2019年のドイツ映画「コリーニ事件」を観にいった。
新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)は、ファブリツィオ・コ
リーニ(フランコ・ネロ)という男の国選弁護人に任命される。知らずに引き受け
たライネンだったが、ドイツで30年以上模範的市民として暮らしていた67歳の
イタリア移民のコリーニが殺害したのは、経済界の大物実業家であるハンス・マ
イヤー(マンフレート・ザパトカ)で、彼はライネンの少年時代の恩人であったこ
とからライネンは愕然とする。ライネンは悩んだ末弁護人を受ける決意をする。
しかし物的証拠は揃っているのにコリーニはライネンに対して黙秘を続け、コリ
ーニとマイヤーの接点もコリーニがマイヤーを殺害した動機もわからないままで、
このままだとコリーニは終身刑になる可能性が高かった。事件の背景について調
べ始めたライネンは、やがて驚愕の真実に行き当たる。
ドイツの現役弁護士で社会派ミステリを多く執筆しているフェルディナント・フ
ォン・シーラッハの原作小説を映画化。とてもおもしろかった。新米弁護士カス
パー・ライネンはある殺人事件の国選弁護人に任命されるが、被害者は少年時代
からの恩人だった。動機について一切口を閉ざす被告人だったが、事件を調べる
うちにドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展していく。
主人公のライネンは貧しい母子家庭で育ったトルコ系である(原作では裕福なド
イツ人であるのを設定を大きく変更しているらしい)。子供の頃ハンス・マイヤ
ーとその孫フィリップと知り合うが、初対面の時フィリップは「帰れ、トルコ野
郎」と言い放つ。やっぱり白人には中東系移民に対する差別意識が根付いている
のだなと思った。でも結局ライネンとフィリップは親友になり、フィリップが事
故死するまで長い時間を共有するようになる。コリーニの弁護人となったライネ
ンに対して被害者マイヤーの孫でフィリップの姉であるヨハナ(アレクサンドラ
・マリア・ララ)は「弁護をしないで。祖父の恩を仇で返すの」と言うが、それ
でもライネンが弁護を引き受けると言うと、ヨハナが「祖父がいなかったらあな
たは今頃ケバブ店の店員よ」と罵るシーンは印象的である。この2人は一時期恋
愛関係にあったのだが。
黙秘を続けるコリーニだが、中盤物語は動いていく。コリーニが犯行に使用した
銃が現在では闇市場でも出回らないため入手困難である"ワルサーP38"であるこ
とを知るライネンだが、彼にはその銃に見覚えがあったのだ。そのことがコリー
ニの動機を解明する鍵になると考えたライネンは、コリーニの故郷であるイタリ
アの村を訪れる。そこでライネンはある老人と出会い、驚愕すべき事件の真実に
行き着くのだった。
コリーニ役のフランコ・ネロが素晴らしい。さすが名優である。セリフがとても
少ないので表情演技に引き込まれる。コリーニが背負ってきた傷や悲しみはとて
も深い。妻子もいない孤独なコリーニ。彼は唯一の肉親である姉と共に以前ある
行動を起こしていたのだが、法律の落とし穴によってそれは阻まれていた。姉も
亡くなり、彼には殺人を犯すことしか残っていなかったのだろう。あまりにも哀
れな人生である。後半は観ていて辛くなるようなシーンが続く。ドイツという国
は永遠にこの問題と向き合っていかなければならないのだろう、と改めて思った。
そして衝撃的で悲しい結末に言葉を失う。
この映画はミステリーであると同時に未熟な弁護士の成長物語にもなっていて、
とても見応えがあった。悲しい結末だがラストシーンのライネンの笑顔が救いか。
音楽も重厚な映画に合っていて良かった。終盤でコリーニがマイヤーを射殺する
シーンが回想として出てくるが、マイヤーが無抵抗だったのは贖罪の気持ちがあ
ったからだと思いたい。
大好きなア・ラ・カンパーニュのタルトも久しぶりです。
新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)は、ファブリツィオ・コ
リーニ(フランコ・ネロ)という男の国選弁護人に任命される。知らずに引き受け
たライネンだったが、ドイツで30年以上模範的市民として暮らしていた67歳の
イタリア移民のコリーニが殺害したのは、経済界の大物実業家であるハンス・マ
イヤー(マンフレート・ザパトカ)で、彼はライネンの少年時代の恩人であったこ
とからライネンは愕然とする。ライネンは悩んだ末弁護人を受ける決意をする。
しかし物的証拠は揃っているのにコリーニはライネンに対して黙秘を続け、コリ
ーニとマイヤーの接点もコリーニがマイヤーを殺害した動機もわからないままで、
このままだとコリーニは終身刑になる可能性が高かった。事件の背景について調
べ始めたライネンは、やがて驚愕の真実に行き当たる。
ドイツの現役弁護士で社会派ミステリを多く執筆しているフェルディナント・フ
ォン・シーラッハの原作小説を映画化。とてもおもしろかった。新米弁護士カス
パー・ライネンはある殺人事件の国選弁護人に任命されるが、被害者は少年時代
からの恩人だった。動機について一切口を閉ざす被告人だったが、事件を調べる
うちにドイツ史上最大の司法スキャンダルへと発展していく。
主人公のライネンは貧しい母子家庭で育ったトルコ系である(原作では裕福なド
イツ人であるのを設定を大きく変更しているらしい)。子供の頃ハンス・マイヤ
ーとその孫フィリップと知り合うが、初対面の時フィリップは「帰れ、トルコ野
郎」と言い放つ。やっぱり白人には中東系移民に対する差別意識が根付いている
のだなと思った。でも結局ライネンとフィリップは親友になり、フィリップが事
故死するまで長い時間を共有するようになる。コリーニの弁護人となったライネ
ンに対して被害者マイヤーの孫でフィリップの姉であるヨハナ(アレクサンドラ
・マリア・ララ)は「弁護をしないで。祖父の恩を仇で返すの」と言うが、それ
でもライネンが弁護を引き受けると言うと、ヨハナが「祖父がいなかったらあな
たは今頃ケバブ店の店員よ」と罵るシーンは印象的である。この2人は一時期恋
愛関係にあったのだが。
黙秘を続けるコリーニだが、中盤物語は動いていく。コリーニが犯行に使用した
銃が現在では闇市場でも出回らないため入手困難である"ワルサーP38"であるこ
とを知るライネンだが、彼にはその銃に見覚えがあったのだ。そのことがコリー
ニの動機を解明する鍵になると考えたライネンは、コリーニの故郷であるイタリ
アの村を訪れる。そこでライネンはある老人と出会い、驚愕すべき事件の真実に
行き着くのだった。
コリーニ役のフランコ・ネロが素晴らしい。さすが名優である。セリフがとても
少ないので表情演技に引き込まれる。コリーニが背負ってきた傷や悲しみはとて
も深い。妻子もいない孤独なコリーニ。彼は唯一の肉親である姉と共に以前ある
行動を起こしていたのだが、法律の落とし穴によってそれは阻まれていた。姉も
亡くなり、彼には殺人を犯すことしか残っていなかったのだろう。あまりにも哀
れな人生である。後半は観ていて辛くなるようなシーンが続く。ドイツという国
は永遠にこの問題と向き合っていかなければならないのだろう、と改めて思った。
そして衝撃的で悲しい結末に言葉を失う。
この映画はミステリーであると同時に未熟な弁護士の成長物語にもなっていて、
とても見応えがあった。悲しい結末だがラストシーンのライネンの笑顔が救いか。
音楽も重厚な映画に合っていて良かった。終盤でコリーニがマイヤーを射殺する
シーンが回想として出てくるが、マイヤーが無抵抗だったのは贖罪の気持ちがあ
ったからだと思いたい。
大好きなア・ラ・カンパーニュのタルトも久しぶりです。