元・副会長のCinema Days

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「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」

2016-05-09 06:28:18 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Captain America:Civil War )設定が実に興味深い。最近ヒーローの頭数ばかりが増えてきたアメコミの映画化作品群の中にあって、新味を出すために仲間同士の内ゲバをやらかそうという思い切った手法を採用。聞けばこれは原作に網羅されているネタらしいが、映画としてはあまり前例の無い試みで、かなり盛り上がる。

 基本的なストーリーは2015年に公開された「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」の続編という形を取る。アベンジャーズは幾度も世界を救ってきたが、その代償として各地に深刻なダメージをもたらしていた。折しも某国でのテロリストとの戦いにおいて、多数の一般市民が巻き添えになるという事件が発生。業を煮やした各国首脳は、アベンジャーズを国連の監視下に置くことを決定する。



 アイアンマンことトニー・スタークはその提案を受け入れる意向を示すが、キャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースは、かつての自分の経験により公的組織自体を全く信用しておらず、組織の合議を待つよりも自らの正義感や愛国心でいち早く動くことが最重要事項だと思っている。アベンジャーズの各メンバーはそれぞれの考えに基づきこの2人のどちらかに付くことになるが、そんな時、ウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズの過去に関する秘密が明るみになり、それをきっかけに“2大派閥”の対立は決定的なものになる。

 秀逸なのは“いずれは強大な敵が現れて、この派閥間闘争は棚上げになるだろう”という大方の予想を完全に裏切っていること。内ゲバの仕掛け人は一応存在するが、バックに大物が控えているわけではない。それどころか、当人にも同情すべき点はあったりする。とにかく“2大派閥”は何らかの妥協点を見つけるために、徹底的に戦い抜くのだ。しかもその背景には、責任の所在を組織に置くのか特定の指導者に置くのかという、古くから取り沙汰される重要な命題が存在しており、一筋縄ではいかない様相を示している。



 前作に続いてメガホンをとったアンソニーとジョーのルッソ兄弟は、今回も賑々しくアクションを展開。登場するヒーローの数は「アベンジャーズ」の第一作(2012年)に比べて約2倍になり、さらにはスパイダーマンやアントマン等の“他シリーズからの参入”もあってヘタすれば収拾がつかなくなるところを上手く交通整理し、なおかつ見せ場を各個人に用意しているという要領の良さを見せつける。

 ロバート・ダウニー・Jr.やクリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナーら御馴染みのキャストは言うに及ばず、ドン・チードルやチャドウィック・ボーズマンらの新顔に至るまで、楽しそうに演じているのが見て取れる。

 ただ、先日観た「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」ほどではないか、一見さんの観客は置いて行かれる傾向にあるのは仕方がない。前作までの“予習”が必要だろう。なお、スパイダーマンに扮するトム・ホランドは軽量級に過ぎる(笑)。新シリーズでは存在感を発揮してほしいものだ。
コメント
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