猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏

2021-06-30 22:54:08 | 日記
2019年のアメリカ・イタリア合作映画「ウェイティング・バーバリアンズ 
帝国の黄昏」。

19世紀のアフリカ。ある帝国に支配された辺境の町で、「蛮族が攻めてくる」
という噂が流れていた。治安維持のため中央政府の警察官僚・ジョル大佐(ジ
ョニー・デップ)や副官のマンデル准尉(ロバート・パティンソン)らが派遣さ
れ、厳しい弾圧や拷問を強行。彼らの横暴な振る舞いに、町の民政官(マーク
・ライランス)が抵抗する。

アフリカの辺境の地で、中央政府の警察官僚による激しい弾圧が人々を苦しめ
る。その地を支配している帝国というのは架空の国である。そして舞台はアフ
リカとなっているが人々の顔は中東系の感じ。そこへ蛮族が攻めてくるという
噂が流れ、警察官僚のジョル大佐やマンデル准尉が派遣されてくる。ジョル大
佐は冷酷非道な人物で、蛮族(とされている人々)への投獄や拷問もいとわない。
部下たちも同様である。だが蛮族と呼ばれているのは元々住んでいた原住民や
遊牧民の人たちである。良心と正義感を持った民政官は人々が苦しむ様子に心
を痛めていたが、彼に大佐の行為を止める権限はなかった。
バーバリアンとはどういう意味だろうかと調べたら、「野蛮人、未開人」との
こと。なるほど、それで「ウェイティング・バーバリアンズ」なのか。支配し
ている帝国はよその土地にずかずか足を踏み入れて、その土地の人々を蛮族と
は、どちらが蛮族なのかわからない。原住民や遊牧民の人たちはアジア系の顔
をしていて、何だか現代の社会の縮図のようにも見える。ジョル大佐たちは冷
酷で非人道的な象徴なのに対し、民政官は良心の象徴に描かれている。
ある日民政官は両足を骨折した娘が物乞いをしているのを見かけた。彼女の父
親は不当に殺害され、彼女自身も拷問を受けたのだという。哀れに思った民政
官は娘を保護し、元いた部族に送り届けることにしたのだが、マンデル准尉か
らこれを内通行為と見なされ、民政官自身も投獄されることになってしまう。
でも民政官はどうしてそこまで娘に同情したのか、ちょっと不思議に思った。
もちろん娘はかわいそうなのだが、同様にひどい目に遭った人はたくさんいる
のだ。自分の娘か孫のような気持ちになったのだろうか。彼女の足を丁寧に洗
ってやるシーンが印象的だった。民政官は娘にとても良くしてやるのだが、何
故彼女にだけそんなに?と少し疑問に思った。
ジョル大佐役のジョニー・デップの出番はそう多くはないのだが、圧倒的な存
在感である。マンデル准尉役のロバート・パティンソンはいかにもイギリス美
青年という感じ(もちろんジョニーの方がかっこいいけど)。ジョニーはにこり
ともしない冷酷な役だが、ラストのボロボロになった姿にジョニーらしさを感
じた気がした。


私は今月誕生月だったので、食事に行って来ました。エスニック料理のお店で
す。
注文したのは、じゃがいものサモサ。サモサって初めて食べたけどすごくおい
しかった!



次が生春巻き。安定のおいしさ。



そしてパッタイ。これもおいしかった。




もう1つ、小籠包みたいなのを注文したのですが、写真を撮り忘れました。す
ごくおいしかったのに、残念。

そしてケーキ。お腹いっぱいになりました。


ドアロック

2021-06-26 22:37:04 | 日記
2018年の韓国映画「ドアロック」。

銀行に勤めるギョンミン(コン・ヒョジン)は、都心の古びたマンションで
1人暮らしをしていた。ある朝、ドアロックのナンバーキーに不審な粉が
ついているのを見つけ、念のためパスワードを変更する。帰宅後に部屋で
寛いでいると、突然誰かがドアロックを操作し、ドアノブを荒々しく回し
始めた。もし、今朝パスワードを変更していなかったら、と恐怖に駆られ
たギョンミンは警察に通報するが、被害がないために取り合ってくれない。
それ以降、タバコの吸い殻や持ち上がった便座など、ギョンミンの部屋で
不審な痕跡が次々と見つかる。仕事も手につかず新たな引っ越し先を探し
始める中、ギョンミンの部屋で変死体が発見される。

ストーカーをテーマにしたサスペンス・スリラー。とても怖い映画だった。
銀行で働く契約社員のギョンミンは、最近朝頭痛がすることに悩んでいた。
更に部屋の中に誰かが入ったような不審な痕跡を見つけ、恐怖を感じる。
警察に相談しても被害が出ていないからと取り合ってもらえず、まるで被
害妄想のクレーマーのような扱いを受け、不快な気持ちになる。そんな時
ギョンミンは、窓口である男性客に保険を勧めようとするが、彼は預金残
高が少ないため勧めるのをやめる。男は恥をかかされたと言って怒り、ギ
ョンミンに脅迫まがいの言葉を投げつけ、それから男は度々ギョンミンの
前に姿を現すようになる。
その男はいかにも怪しいのだが、他にもストーカーと思しき存在が現れ、
観ていてハラハラする。男はギョンミンに相当恨みを持っているようで、
しつこく付きまとう。ある時課長が助けてくれるのだが、ギョンミンはあ
る理由から課長がストーカーなのではと疑いを持つ。隙を見て警察に行く
が、その間にギョンミンの部屋で課長が殺されてしまい、ギョンミンは容
疑者になってしまう。そのためギョンミンは仕事も解雇される。
もう本当に怖い。何も悪いことはしていないのに自宅で人が死に、容疑者
にされ、職も失ってしまうギョンミンが気の毒。でも自宅で課長が殺され
たというのにそのまま部屋に帰るのはどうなの、と思った。普通怖くて帰
れないと思うのだが。そういう突っ込みどころも多少あるが、物語は最初
から最後まで恐怖に満ちている。所々で挟まれるグロテスクな描写も韓国
映画らしくていい。事件を担当する刑事も最初は無能で感じ悪く見えたが、
ギョンミンの言うことを信じてくれてからは彼女を守るようになってくれ
た。
真犯人の予想はつくのだが、それでも充分に怖い映画である。現実に起こ
り得る話だからだ。ギョンミンの頭痛の原因もゾッとした。都会で1人暮
らしをしている女性が危険なのは韓国も日本も同じ。とてもおもしろかっ
たが、残念なのはギョンミン役の女優が全然美人ではないということ。ス
トーカーに狙われるような役どころなら、もっとかわいい人の方が説得力
があったと思うのだが、何故彼女なのだろう。そこだけ残念だったが、韓
国のサスペンス映画はおもしろい。


香港の「リンゴ日報」が廃刊になった。香港はかわいそう。ずっとイギリ
ス領のままだった方が良かったのではないだろうか。これから香港はどう
なるのかな…香港マニアの私はとても気になります。



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家へ帰ろう

2021-06-22 22:41:24 | 日記
2017年のスペイン・アルゼンチン合作映画「家(うち)へ帰ろう」。

アルゼンチン・ブエノスアイレスに住む88歳の仕立て屋のアブラハム(ミゲル・
アンヘル・ソラ)は足を悪くし、娘たちに老人ホームに入れられることになる。
しかしアブラハムはそれを嫌がり、最後のスーツを70年以上会っていないポー
ランド人の親友に渡す旅に出る。ユダヤ人であるアブラハムは、ホロコーストの
際に親友に命を助けられていた。途中様々な困難にぶつかるが、色んな人との出
会いにより助けられながら旅を続ける。しかしアブラハムの病状は悪化していく。

ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老人が、70年の時を経て、友人との約束
を果たすためにアルゼンチンから故郷ポーランドへ旅する姿を描いたロードムー
ビー。88歳のユダヤ人の仕立て屋アブラハムは、娘たちや孫たちに囲まれ、家
族の集合写真を撮っても浮かない顔をしていた。住み慣れた自宅兼仕立て屋を引
き払い、老人ホームに入ることになっていたのだ。親友に最後に仕立てたスーツ
を見てアブラハムはあることを決意する。家族が皆帰ったその日の深夜、家を抜
け出しマドリッド行きの航空券を手配、故郷ポーランドに向けて飛行機に乗り込
む。
ポーランドに住む親友は、アブラハムがホロコーストから逃れた時に助け、匿っ
てくれた(友人の両親は反対したが)命の恩人だった。だがもう88歳だし、生きて
いるとは限らない。それでもアブラハムは彼のために縫ったスーツを渡したかっ
たのだ。マドリッド、パリを経由してポーランドに向かうが、アブラハムは絶対
にドイツの地に降りたくなかった。何とかしてドイツを経由せずにポーランドに
行きたいと思っているのだが、それは不可能なことだった。ワガママなじいさん
だなあと思ったが、恐ろしい思いを経験したユダヤ人はそう思っても仕方ないの
かもしれない。
フランス語が話せず苦労したりするが、知り合った人たちがアブラハムの旅を支
えようと協力してくれ、偏屈なアブラハムも心を開いていく。ある女性が考えた
「ドイツの地に降り立たずにポーランドへ行く方法」は感心したが笑えた。その
旅の過程でアブラハムの足は悪化し、病院へ搬送され、危うく切断を逃れる。そ
の後は看護婦が車椅子を押してくれてアブラハムは友人を捜す。人の情けが身に
沁みるというのはこういうことを言うのだろう。知り合った人たちの助けなくし
てはアブラハムはポーランドに辿り着くことはできなかっただろう。
ところでアブラハムが疎遠になっていた末娘と再会するシーンがあるのだが、こ
れは「リア王」っぽいエピソードである。仲違いをして(というかアブラハムが
怒って)疎遠になっていた末娘が他の娘たちよりもアブラハムのことを大事に思
っていた、とわかるシーンがある。アブラハムもそのことに気づき、何とも言え
ない表情をしていた。このシーンは感動的だった。ラストは涙が出た。観て良か
った、と思えるとてもいい映画だった。


ノエル少しやせてくれないかな~。抱っこすると重たいんだけど。


マティアス&マキシム

2021-06-19 22:39:01 | 日記
2019年のカナダ映画「マティアス&マキシム」。

マティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ド
ラン)は幼馴染で親友。友人の妹が撮る短編映画で男性同士のキスシーンを演じ
ることになった2人は、それをきっかけに心の底に眠っていた互いへの気持ちに
気づき始める。婚約者のいるマティアスは、親友に芽生えた感情に戸惑いを隠し
きれない。一方マキシムは新天地オーストラリアへ旅立つ準備をしていたのだが、
友情の崩壊を恐れ、思いを告げられないでいた。別れが目前に迫る中、彼らは本
当の思いを確かめようとする。

グザヴィエ・ドラン監督・主演作品。30歳のマティアスとマキシムは幼馴染で
親友。マキシムは近々オーストラリアに移住し新しい生活を始めようとしていた。
そんなある日、彼らの友人の妹が作る自主映画に出演して欲しいと頼まれ、映画
には彼らのキスシーンがあることに戸惑う。キスシーンを撮り終えた2人だが、
それをきっかけにお互いに意識し始め、特に婚約者のいるマティアスは困惑する。
物語の初めにマティアスたちが飲み会みたいなのをしていて、大勢でわちゃわち
ゃと楽しんでいるシーンが印象的。青年たちの「言葉遊び」みたいなものは何を
言っているのかよくわからなかったが。会話の中に「ドラゴンボール」や「ベジ
ータ」などが登場したり、料理に醤油を使ったりしているのがおもしろい。
マティアスの家は裕福なようだが、マキシムの家庭は問題があり、精神病で自分
のことも満足にできない母親と放蕩者の弟がいる。マキシムはオーストラリアへ
行くに当たって、母親が何とか生活していけるようにと気を配り、成年後見制度
の手続きなどを進めているのだが、母親はマキシムに文句を言ったり貶したりで、
とにかく観ていてイライラする。自分では何もできないくせに。マキシムの作っ
た料理に手もつけず、暴力を振るったりする。ケガをしたマキシムはさすがに怒
って出ていく。そんな母親でも見捨てられないのがマキシムの優しいところだ。
強制的に入院とかさせられないのだろうか。
長い間親友として過ごしてきたマティアスとマキシムは、自分たちは愛し合って
いるのだろうかと悩むことになるのだが、その過程の描写が繊細でとてもいい。
ドランの本領発揮という感じ。マキシムのオーストラリア行きが迫る中、2人は
どんな結論を出すのか気になる状況で物語は進行する。マティアスは婚約者に素
っ気ない態度をとるようになってしまうが、もちろん彼女には理由がわからない。
マティアス自身にも、そしてマキシムも、お互いの気持ちが恋なのか友情なのか
がわからないのだ。このわからなさがいい。
マティアスがマキシムの新しい勤め先に推薦状を送ると言っていたのに送らなか
ったのは、マキシムときっぱり縁を切るためなのか、それともマキシムにオース
トラリアへ行って欲しくないからなのかがよくわからなかった。けれどもラスト
でマティアスとマキシムが離れたところから見つめ合い、友人たちもその様子を
見守っているというシーンはとても良かった。切なくてキラキラしたラブストー
リーだった。


良かったらこちらもどうぞ。グザヴィエ・ドラン監督作品です。
胸騒ぎの恋人
わたしはロランス
Mommy/マミー
たかが世界の終わり
ジョン・F・ドノヴァンの死と生



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HOKUSAI

2021-06-15 22:29:23 | 日記
2020年の日本映画「HOKUSAI」を観に行った。

町人文化が華やぐ江戸の町の片隅で、食うこともままならない生活を送って
いた貧乏絵師の勝川春朗(柳楽優弥)。後の葛飾北斎となるこの男の才能を見
出したのが、喜多川歌麿(玉木宏)、東洲斎写楽(浦上晟周)を世に出した希代
の版元・蔦屋重三郎(阿部寛)だった。重三郎の後押しにより、その才能を開
花させた北斎は、彼独自の革新的な絵を次々と生み出し、一躍、当代随一の
人気絵師となる。その奇想天外な世界観は江戸中を席巻し、町人文化を押し
上げることとなるが、次第に幕府の反感を招くこととなってしまう。

江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の生涯を柳楽優弥と田中泯のW主演で描く。
青年期の北斎を柳楽優弥、老年期の北斎を田中泯が演じる。北斎は絵はうま
いが大衆に受け入れられる作品が描けず悩んでいた。特に江戸で人気の歌麿
に追いつきたいとの焦りがあったが、そこへとても若い写楽が現れ、焦りに
拍車がかかる。版元の蔦屋重三郎は北斎のことを「あいつはきっと化ける」
と目をつけており、何かと面倒を見ていたが、北斎はその気持ちを受け入れ
ることができずにいた。だが北斎は海へ行き、海水に浸かったことがきっか
けで自分が描きたい絵を描けるようになる。それは既存の浮世絵とは違うと
ても個性的なものだった。
海外の多くの芸術家にも影響を与えた北斎の物語、とてもおもしろかった。
W主演の柳楽優弥と田中泯の演技が素晴らしい。他のキャストも歌麿役の玉
木宏のセクシーさや戯作者・柳亭種彦役の永山瑛太の熱演など、皆とても良
かった。北斎は歌麿に「おめえの描く女には色気がねえんだよ」と言われて
しまい、悩む。だが海へ行って波の絵を描き、重三郎(今で言うプロデュー
サーである)のところに持っていったところ、「こう来たか」と言われる。
「おめえ、化けたな」と。北斎は「ただ描きてえと思ったもんを描いただけ
だ。いらねえならそう言ってくれ」と言う。このやり取りがとてもいい。重
三郎が北斎を認めた瞬間だった。北斎や歌麿や重三郎らのしゃべる江戸弁
(?)が心地よい。だが北斎の開花を見届けるかのように重三郎が急逝してし
まうのは悲しかった。
けれども当時の幕府が浮世絵や戯作本といった町人文化を快く思っていなか
ったことは知らなかった。現代の人が漫画や小説などを好きなのと同じよう
なものだと思うのだが、江戸の風俗を乱すと考えられていて、取り締まりが
厳しくなっていったらしい。年を取った北斎は娘の提案で江戸を離れるが、
絵への情熱は一向に衰えなかった。取り憑かれたように絵を描く北斎の姿を
田中泯が見事に体現している。そして雨の中で絵の具を持ち、いわゆる「北
斎ブルー」と呼ばれる独特の藍色が完成するシーンはとても鬼気迫るものが
あり、感動的だった。
ところで北斎は68歳の時に脳卒中で倒れ、命は助かったものの右手に痺れ
が残り、絵師として致命的な状況になるが、中国の医学書を読んで自分で薬
を作り、治してしまっている。すごいスーパーじいさんだったんだな。そし
て88歳で亡くなるまで絵を描き続けている。その情熱や執念はどこから来た
のだろう。ひたすら「自分が描きたいものを描きたい」という思いからだっ
たのだろうか。ラストシーンは音楽も含めてとても良かった。この映画は本
当は去年の5月に公開予定だったのだが、コロナの感染により延期になって
いた。1年待った甲斐があってとても見応えがありおもしろかった。




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