猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

コリーニ事件

2020-06-26 01:04:00 | 日記
2019年のドイツ映画「コリーニ事件」を観にいった。

新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)は、ファブリツィオ・コ
リーニ(フランコ・ネロ)という男の国選弁護人に任命される。知らずに引き受け
たライネンだったが、ドイツで30年以上模範的市民として暮らしていた67歳の
イタリア移民のコリーニが殺害したのは、経済界の大物実業家であるハンス・マ
イヤー(マンフレート・ザパトカ)で、彼はライネンの少年時代の恩人であったこ
とからライネンは愕然とする。ライネンは悩んだ末弁護人を受ける決意をする。
しかし物的証拠は揃っているのにコリーニはライネンに対して黙秘を続け、コリ
ーニとマイヤーの接点もコリーニがマイヤーを殺害した動機もわからないままで、
このままだとコリーニは終身刑になる可能性が高かった。事件の背景について調
べ始めたライネンは、やがて驚愕の真実に行き当たる。

ドイツの現役弁護士で社会派ミステリを多く執筆しているフェルディナント・フ
ォン・シーラッハの原作小説を映画化。とてもおもしろかった。新米弁護士カス
パー・ライネンはある殺人事件の国選弁護人に任命されるが、被害者は少年時代
からの恩人だった。動機について一切口を閉ざす被告人だったが、事件を調べる
うちにドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展していく。
主人公のライネンは貧しい母子家庭で育ったトルコ系である(原作では裕福なド
イツ人であるのを設定を大きく変更しているらしい)。子供の頃ハンス・マイヤ
ーとその孫フィリップと知り合うが、初対面の時フィリップは「帰れ、トルコ野
郎」と言い放つ。やっぱり白人には中東系移民に対する差別意識が根付いている
のだなと思った。でも結局ライネンとフィリップは親友になり、フィリップが事
故死するまで長い時間を共有するようになる。コリーニの弁護人となったライネ
ンに対して被害者マイヤーの孫でフィリップの姉であるヨハナ(アレクサンドラ
・マリア・ララ)は「弁護をしないで。祖父の恩を仇で返すの」と言うが、それ
でもライネンが弁護を引き受けると言うと、ヨハナが「祖父がいなかったらあな
たは今頃ケバブ店の店員よ」と罵るシーンは印象的である。この2人は一時期恋
愛関係にあったのだが。
黙秘を続けるコリーニだが、中盤物語は動いていく。コリーニが犯行に使用した
銃が現在では闇市場でも出回らないため入手困難である"ワルサーP38"であるこ
とを知るライネンだが、彼にはその銃に見覚えがあったのだ。そのことがコリー
ニの動機を解明する鍵になると考えたライネンは、コリーニの故郷であるイタリ
アの村を訪れる。そこでライネンはある老人と出会い、驚愕すべき事件の真実に
行き着くのだった。
コリーニ役のフランコ・ネロが素晴らしい。さすが名優である。セリフがとても
少ないので表情演技に引き込まれる。コリーニが背負ってきた傷や悲しみはとて
も深い。妻子もいない孤独なコリーニ。彼は唯一の肉親である姉と共に以前ある
行動を起こしていたのだが、法律の落とし穴によってそれは阻まれていた。姉も
亡くなり、彼には殺人を犯すことしか残っていなかったのだろう。あまりにも哀
れな人生である。後半は観ていて辛くなるようなシーンが続く。ドイツという国
は永遠にこの問題と向き合っていかなければならないのだろう、と改めて思った。
そして衝撃的で悲しい結末に言葉を失う。
この映画はミステリーであると同時に未熟な弁護士の成長物語にもなっていて、
とても見応えがあった。悲しい結末だがラストシーンのライネンの笑顔が救いか。
音楽も重厚な映画に合っていて良かった。終盤でコリーニがマイヤーを射殺する
シーンが回想として出てくるが、マイヤーが無抵抗だったのは贖罪の気持ちがあ
ったからだと思いたい。


大好きなア・ラ・カンパーニュのタルトも久しぶりです。


ソハの地下水道

2020-06-20 23:01:55 | 日記
2011年のポーランド・ドイツ合作映画「ソハの地下水道」。

1943年3月、ドイツ占領下のポーランド。下水修理業者であるレオポルド・ソハ
(ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ)は、副業として、空き家となったユダヤ人の家
から金目のものを盗み出して生活していた。そんなある日、ゲットーからトンネル
を掘って逃げてきたユダヤ人たちを見つけたソハは、最初は金目当てで下水道内に
彼らを匿うが、次第に彼らの悲惨な境遇に同情するようになり、心を通わせていく。

アグニェシュカ・ホランド監督による、第2次世界大戦中ユダヤ人たちを助けたレ
オポルド・ソハというポーランド人の実話映画である。ソハは地下水道で働いてい
たが、空き家になったユダヤ人の家から金目のものを盗み出して下水道に隠してい
るという小悪党のような人だ。仕事だけでは生活が苦しいのでそうやって妻と娘を
養っていた。ある日ソハはゲットーから逃げてきたユダヤ人たちが下水道に隠れて
いるのを発見し、ドイツ軍に売り渡すより彼らから金品を受け取る方が得だろうと
考え、そのまま匿うことにする。
ソハは最初は決して善意からユダヤ人たちを匿ったのではなかった。あくまでも金
目当てである。けれども食料品や生活用品などをユダヤ人たちに届けたり、彼らの
生活の面倒を見たりしているうちに彼らと心を通わせていき、次第に金目当てでは
なくなっていく。そのソハの心の変化は美しいと思った。ユダヤ人たちも暗く汚く
通気も悪い下水道でよく耐えていたものだと思う。地上に出れば殺されるか収容所
送りになるかだっただろうから、仕方なかったのだろうけれど。そういう時代があ
ったという事実が悲惨で痛ましい。
やがてユダヤ人たちも金品が底を尽くが、ソハはあるユダヤ人に自分の金を渡し、
「これを皆の前で私に渡せ。無償で援助していると思われたくない」と言うシーン
は感動的だ。そしてソハにも危険が迫る。何度かドイツ兵に見つかりそうになるの
だが、迷路のように入り組んだ下水道を知り尽くしているソハはその度にユダヤ人
たちを隠して切り抜ける。見つかったら自分も死刑なのだ。
そうやってユダヤ人たちは14ヵ月もの間潜伏生活を続け、やっと自由を手にする。
14ヵ月下水道にいたってすごい。眩しい地上に出て、ユダヤ人たちとソハやソハ
の妻が喜び合うシーンは本当に感動的。素晴らしいシーンだった。ソハはその後、
娘をかばってソ連軍のトラックにはねられて亡くなったという。「ユダヤ人を助け
たから天罰が下った」と悪口を言う人もいたそうだ。名もなき英雄の実話である。


良かったらこちらもどうぞ。アグニェシュカ・ホランド監督作品です。
オリヴィエ オリヴィエ




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アリス・スウィート・アリス

2020-06-15 22:30:31 | 日記
1977年のアメリカ映画「アリス・スウィート・アリス」。

12歳の少女アリス(ポーラ・シェパード)は、妹カレン(ブルック・シールズ)が母キャ
サリン(リンダ・ミラー)の愛情を一身に受けていると思い込み、日頃からカレンをい
じめていた。キャサリンは反抗的なアリスに手を焼いていた。カレンの初聖体拝領の
日、カレンが教会から姿を消し、その後他殺体で発見されるという事件が起きる。カ
レンのベールをアリスが持っていたことから、警察はアリスに疑いの目を向ける。

タイトルはかわいいが、ダリオ・アルジェント風の不気味なサスペンス映画である。
12歳のアリスは美少女の妹カレンを日頃からいじめていた。カレンの初聖体拝領が行
われる日、子供たちの列の最後にいたカレンを何者かが連れ去る。その何者かは黄色
いレインコート(恐らく学校規定のもの)に仮面をつけていた。そしてカレンは殺され、
後に発見され、教会は大騒ぎになる。警察が来て捜査を始め、カレンのベールをアリ
スが持っていたことからアリスが疑われるが、アリスは拾ったのだと言う。それでも
警察はアリスを調べることにする。ショックを受けるキャサリンの元に、姉夫婦や今
は再婚している元夫が駆けつける。
黄色いレインコートに仮面をつけた何者かがチラチラ現れ、人を殺傷していくのが何
とも気味が悪い。キャサリンの姉も襲われ、命は助かるが重傷を負う。姉はあれはア
リスだったと言い、キャサリンは激怒する。アリスは警察の取り調べでも奇行を示し、
子供の精神科の施設に入所させられる。アリスの無実を信じるキャサリンと元夫。元
夫はカレンを殺した犯人が捕まるまではこの町に留まると言う。しかし凶悪な殺人事
件は続く。
犯人はアリスなのか。犯人がわかっても物語はしばらく続くので、どういう風に決着
するのだろうと思いながら観ていたが、なかなかおもしろかった。歪んだ愛情が引き
金になっている事件なのだ。当時12歳だったブルック・シールズの映画デビュー作ら
しい。やはりとても美少女だった。がっつりとダリオ・アルジェントの影響を受けて
いるのがわかる映画で、アルジェント好きの私は楽しめた。将来を予感させる余韻を
残したラストもいい。


久しぶりの外食です( ;∀;)パスタ大好き


人間の時間

2020-06-08 23:06:40 | 日記
2018年の韓国映画「人間の時間」を観にいった。

休暇へ向かうたくさんの人々を乗せ、退役した軍艦が出航する。乗客には、クルーズ
旅行に来た女性・イヴ(藤井美菜)と恋人のタカシ(オダギリジョー)、有名な議員(イ・
ソンジェ)とその息子アダム(チャン・グンソク)、彼らの警護を申し出るギャング(リ
ュ・スンボム)たち、謎の老人(アン・ソンギ)など、年齢も職業も様々な人間たちがい
る。大海原へ出た広々とした船の上で、人々は酒、ドラッグ、セックスなど人間のあ
らゆる面を見せる。荒れ狂う暴力と欲望の夜の後、誰もが疲れて眠りにつき、船は霧
に包まれた未知の空間へと入る。翌朝、海は消え、自分たちがどこにいるのかわから
ず、そこから出られるのかもわからない状況に唖然とする人々は、生き残りをかけて
悲劇的事件を次々に起こしていく。

キム・ギドク監督の最新作。退役した軍艦でクルーズ旅行に来たたくさんの人々。そ
こにはイヴとタカシの日本人カップルもいた。有名な議員とその息子アダムの部屋が
皆とは違う特別室で、食事も豪華であることを知った乗客たちは船長に文句を言い始
めるが、ギャングのリーダーが議員なのだから当然だと言い、更に議員に警護を申し
出る。議員の方もギャングたちを利用するが、アダムは複雑な表情でその様子を見て
いる。そして皆がバカ騒ぎをして眠りにつき、朝目覚めると、船の周りから海が消滅
し、霧の中に浮かんでいることを知り、パニックになる。いつ元に戻れるのかもわか
らない中、船長と議員が食料の管理をすることになるが、やがて乗客たちの間で暴動
が起きる。
キム・ギドクはどうして日本人を主役にしたのだろう。藤井美菜とオダギリジョーの
セリフは日本語である。韓国語と日本語で会話が成立しているという不思議な世界観。
謎の老人役のアン・ソンギは韓国の国民的俳優で、セリフは一切ないがさすがの存在
感だ。老人は1人で黙々と謎の行動をとっているのだが、それは後半になってとても
重要な意味を持っていることがわかる。そして老人は何故かそこがどこなのか、自分
たちがどこにいるのかを知っているようだと、イヴは気づく。
イヴはギャングや議員やアダムに強姦され、妊娠してしまう。誰の子かわからないが、
タカシの子である可能性もあるため産むことを決心する。アイドルの位置にいるチャ
ン・グンソクは非常に衝撃的なシーンをいくつも演じていて、チャン・グンソクのフ
ァンの女性たちは驚いたことだろう。人々の暴動が過激になるにつれ、悲劇的な事件
が次々と起こり、殺し合いに発展していく。
藤井美菜という人を私は知らなかったが、韓国でも活動している人なのだそうだ。か
わいかった。ラストはバッドエンドなのかそうでないのかよくわからなかった。相変
わらずキム・ギドクは後味の悪い映画を作るのが好きなようだ。小学生の男の子とお
父さんが観にきていたが、お子様は鑑賞できませんと受付で断られていた。この映画
はR18指定なのだが、何も予備知識なしで来たのかな。残念、お父さん観たかっただ
ろうなあ。これは小学生に観せられる映画ではない。日本では公開にこぎつけたが、
本国韓国では未だに上映されていないらしい。私はおもしろかった。


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殺されたミンジュ
鰐ーワニー
絶対の愛


やっと映画館に行くことができました…感涙。





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