猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ジョニー・ハンサム

2019-09-26 22:01:00 | 日記
1989年のアメリカ映画「ジョニー・ハンサム」。

顔に奇形を持ち、その醜い顔ゆえ"ジョニー・ハンサム"とあだ名されるジョ
ニー(ミッキー・ローク)は、強盗の共犯者のサニー(エレン・バーキン)とラ
フェ(ランス・ヘンリクセン)の裏切りにより、親友のマイキー(スコット・
ウィルソン)を殺され、投獄されてしまう。更に囚人に刺され重傷を負う。
ジョニーは整形手術によって人生をやり直せると主張するレッシャー医師(
フォレスト・ウィテカー)の言葉を聞き入れ、手術を受けることに。その後、
生まれ変わったジョニーは出所し、就職して社会復帰するが、サニーとラフ
ェへの復讐心は消えてはいなかった。

醜い顔のジョニーは、強盗の仲間の裏切りに遭い、親友を殺され自分だけが
逮捕される。その後ジョニーは、整形手術によって人生をやり直せると言う
医師に説得され、仮釈放を条件に実験的手術を受けることになる。人並み以
上の顔に生まれ変わったジョニーは、出所して社会復帰を目指すが、裏切っ
た元の仲間への復讐を忘れることはできなかった。
ミッキー・ロークの特殊メイクがすごくて、とてもミッキー・ロークには見
えない。口にも何か細工をしているらしく、じゃべり方も変だ。それが整形
手術によって本当のハンサムに生まれ変わる。しかし顔は変わっても心まで
は変わってはいなかったという物語だ。子供の時からいじめられてきたジョ
ニーのことを思うと、哀れである。どれだけ苦労して生きてきたのだろう。
そして醜い顔ゆえ犯罪者にならざるを得なかった。
珍しくモーガン・フリーマンが嫌な奴の役をしている。ジョニーを逮捕した
刑事で、ジョニーは顔を変えても性根は変わっていない、また犯罪を犯すは
ずだと確信して、ジョニーを付け回すのだ。この刑事が本当に嫌味で不快で
ある。それだけモーガン・フリーマンの演技が良いということだろうけれど。
最初から最後まで、ジョニーがかわいそうな映画だった。




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特捜部Q 檻の中の女

2019-09-21 22:26:58 | 日記
2013年のデンマーク映画「特捜部Q 檻の中の女」。

コペンハーゲン警察殺人課の刑事カール・マーク(ニコライ・リー・コス)は、
捜査の失態から未解決事件班「特捜部Q」に左遷させられてしまう。捜査終
了と判断された事件の資料を整理するだけの仕事にやる気を見出せないカー
ルだったが、資料の中に5年前に世間を騒がせた美人議員ミレーデ・ルンゴ
ー(ソニア・リクター)失踪事件のファイルを発見し、その捜査結果に違和感
を抱く。助手アサド(ファレス・ファレス)と共に調査に乗り出したカールは、
やがて議員がまだ生きている可能性に辿り着く。

デンマークの作家ユッシ・エーズラ・オールスン原作のミステリー「特捜部
Q」シリーズの映画化。「応援を待った方がいい」という同僚の意見を無視
して事件現場に踏み込んだ刑事カールは、何者かに銃撃され、同僚の1人は
殉職、もう1人は寝たきりになり、自らも負傷する。復職したカールを待っ
ていたのは左遷だった。捜査終了と判断された事件の資料を整理するだけと
いう体のいい窓際族である。助手のアラブ系のアサドと共にファイルを見て
いたカールは、5年前の女性議員失踪事件に目をとめる。議員ミレーデは自
殺したことになっていたが、カールは何か納得のいかないものを感じた。ア
サドと共に調査を始めたカールは、ミレーデがまだ生きているのではないか
と思うようになる。
よくできたミステリー・サスペンス映画だと思った。物語はミレーデが生き
ていた頃(カールはまだ生きていると思っているが)と現在の捜査状況が並行
して描かれる。やがて観ている方はミレーデが監禁されていることを知る。
しかし監禁の犯人や理由はわからない。カールとアサドの地道な捜査によっ
て少しずつ事件の真相が見えてくる辺り、とてもおもしろい。監禁の理由は
ずっと昔のある出来事に遡り、それは悲しいものだった。
家庭もうまくいっておらず、無愛想なカールと、明るいアサドのコンビが良
かった。ラスト近くの緊迫した雰囲気も見応えがあって良かった。人の憎し
みや執念とはこんなにも深く長く続くものなのか、と思わせられた。地味だ
がおもしろい映画だった。




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夜明け

2019-09-17 22:46:09 | 日記
2018年の日本映画「夜明け」。

ある日、川辺を歩いていた初老の哲郎(小林薫)は、水際に倒れていた1人の
青年(柳楽優弥)を見つける。哲郎の自宅で介抱された青年は自らを「シンイ
チ」と名乗った。哲郎とシンイチは徐々に心を通わせ、哲郎は自身が経営す
る木工所でシンイチに技術を教え、周囲もシンイチを受け入れていった。し
かし、シンイチは本名を明かすことができないある秘密を抱えており、哲郎
もまた決して忘れることができない過去があった。

心に傷を負った初老の男と若者が心を通わせるドラマ映画だが、あまりおも
しろくなかった。誰にも言えない秘密を抱え、自暴自棄になっている青年と、
妻と息子を事故で亡くした男。青年はシンイチと名乗るが、男の死んだ息子
の名前が真一だったため、男は次第にシンイチに親子のような感情を抱き始
める。行く当てもなさそうなシンイチを男は自宅に住まわせてやり、自分が
経営する木工所で仕事を与える。
実は哲郎は子持ちの女性と結婚を控えていたが、死んだ妻子に未練たっぷり
の彼はこのまま結婚していいものか密かに悩んでいた。結婚の準備に積極的
でない哲郎に対して、相手の女性はイライラを募らせていた。何というか、
全てが中途半端で、すっきりしない。女性の6歳の娘は、母親と哲郎の関係
を敏感に感じ取って、「おじちゃん、ママのこと好きじゃないもん」とシン
イチに言う。けれども結局哲郎と女性は結婚してしまう。
シンイチは哲郎にだけ秘密を打ち明けるが、結局偽名を使って周囲と交わっ
ていることに限界を感じてしまう。ラストシーンも、シンイチがシンイチで
はなく自分として生きていく決意の表れなのだろうが、心に響くものがない。
柳楽優弥と小林薫の演技は良かったが、映画は大しておもしろくなかった。
柳楽優弥が美青年に写っていてそれも良かったが、感動するところのない映
画で残念だった。




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ジュリアン

2019-09-12 22:59:44 | 日記
2017年のフランス映画「ジュリアン」。

離婚したベッソン夫妻は11歳の息子ジュリアン(トーマス・ジオリア)の親権を
巡って争っていた。妻のミリアム(レア・ドリュッケール)はDV癖のある夫のア
ントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)に子供を近づけたくはなかったが、裁判所がア
ントワーヌに隔週の週末ごとにジュリアンへの面会の権利を与える。アントワー
ヌはジュリアンに、共同親権を盾にミリアムの連絡先を聞き出そうとするが、ジ
ュリアンは母を守るために必死で嘘をつき続けていた。アントワーヌの不満は徐
々に蓄積されていき、やがてジュリアンの嘘を見破る。

夫のDVをテーマにしたサスペンス映画。冒頭で、裁判所でジュリアンの陳述書
が読み上げられるが、ジュリアンは父親を「あの男」と言い、会いたくないと言
っているのに、共同親権が認められてしまう。何故裁判官は夫の暴力癖を認めな
かったのだろう。電話で連絡を受けた妻は絶句していた。確かに夫の弁護士は夫
の周囲の人たちの意見として、彼は真面目で穏やかな人物であると主張していた。
でも子供本人が会いたがっていないのに。ジュリアンは会いたくない父親に隔週
末会わなければならなくなってしまった。
父親はジュリアンたちの引っ越し先や母親の電話番号を聞き出そうとするが、ジ
ュリアンは母親を守るために色々と嘘をつく。父親の威圧的な態度が怖い。父親
に会うのはジュリアンにとってとてもストレスを感じることなのだ。まだ子供だ
というのにかわいそうだと思った。父親の実家で祖父母と一緒に食事をしている
時、父親がジュリアンにしつこく聞くので父親と祖父がケンカになってしまうシ
ーンがある。祖父は「どうしてお前はいつもそうなんだ。楽しくやっていたのに
台無しじゃないか」と怒る。それぐらい嫌な男なのだ。このシーンは印象的であ
る。
ラストも一応の解決を見せているが、おそらく本当の解決にはならないだろう。
この後どうなるかを考えたら、母子はきっと不安であるに違いない。DVという
のは病気だなと思った。DVの怖さがよくわかる映画だった。おもしろかった。



9月9日はノエルの2歳の誕生日でした。月日が経つのは早いなあ~。これからも
元気でね。でももうちょっとおしとやかになってね。









ノエルはベルのことが好きなのですが、愛情表現が激しいので、嫌がられていま
す。






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存在のない子供たち

2019-09-07 22:47:51 | 日記
2018年のレバノン・フランス合作映画「存在のない子供たち」を観にいった。

「両親を訴えたい。僕を産んだ罪で」裁判長の質問に堂々と答えた少年の名は、
ゼイン(ゼイン・アル=ラフィーア)。両親が出生届を出していないため誕生日
も不明だが、おそらく12歳くらいの年齢だ。彼の言うところの"クソ野郎"を
刺した罪で少年刑務所に収監中だが、弁護士を代理人に自らこの裁判を起こし
たのだ。中東の貧民窟で両親と兄弟姉妹と暮らしていたゼインは学校へも行か
ず、路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に働かされていた。唯一の支えだ
った仲良しの妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を出る。

重たい映画だった。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さな
かったために、自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていな
い。両親は存在しない子供たちを何人も産んでいるのだ。そして学校へも行か
せずに働かせている。何とひどいことだろうか。更に両親はまだ11歳の娘を、
アパートの大家と無理矢理結婚させてしまう。それを阻止できなかったゼイン
はそのまま家を出る。わずかなお金しかなく、食べ物も買えないゼインを見か
ねて、レストランで働くエチオピア移民の女性が自分のバラックへ連れて帰る。
赤ん坊と2人暮らしの女性は、子守りをする代わりにゼインを置いてやること
にする。
ゼインのたくましさ、生活力の強さには驚かされる。女性が不法就労の疑いで
警察に拘束されてからは、赤ん坊の面倒を見ながらお金を稼いで生きていくの
だ。このような子供はおそらく世界中にたくさんいるのだろう。映画の出演者
たちも、役と同様に大変な思いをしてきた素人の人たちばかりだと言う。ゼイ
ンの、「大人たちに聞いて欲しい。世話できないなら産むな」という言葉が胸
に突き刺さる。映画の終盤、ゼインの母親が妊娠していることがわかり、ゼイ
ン同様私も怒りを覚えた。あんなに貧困にあえいでいるのに、まだ子供を産む
というのか。ゼインは母親に「心がないのか」と言い捨てる。
この映画は、貧困、児童婚、移民、不法就労など色々な問題を含んでいる。特
に児童婚は世界的に問題になっているだけに、胸が痛んだ。ゼインは映画の中
で全く笑わないのだが、ラストシーンで子供らしい笑顔を見せる。それが救い
だった。




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