元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その33)。

2016-09-04 06:26:37 | 音楽ネタ
 デンマークのコペンハーゲンにあるヒッピー自治区出身の4人組ソウルポップ・バンド、ルーカス・グラハムのメジャーデビュー作(アルバム・タイトルはバンド名と同じ)は、実に聴き応えがある。昨今、新鋭ミュージシャンはEDM系が目立つようだが、正直言ってその手のサウンドは好きではない。対してこのルーカス・グラハムは、伝統的ソウルポップのメソッドを踏襲し、なおかつアレンジ等にはアップ・トゥ・デイトな手法が採用されており、広範囲にアピールできる内容だ。

 バンドのフロントマンでヴォーカル担当であるL・グラハムは、一見すると童顔で垢抜けない野郎だが(笑)、その伸びやかな歌声とリズム感で聴く者を惹き付ける。曲のクォリティも高く、先行シングルの「セブン・イヤーズ」は哀愁を帯びたメロディと泣かせる歌詞が素晴らしい。全体にわたって“捨て曲”がひとつもなく、どこから聴いても満足度が高い。



 分かりやすい曲展開で妙に斜に構えたところもなく、ポップスファンでこのスタイルが嫌いな者はあまりいないのではないだろうか。すでに本国をはじめアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどで高いセールスを記録しているが、それも頷ける。また、何よりデンマークという今まで音楽シーンでは注目されなかった地域から出てきたというのも面白い。今後の活躍に期待が持てよう。

 ウエストコーストで活動するドイツ出身ピアニストのマーカス・バーガーを中心としたピアノトリオ、L.A.セッションズが2010年に録音したアルバム「アクシデンタル・ツーリスツ」は、私好みのクール&スイートな展開で大いに楽しめた。曲はオリジナルが中心だが、聴く者に対して媚びたところのない寒色系のメロディ・ラインながら、決して独り善がりのパフォーマンスに陥らず、しっかりとエンタテインメント性が確保されている。



 また、緩急に合わせた曲順が巧みだ。バーガーのピアノは繊細だが、弱々しさとは無縁。時にパワフルかつ鋭角的に切れ込み、スリリングな側面も見せる。随所に見せる甘やかなタッチは高評価。それから、清澄なピアノのサウンドを的確にサポートするボブ・マグナッソンのベースとジョー・ラバーバラのドラムスも要チェックだ。

 音質は“中の上”といったところで、特に優れているわけではない。しかし、限られたレンジの中でバランス良く音像が並べられているという印象で、聴いていて不満に思える箇所も無い。余談だが、アルバムタイトルからはどうしてもローレンス・カスダン監督の映画(85年)を思い出してしまう。何かインスピレーションでも受けたのだろうか。



 エリック・サティのピアノ曲といえば19世紀末のフランス音楽の代表作だが、気が付けば私はこの音楽ソフトを所有していなかった。昔、高橋アキが弾いた曲集のアナログレコードを持っていたのだが、いつの間にやら処分してしまったらしい。惜しいことをした。そこで、今回久々にサティのディスクを買ってみた。モスクワ出身の若手ピアニスト、オルガ・シェプスによるものだ。2016年録音の新譜である。

 彼女の演奏に接するのは初めてだが、かなりの実力者であることが分かる。解釈としては向こう受けを狙ったケレンは感じられないオーソドックスなものだが、飽きずに楽しく聴ける。何より音色が磨かれて丸みを帯び、決して刺激的な音を出さないのが良い。リズムの取り方も堂に入ったもので、存分に“歌心”を発揮していると言えよう。もちろん、それらは確かなテクニックに裏打ちされている。

 ボーナス・トラックとして、カナダ出身のピアニスト兼作曲家のチリー・ゴンザレスの作品「ジェントル・スレット」が収録されているが、これがまた流麗な曲調で存分に聴かせてくれる。録音はホールトーンの多い人工的な音場が特徴だが、音像そのものはキレイだ。長時間鳴らしていても、ストレスは感じない。それどころか、サティの楽曲のイメージに合っていると思う。
コメント
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