猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

レミング

2015-01-30 04:23:59 | 日記
2005年のフランス映画「レミング」。
有能なエンジニアのアランと妻のベネディクト(シャルロット・ゲンズブール)は、閑静な住宅地に
住む理想的なカップルである。ある晩アランの上司リシャールを夕食に招待した2人は、そこで
リシャールの妻アリス(シャーロット・ランプリング)の言動の異常さに驚く。上司夫妻は早々に
引き上げるが、その夜、ベネディクトは台所でハムスターのような動物を見つける。獣医に見せに
いくと、北欧で生息するレミングというネズミの一種だとわかる。北欧のレミングが何故このフラ
ンスにいるのか、獣医も首をかしげる。そしてその頃から、アランとベネディクトの間に不条理な
現象が起き始める。

フランスのサスペンス映画である。とてもおもしろかった。夢か現実か、妄想か事実かわからなく
なる、好きなストーリーだ。夫のアランが上司夫妻を夕食に招くが、上司の妻の挑発的で異常な
言動に、不穏な空気が流れる。上司はアランたちに謝罪して帰るが、その夜ベネディクトは台所で
北欧にしか生息しないはずのレミングを見つける。そして上司の妻アリスはアランの家を訪ねて
きて拳銃自殺する。この辺りから、ベネディクトは変貌していく。
サスペンスフルで奇妙な出来事が次々に現れて、目が離せない。全体的には静かな映画で、
淡々と不条理なことが進んでいくのだが、久し振りにおもしろい映画を観たと思った。
アリス役のシャーロット・ランプリングが怖い。アリスは序盤で死んでしまい、登場シーンは少ない
が、アリスの影は物語を覆い続ける。ベネディクトがおかしくなっていくのは、アリスのせいなのか、
レミングのせいなのか。
シャルロット・ゲンズブールの不安げな表情も良かった。シャーロット・ランプリングはこういう癖の
ある役がとてもうまいと思う。そういえば「メランコリア」でもこの2人は共演していたが、その時も
シャーロットは結婚式の雰囲気を台無しにしてしまうような陰湿で嫌な役で、はまっていた。
フランスとイギリス、Wシャルロット共演のこの映画、とても見応えがあって良かった。



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ザ・ネゴシエーター 交渉人

2015-01-27 02:37:03 | 日記
2000年のアメリカ映画「ザ・ネゴシエーター 交渉人」。
レイプ後に殺害されたと見られる女性の遺体が発見され、警察は容疑者として黒人の青年を
逮捕した。被告側の証人として法廷に呼ばれた彼の父親は、息子の無実を訴え、陪審員を
人質にとって立てこもる。そして交渉人として指名した原告側の検事補に、24時間以内に
息子の無実を証明するよう要求してくる。

なかなかおもしろかった。タイトルに交渉人とついているが、本職の交渉人は登場しない。
弁護士資格を持った検事補が交渉にあたる。初め、黒人青年が本当に殺人犯なのかわから
ないが、もしかしてこの人が真犯人?と思った人が真犯人だったことなど、ちょっと先が読める
展開ではあったが、結構良くできた映画だったと思う。
人種差別問題や貧富の差など、アメリカがずっと抱えている問題がポイントになっていて、アメ
リカの病める部分を考えさせられた。逮捕された黒人青年は、やったともやってないとも、一言
も言わない。信じてもらえないと諦めているからだ。
検事補は父親の要求を無茶だと思いつつも、事件を調べなおし、意外な事実をつかむ。この、
真相に辿り着くまでの過程が少しあっさりしすぎているというか、いきなりというか、その点が
やや不満で、もう少しじっくり描写して欲しかった感があるが、全体としては良かったと思う。



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薄氷の殺人

2015-01-24 02:49:42 | 日記
中国・香港合作映画「薄氷の殺人」を観にいった。
1999年。1人の男のバラバラにされた遺体が、6都市15ヵ所の石炭工場で相次いで見つかった。
妻に離婚を突き付けられていた刑事ジャン(リャオ・ファン)は、この猟奇的な事件の捜査にあた
っていた。やがて被害者がリアン・ジージュン(ワン・シュエピン)という男だと判明。容疑者として
あがったリウ兄弟は、逮捕時に抵抗し射殺され、真相はわからずじまいになってしまう。それから
5年後、この事件と同様の殺人事件が2件起きる。警察を辞職し警備員になっていたジャンも、
独自に事件の調査を始め、リアン・ジージュンの未亡人ウー・ジージェン(グイ・ルンメイ)に行き
着く。被害者たちはいずれも殺される直前にウーと親密な関係にあった。やがてジャンもまた
ウーに惹かれていく。

暗く重苦しい映画だった。全体的にセリフが少なく、映像で描写されていて、私の好きなタイプの
映画である。野外スケート場、登場人物たちの吐く白い息。中国の冬の寒さが伝わってくる。本当
に、観ているだけで寒さを感じるのだ。
サスペンスとしてはそれほどおもしろくはない。粗野な感じのジャンと、いかにも薄幸そうな無表情
のウーの関係性を観る映画だと思った。ウーは何者をも近づけず、誰とも関わりを持とうとしない。
そのウーの感情を持たないような雰囲気に、ジャンは惹かれていく。他の男たちと同様に。
事件の真相はどこにあるのか。ウーは悪女なのか?
なかなかおもしろかったが、この映画、ベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)を受賞している
のだ。そんなにいいかな?と思った。同じ中国のサスペンス映画なら、去年観た「罪の手ざわり」
の方が圧倒的におもしろかった。ただ「罪の手ざわり」はサスペンスというよりも人間ドラマに近い
かもしれないが。
それと、この映画、原題は「白昼の花火」というのだが、そのままで良かったのに、と思った。その
タイトルの方が合っている。どうしてわざわざ邦題をつけるのかなあ。



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イングロリアス・バスターズ

2015-01-20 21:43:02 | 日記
2009年のアメリカ映画「イングロリアス・バスターズ」。
1941年、第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下のフランスの田園地帯。「ユダヤ・ハンター」
の異名をとるランダ・ナチス親衛隊大佐は、行方不明になっているユダヤ人一家の手掛かりを
得るために酪農家の男を尋問する。床下にその一家がかくまわれていることを突き止めると、
部下に命じて床板越しにマシンガンで皆殺しさせるが、ただ1人、娘のショシャナ(メラニー・ロラン)
だけは逃げ出すことに成功する。
1944年、レイン米陸軍中尉(ブラッド・ピット)はユダヤ系アメリカ人8人からなる特殊秘密部隊を
組織していた。レインが部下に命じた任務とは、市民にまぎれて敵地奥深くに潜入し、ナチスを
血祭りにあげることだった。

クエンティン・タランティーノ監督のアクション大作である。第二次世界大戦下のフランスを舞台
に描く、ナチスに家族を殺されたユダヤ人女性と、情け容赦ないナチ狩りで知られるユダヤ系
アメリカ人部隊”バスターズ”が繰り広げる復讐劇だ。
ランダ大佐に家族を殺された女性ショシャナは、エマニュエルと名前を変え、映画館主として
身分を隠して生きている。ところがその町にランダ大佐が現れ、偶然にも食事を共にすることに
なる。ランダ大佐が去った後、緊張が解けてショシャナが涙を流すシーンは、痛ましい。家族を
殺した男と再び出会った時の驚きと恐怖はいかばかりだったろうか。このランダ大佐の明るさや
雄弁さが本当に憎々しい。自らをユダヤ・ハンターと名乗る恐ろしさ。ナチス・ドイツは何故あんな
残虐な行為ができたのだろう。
レイン中尉率いるバスターズはかっこいい。おもしろかったが、私には所々わかりにくい場面も
あった。あと、ブラッド・ピットの活躍が少なかったように見えたのが残念だ。
ラストは圧巻である。



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暮れ逢い

2015-01-17 04:33:14 | 日記
フランス・ベルギー合作映画「暮れ逢い」を観にいった。
1912年、ドイツ。鉄鋼業を営む裕福な実業家カール・ホフマイスター(アラン・リックマン)は
持病が悪化し、自宅療養を余儀なくされた。そこへ、彼の個人秘書として若く優秀な新入社員
フレドリック・ザイツ(リチャード・マッデン)がやってきて、屋敷に住み込みで仕事をすることに
なった。一つ屋根の下で暮らすうちに、カールの若き妻ロット(レベッカ・ホール)とフレドリック
は次第に惹かれあっていく。

パトリス・ルコントの新作である。大学を首席で卒業した身寄りのない若者が、勤め先の社長に
気に入られ、個人秘書として屋敷に住み込むように言われる。そして、そこで出会った社長の
年の離れた妻と愛し合うようになる…ロマンチックなストーリーだ。
そして夫はそれに気づいている。むしろ、初老の夫は若者を妻に「あてがった」ようにも感じる。
しかしやはり嫉妬はあり、そのため若者と妻は引き裂かれてしまう。更に第一次世界大戦が2人
の再会を阻む。美しく、悲しい映画である。
おもしろかったが、なんというか、「ルコントらしさ」があまり出ていなかったように思う。
官能や切なさ、というのだろうか、それが表現されていなかったように感じた。
俳優たちは良かったと思う。レベッカ・ホールはそれほど美人ではないが、20世紀初頭のファッ
ションが彼女を美しく見せていた。屋敷の中の調度品も良かった。
残念なのは、フランス映画で、舞台がドイツなのに、言語が英語だったこと。英語がどうもしっ
くりこない。メインの俳優たちが皆イギリス人なので仕方がないのだろうか。ドイツ語でやるか、
もしくは舞台をフランスに変えて(この映画は原作の小説がある)フランス語でやるか、どちらか
にして欲しかった。そうすれば映画の雰囲気もかなり違っていただろう。
やっぱりルコント作品はフランス語で観たい。



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