笑)、アニメや漫画の催し物に足を運んだ若い衆をオーディオフェア会場にも引きずり込むような施策を打ち出せば、そのうちの一部はピュア・オーディオに興味を持ってくれるかもしれない。しかしながら、オーディオフェアの主催側はそんな能動的なマーケティングを仕掛けることを考えもしていないようだ。
ともあれ、(前にも書いたが)本当に必要なのは“ハイエンドフェア”ではなく“ローエンドフェア”なのである。まずは入手しやすいものを紹介することから始めないと、顧客の増加には繋がらない。
(この項つづく)