猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ゲット・アウト

2017-11-30 04:32:27 | 日記
アメリカ映画「ゲット・アウト」を観にいった。

ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の写真家クリス(ダニエル・カルーヤ)
は、週末を白人の彼女ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家で過ごすことになる。
ローズは両親に恋人が黒人であることを伝えておらず、クリスはそれを不安に思う
が、ローズは「両親は人種差別主義者じゃない。父はオバマに3期目があれば投票
すると言うような人よ」と言う。ニューヨーク郊外にあるローズの実家に着くと、
クリスはローズの父親ディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)と母親ミッシー
(キャサリン・キーナー)に歓迎される。しかしクリスは、黒人の管理人ウォルター
(マーカス・ヘンダーソン)と家政婦ジョージナ(ベッティ・ガブリエル)が雇われて
いることに違和感を覚える。更に、ディーンは殊更に黒人を持ち上げる発言をする
が、逆にローズの弟ジェレミー(ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ)は差別的な態
度で挑発してくる。翌日、実家では、ローズの亡き祖父を讃える年に1度のパーテ
ィが開かれる。裕福な白人ばかりで気が滅入っていたクリスは、唯一の黒人の若者
を見つけて話しかけるが、ローガンというその若者は不自然に古風な服装で、母親
のような年上の妻を連れており、やはりクリスは違和感を覚える。クリスはローガ
ンの写真を撮ろうとするが、フラッシュがたかれた瞬間にローガンが豹変し、鼻血
を流しながら「出ていけ!」と掴みかかってくる。何かがおかしいと感じたクリス
は、ローズにもう帰ろうと言う。

少し変わったホラー映画。スリラー映画と言うべきか。比較的低予算で制作された
がアメリカで大ヒットしたという。確かにこれは大ヒットするだろう。とてもおも
しろかったし怖かった。冒頭で夜の街を歩いていた黒人青年が、いきなり車で拉致
されるが、その後その話の続きがない。あれはどういう意味だったのだろうと思い
ながら観ていたが、後でとんでもないことだとわかる。黒人の写真家クリスは週末
を恋人ローズの実家で過ごすことになるが、ローズが両親に彼氏は黒人だと言って
いないことが気にかかる。ローズは両親は人種差別主義者ではないから大丈夫だと
言う。ローズの運転する車で向かうが、途中で野生の鹿をはねてしまう。駆けつけ
た白人の警官がクリスに無礼な態度を取ると、ローズは激怒する。でも私はローズ
が鹿のことを全然気にしていないのを変に思った。クリスは鹿の様子を見ていたの
に。そして実家に着くと、居間の壁には鹿の剥製が。ますます違和感。
ローズの両親はクリスを歓迎するが、使用人2人が黒人ということに私もクリス同
様変な感じを持った。とにかく、使用人たちも含め妙な違和感が漂っているのだ。
「この家は何かおかしい」そんな印象を抱く。極めつけは翌日のパーティ。集まっ
た年配の白人たちはクリスに興味深々で妙に馴れ馴れしい。1人だけ黒人の若者が
いるのをクリスは見つけるが、会話が噛み合わずやはりどこかおかしい。クリスは
彼の写真を撮ろうとするが、彼はフラッシュに反応して鼻血を出し、クリスに襲い
かかってくる。
もうとにかく映画全体に妙な雰囲気が漂いまくりで、画面から目が離せない。よく
できている映画だと思った。私は最初、タイトルの「ゲット・アウト」を、「黒人
は出ていけ」という人種差別的なものかと思っていたのだが、そうではなかった。
もっと深い意味がある。悪霊も猟奇殺人鬼も登場しないが、とても怖い映画だった。




映画レビューランキング

MASTER/マスター

2017-11-27 23:54:18 | 日記
韓国映画「MASTER/マスター」を観にいった。

金融投資会社のトップに君臨するチン・ヒョンピル会長(イ・ビョンホン)はカリスマ
的なテクニックで個人投資家から巨額の資金を集め、国家の要人に賄賂をバラまいて
莫大な利益を上げてきた。知能犯罪捜査班長のキム・ジェミョン刑事(カン・ドンウ
ォン)は、その悪徳行為を追跡する中、会長の側近で天才ハッカーのパク・ジャング
ン(キム・ウビン)に極秘裏に接近し、「賄賂の詳細が記された帳簿ファイルを盗み出
せたら執行猶予にする」と司法取引を持ちかけ、パクは自分の身を守るためチン会長
を裏切って警察に協力する。だがチン会長は周囲に裏切り者の匂いを感じ取り、大金
と共に姿をくらました。1年後、チン会長の死体がベトナムで発見されたというニュ
ースが流れるが、捜査を続けていたキム刑事はその死は偽装だと直感し、パクを加え
た捜査班を再結集する。

韓国で実際に起きた巨額投資詐欺事件を基に作られたサスペンス・アクションである。
珍しくイ・ビョンホンが冷酷非道な悪役を演じている。そして「華麗なるリベンジ
でおちゃめな詐欺師を演じたカン・ドンウォンが知的でクールな刑事役。もうこのキ
ャストだけでも観る価値はあるというもの。とてもおもしろかった。日本でも投資詐
欺事件はしばしば起きている。どこの国も悪い奴が考えることは同じなんだなあ。
イ・ビョンホンの存在感が圧倒的。冒頭ですごい数の投資家を集めてスピーチをする
シーンがあるが、うーんあれなら騙されても仕方ないかも、と思わせるほど。そして
カン・ドンウォンの常に冷静でクールで頭のいい刑事ぶりもいい。追う者と追われる
者との攻防がとてもスリリング。そしてそれにチン会長を裏切って警察に協力するこ
とになった天才ハッカー役のキム・ウビンもいい。最初この男本当に信用できるのだ
ろうか、と思いながら観ていたが、彼のキャラクターはとてもいい感じに映画の中に
溶け込んでいく。キム刑事と組む女性刑事のおとり捜査の鮮やかさや、チン会長の長
年のパートナーの女性も印象的である。とにかく俳優が皆とてもいいのだ。
後半は韓国とフィリピンを舞台にして物語が進んでいき、前半とはまた違うおもしろ
さがある。イ・ビョンホンのシャツが派手(笑)。この映画はシリアスでもありエンタ
ーテインメント作品とも言える。特にキム・ウビンが登場すると軽妙な雰囲気になる。
メイン3人の演技のぶつかり合いがとてもいい雰囲気を醸し出していて、スタイリッ
シュである。終盤のカーチェイスや銃撃戦は迫力がある。
エンドロールの後にワンシーンあるので、これから観られる方はご注意を。個人的に
カン・ドンウォンがとてもかっこよかった。美形で長身でスタイル抜群。あ、イ・ビ
ョンホンもキム・ウビンも足長いですよ!




映画レビューランキング

人気ブログランキング






オン・ザ・ミルキー・ロード

2017-11-25 02:30:21 | 日記
セルビア・イギリス・アメリカ合作映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」を観に
いった。

隣国と戦争中のとある国。右肩にハヤブサを乗せたコスタ(エミール・クストリッ
ツァ)は、村からの戦線の兵士たちにミルクを届けるため、毎日銃弾をかわしなが
らロバに乗って前線を渡っている。国境を隔てただけの、すぐ近くで続く殺し合い。
いつ戦争は終わるのか誰にも見当がつかない。そんな死と隣り合わせの状況下でも、
村にはのん気な暮らしがあった。おんぼろの大時計に手を焼いている母親と一緒に
住んでいるミルク売りの娘ミレナ(スロボダ・ミチャロヴィッチ)。美しく活発な彼
女の魅力に村の男たちはメロメロで、皆が彼女目当てもあってこの家のミルクを注
文する。そのミルクの配達係に雇われているのがコスタだ。ミレナの兄ジャガ(ブ
レドラグ・マノイロヴィッチ)は今戦争に行っているが、戦争が終わって帰ってき
たら、この家に花嫁として迎える女性と結婚する予定だ。コスタに想いを寄せてい
るミレナは、兄の結婚と同じ日にコスタと結婚しようと計画していた。だがミレナ
の求愛に対し、コスタは気のない素振りで話をそらしてばかり。そんな時、家に花
嫁(モニカ・ベルッチ)がやってくる。ローマからセルビア人の父を捜しにきて戦争
に巻き込まれたという絶世の美女だった。彼女とコスタは、初めて会った瞬間から
惹かれ合う。

エミール・クストリッツァの新作で、監督、脚本、主演を担当している。この人の
映画を観るのはまだ3作目だが、本当に独特の世界観を持っていると思う。しかも
3作とも映画館で観たので強烈なインパクトを感じた。この映画、コミカルなラブ
ストーリーだがやっぱりただのコミカルな映画では終わらない。
美人で男にモテるミレナの家でミルク売りとして雇われているコスタ。ミレナはコ
スタのことが好きで、コスタとの結婚を夢見ているが、コスタはミレナを愛しては
いない。ミレナの兄は英雄と言われている兵士で、戦争が終わったら花嫁として選
ばれた女性と結婚することになっている。花嫁(名前は出てこない)は顔も知らない
男と結婚するために連れてこられるのだが、ミレナやミレナの母親とも打ち解け、
結婚相手であるこの家の息子の帰りをそれなりに楽しく待っているようである。け
れども花嫁とコスタは、一目会った時から惹かれ合ってしまう。この2人には重た
い過去があるため、波長が合ったのかもしれない。やがて隣国と休戦協定が結ばれ、
村人たちは狂喜する。そしてミレナの兄ジャガも帰ってくる。
コスタはミレナを愛してはいないのに、ダブル結婚式の準備は着々と進められる。
しかしある不幸が村を襲い、コスタは花嫁を連れて逃避行を開始する。エミール・
クストリッツァは旧ユーゴスラビアの人だけに、戦争や内紛といったテーマが映画
作りの根底にあるのだろうか。まだ3作しか観ていないのでわからないけれど。で
も本当に変わった映画を作る人だ。コスタという主人公のキャラクター造形も変わ
っている。いつも右肩に相棒のハヤブサを乗せ、晴れの日でも傘を差し、ロバに乗
ってミルク缶を持っている。歩いた方が早いのではないだろうか、狭い村だし。
モニカ・ベルッチをヒロインに選んだのは、クストリッツァが美女のモニカと共演
したかったからだろうな、と思った。確かに彼女は美しい。こんな映画を作ってし
まうクストリッツァは天才かもしれないし、あるいは変態かもしれない。1度頭の
中を覗いてみたいものだ。少なくとも歌とダンスと動物が好きであるらしいことは
わかった。ラストシーンは悲しくて感動的だ。ユーモラスで悲哀に満ちていて、壮
大な童話のような映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。エミール・クストリッツァ監督作品です。
アンダーグラウンド
アリゾナ・ドリーム




映画レビューランキング

人気ブログランキング