元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「さんかく窓の外側は夜」

2021-12-19 06:24:37 | 映画の感想(さ行)
 2020年作品。話にならない出来だ。プロデューサーは一体何をやっていたのだろうか。脚本と演出プランを提示された時点で、速攻で没にするか抜本的なやり直しを講じるべき案件であることは誰の目にも明らかだと思うのだが、この業界ではそんな常識も通用しないらしい。とにかく、観る価値は無い。

 書店で働く三角(みかど)康介は、幼い頃から幽霊が見えるという体質があり、そのため周囲から孤立していた。ある日、冷川理人という男が、康介に一緒を仕事をしないかと勧誘する。冷川は除霊師で、その能力を活かして警察などの依頼を引き受けていた。一方、1年前から猟奇的な殺人事件が立て続けに起こっており、担当刑事の半澤は冷川らに協力を求める。冷川と三角は捜査を進めるうちに、謎めいた女子高生が事件に絡んでいることを突き止める。ヤマシタトモコの同名コミックの映画化だ。

 困ったことに、くだんの殺人事件は途中で放棄される。途中から、冷川が子供の頃に新興宗教の教祖になり、そこで信者の大量死亡事件が起こったことが示されてから、ドラマは完全に崩壊。脈絡の無いモチーフが次々と出てきて、それぞれがまったく解決の筋道が見えないまま、映画は適当な箇所で唐突に終わる。

 冷川と三角が持つ能力がどういうもので、それがどう事件の解決に結びつくのか不明。呪いの力がどうのこうのというハナシも、女子高生がそれをどう使いこなして、何を成し遂げたいのか全然分からない。冷川が前振りなしに持ち出す“三角形の結界”とやらも、どういう意味があるのか判然としない。

 同じような回想シーンが繰り返されるが、何の効果も上がっていない。ヘンに気取っているような中身スカスカの映像は盛り下がるばかりで、ホラー描写も実に陳腐。本作の送り手たちは、いったい何がやりたくてこのシャシンを手掛けたのか、最後まで分からなかった。森ガキ侑大なる監督の腕前は三流で、そこそこ演技が出来るはずの主役の岡田将生と志尊淳が、かなりの大根に見えてしまう。

 滝藤賢一に筒井道隆、和久井映見、北川景子とキャストは割と豪華ながら、ロクに仕事もさせてもらえない。ヒロイン役の平手友梨奈のパフォーマンスは、所詮“坂道一派”の枠を出ない低調なもの。ラストは何やら続編があることを匂わせるが、多くの観客にとってそこまで付き合う義理は無いだろう。
コメント
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