猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

亡国のイージス

2023-04-29 20:33:07 | 日記
2005年の日本映画「亡国のイージス」。

海上自衛隊のイージス護衛艦いそかぜの副館長・宮津(寺尾聰)が、国家に
反旗を翻し、某国のスパイと共謀して艦を乗っ取る。そして全ミサイルの
照準を東京首都圏内に合わせる。東京壊滅までに残された時間は10時間。
国家への復讐に燃える宮津から艦を取り戻すために、先任伍長・仙石(真
田広之)は、過酷な戦いに挑む。

福井晴敏氏の小説を阪本順治監督が映画化したアクション・サスペンス。
防衛大学生の宮津隆史は自身のホームページに「亡国の盾(イージス)」と
いう論文を実名で発表したが、その直後に謎の事故死を遂げる。隆史の父
で海上自衛隊護衛艦いそかぜの副館長・宮津が悲しみに暮れていると、そ
こに海上自衛隊海上訓練指導隊群訓練科長・溝口(中井貴一)が接触を図っ
てくる。しかし溝口は実は某国工作員・指導教官のホ・ヨンファという男
だった。宮津は息子の命を奪われたショックから、溝口の東京を壊滅する
作戦に賛同する。
正直言ってわからない部分もあり、登場人物もとても多いので混乱してく
るのだが、原作を読んでいればもっとわかっただろうと思う。某国工作員
となっているがどこの国のことかは一目瞭然である。溝口は貧困にあえぐ
本国での経験から、非常に冷徹で目的遂行のために高い意志を持っている。
いそかぜの中には某国工作員や、彼らの考え方に賛同した自衛隊員が複数
乗船しており、誰が誰だかわからない。溝口や宮津は「日本は守る価値の
ある国なのか。1度壊滅させるべき」という思想に傾倒しており、やがて
仙石は若い隊員たちの様子に不審なものを感じていく。
海上自衛隊の護衛艦が某国工作員たちに乗っ取られたりしたらどうなるだ
ろう。彼らは全ミサイルの照準を東京に合わせているのだ。日本映画にし
てはスケールが大きく(予算もたくさんかかっていそう)、迫力があってな
かなかおもしろかった。ただ人が次々と死ぬので、それは観ていて少し辛
かった。冷徹な溝口に比べて、宮津には迷いがあり、息子の復讐のためと
はいえ完全な悪人になり切れないところに宮津の人間らしさを感じて切な
かった。そして仙石は隊員たちが死んでいく中で、いそかぜを取り戻すた
めに奮闘する。
キャストが豪華。メインの真田広之、中井貴一、寺尾聰の他に吉田栄作、
谷原章介、豊原功補、光石研、佐藤浩市、原田芳雄とベテランのスター揃
い。自衛隊の中では防衛大出身者と一般大学出身者との間に待遇の違いが
あるということも初めて知った。それにしても吉田栄作って自衛隊の制服
がすごく似合うなあ。スタイルがいいからかな。主演の真田広之ももちろ
ん別の意味でかっこいいのだが、とにかく登場人物が多いため、真田広之
がそれほど目立っていない感じがしたのが残念。いそかぜの爆発シーンは
すごかった。


良かったらこちらもどうぞ。阪本順治監督作品です。
冬薔薇(ふゆそうび)



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フローズン

2023-04-24 22:12:25 | 日記
2010年のアメリカ映画「フローズン」。

ダン(ケヴィン・ゼガーズ)、ジョー(ショーン・アシュモア)、パーカー
(エマ・ベル)の若者3人はスキー場へ遊びに来ていた。1日楽しんだ彼
らは終業時間をわずかに超えてからもうひと滑りしようと、強引にリフ
トへ乗り込み山頂へ向かう。しかし、ちょっとしたリフトの係員の勘違
いから係員が設備の電源を切って帰宅、3人は山腹で停止し地上15mの
高さで揺れるリフトに取り残された。ゲレンデが営業を再開するのは1
週間後。3人は食料もなくマイナス20℃の中、何とか脱出を試みる。

サスペンスというかスリラーというか、実際にこういう事故って起きる
かも、起きたらどうしよう、というのが怖い映画だった。幼なじみのダ
ンとジョーは毎年スキーへ行っているが、その年はダンが自分の恋人パ
ーカーを連れてきており、ジョーは内心それが不満だった。パーカーは
初心者同然で、ダンと一緒に思い切り滑りたいと思っていたジョーにと
っては少し邪魔に感じたのだ。夜になるまで滑った3人は夕食を摂り、
再び滑りに行こうとするが、パーカーは男同士の時間を邪魔したくない
と遠慮する。パーカーは気を遣ったが、ダンとジョーに説得されて3人
で滑りに行くことにする。
リフトに乗ろうとした彼らは、営業は終了したと係員に止められる。そ
れに嵐が来ると言われる。しかし最後にもう1度だけ滑らせて欲しいと
いう3人の押しに負け、係員はリフトに乗せる。そこへ別の係員がやっ
てきて交代する。その際に「あと3人残っている」と伝えるが、係員は
ダンたちの前にリフトで帰ってきた別の3人組と勘違いし、彼らを確認
した後にリフトを停止してしまう。突然リフトが停止し、ダンたちは驚
く。山腹辺りで停止し、明かりが消えたスキー場で、3人は初め「もう
すぐ動くよ」と話し合うが、リフトが一向に動かないことに恐怖を感じ
始める。
極寒の中で3人は何とか戻る方法を考えるが、いい方法は思い浮かばな
い。しばらくすると除雪作業車が通りかかったため、3人は大声で助け
を呼び、スキー道具を車に向かって投げたりするが、気がつかれずに車
は行ってしまう。スキー場の次の営業は1週間後なのだ。寒さと空腹で
ダンたちは絶望感に襲われる。しかしダンはこのままここにいても3人
とも凍死するだけだと、飛び降りて助けを呼びに行くと言い出す。ジョ
ーとパーカーは反対するが、ダンは飛び降り、固い雪のせいで両脚を骨
折してしまう。
ダンの脚が骨折したシーンがグロテスクというか、観ていて痛い。折れ
た骨が皮膚を突き破って出ているのだ。他にもパーカーが素手でリフト
のバーを握ったまま眠ってしまい、手を離そうとすると皮膚が破れてし
まうシーンなど、「痛い」シーンが多い。肝心なところはネタバレにな
るので書けないが。この手の映画だと、最後に助かるのは誰なのか、を
想像する。何人助かるのか、あるいは全員死んでしまうのか。リフトの
係員のちょっとした勘違いでこんな大変なことになってしまったのだが、
有り得そうな物語だし、サスペンスフルで割とおもしろかった。


来客があったのでお風呂場に隠れたノエル。ノエルはすごく怖がりです。
でもこんなとこまで行かなくてもいいと思うのだけど













ベルは粗相をするようになりました。高齢なので認知症なのでしょうね
…ひどくなってきたのでおむつにしました。老老介護です


ミッドナイト・マーダー・ライブ

2023-04-19 17:41:06 | 日記
2022年のアメリカ映画「ミッドナイト・マーダー・ライブ」。

ロサンゼルス、午前0時。ベテランDJ、エルヴィス・クーニー(メル・
ギブソン)の深夜放送が始まる。リスナーの電話に、過激なジョークで
答えるのがウリの番組だが、その夜は普通の夜ではなかった。電話して
きたゲイリーと名乗る男は、エルヴィスのせいで恋人が自殺し、復讐の
ため彼の妻と娘を監禁したと宣言。エルヴィスがゲイリーと話している
間に、警察が自宅を捜索するが妻子の姿はない。そしてラジオ局では警
備員が殺され、多数の爆弾が仕掛けられていることが判明する。

人気ラジオDJが家族を誘拐した犯人に、声を頼りに迫っていくサスペ
ンス。ベテランDJのエルヴィスの番組では、リスナーからの電話に過
激なジョークで答えていくのが人気だった。ある夜の放送中、電話をか
けてきたゲイリーと名乗るリスナーが、エルヴィスの妻子を監禁したと
宣言する。ゲイリーはその理由について、恋人がエルヴィスのせいで自
殺したからだと言う。スタッフは警察に通報するが、エルヴィスの自宅
には誰もいなかった。そしてラジオ局では警備員が殺されているのが発
見され、多数の爆弾が仕掛けられていることも判明する。
エルヴィスはゲイリーと話しながら恐怖のどん底に突き落とされる。ゲ
イリーはエルヴィスの妻子を誘拐したと言うが、警察が自宅に踏み込ん
でも誰もいない。ゲイリーはエルヴィスに対する恨みを告げ、リモコン
でいつでも爆弾を起動させられることを言う。そしてエルヴィスに恋人
が自殺したことへの責任をとって、屋上から飛び降りて死ねと脅す。ラ
ジオ局にはその日入ったばかりのスタッフ、ディラン(ウィリアム・モ
ーズリー)もおり、彼も勤務初日に起きた事件に恐怖で怯えていた。
エルヴィスはゲイリーと話し続けるが、ゲイリーの恋人が自分のせいで
自殺したということに全く心当たりがなかった。やがてエルヴィスは、
ゲイリーがラジオ局内に潜んでいることに気づく。彼はどこからか、エ
ルヴィスやスタッフたちを見ているのだ。エルヴィスとゲイリーの顔の
見えないやりとりがスリリング。爆弾のリモコンを持っているゲイリー
を刺激しないようにエルヴィスは会話を続けるが、事件は更に過激な方
向へとエスカレートしていく。
やっぱりメル・ギブソンの演技が秀逸。ただ最初の方で出てくるエルヴ
ィスの娘が幼くて、あれ娘じゃなくて孫でしょ、と思った。メル・ギブ
ソンの子供にしては小さすぎてちょっとリアリティがない。細かいこと
なのでどうでもいいのかもしれないが。どんでん返しのラストはまあま
あ。某有名映画に似ているのだが、私はその映画が好きではなく、こち
らの方がいいかな…と思った。どちらにしてもアメリカ人が好きそうな
映画。でもビッグネームのメル・ギブソンが主演をやるような映画では
ないと思う。メル、もしかしてお金に困っているのだろうか。まあディ
ラン役のウィリアム・モーズリーがハンサムなので良し。




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ダークグラス

2023-04-14 21:38:40 | 日記
2022年のイタリア・フランス合作映画「ダークグラス」を観に行った。

イタリア、ローマで娼婦ばかりを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生
する。殺人鬼の4人目のターゲットになってしまったコールガールの
ディアナ(イレニア・パストレッリ)はある夜、白いバンに執拗に追い
かけられた末に、車が衝突する事故に遭う。一命はとりとめたものの
両目の視力を失ってしまったディアナは、同じ事故に巻き込まれて両
親を亡くした中国人少年のチン(シンユー・チャン)との間に特別な絆
が生まれ、2人は一緒に暮らすことになる。しかし、そんな彼女たち
を殺人鬼が付け狙う。

ホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェントの最新作。ローマで娼婦ばか
りを狙った猟奇的な連続殺人事件が発生。その4人目のターゲットに
されたコールガールのディアナは、あるホテルでの仕事帰りに、何者
かが運転する白いバンに追い回される。ディアナの車は、中国系移民
の親子が乗った車に激突する。ディアナは一命をとりとめるが視力を
失い、中国人一家の夫婦は死亡、後部座席に乗っていた幼い息子のチ
ンだけが無傷だった。
入院先で医師から「視力が回復する可能性はほとんどない」と残酷な
現実を告げられたディアナは、今ローマを震撼させている猟奇的な連
続殺人事件を捜査中の警部の事情聴取を受ける。警部の説明によると、
バンに乗って獲物を物色する正体不明のシリアルキラーは、すでに3
人の娼婦を残虐な手口で殺しており、ディアナはその4人目の標的に
されたのだという。退院して自宅に戻ったディアナの元に、視覚障害
者協会から派遣された歩行訓練士のリータ(アーシア・アルジェント)
がやってくる。
リータに白杖の使い方や歩道の歩き方を指導され、賢い盲導犬のネレ
アと一緒に暮らすようになったディアナは、少しずつ目の不自由な日
常に適応していく。そんなある日、ディアナの前に養護施設を脱走し
てきたチンが現れる。中国人一家を事故に巻き込んでしまったことに
負い目を感じていたディアナは、見知らぬ里親の元に行きたくないと
訴えるチンに同情し、彼を自宅に住まわせてやる。この、ディアナと
チンの姉弟のような信頼関係と友情がいいと思った。ディアナと盲導
犬ネレアとの信頼関係も。
だがディアナがチンやリータに支えられて盲目の生活に慣れていく間
も、殺人鬼はディアナを執念深く狙っていた。ディアナはあることで
犯人の怒りを買ったのだが、それが何なのかはラスト近くまで明かさ
れない。ネットのレビューで「犯人は大体わかった」と書いていた人
がいたが、私はわからなかった(私はそういう所は鈍い)。後半はディ
アナとチンが犯人から逃げるシーンが続くのだが、それが森の中で、
ちょっとアルジェントらしくないな、と思った。アルジェントの殺人
の舞台は都会であることが多いからだ。森や川を通ってディアナとチ
ンが必死で逃げるシーンはそれなりにスリリングではあるが。
アルジェントも80歳を過ぎて、昔の作品のようなホラー風味は薄く
なってきた感じはするが、サスペンス・ミステリーとしてはなかなか
おもしろかった。音楽も怖かったし(アルジェントの映画は音楽が怖
い)。殺人の手口も血塗れだし、ラストの犯人の結末のグロテスクさ
もアルジェントらしかった。


良かったらこちらもどうぞ。ダリオ・アルジェント監督作品です。
サスペリア2
フェノミナ
シャドー
愛しのジェニファー
ジャーロ



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残り火

2023-04-09 21:42:32 | 日記
2022年のデンマーク映画「残り火」。

建設会社の社長クリスチャン(ダール・サリム)は、妻レオノラ(ソニア・
リヒター)、高校3年の息子ヨハンと裕福で幸せな生活を送っていた。が、
彼は自分の会社の建築士である若い女性セニア(スス・ウィルキンス)と不
倫をしていた。クリスチャンはもうレオノラに愛情はなく、離婚して若く
美しいセニアと結婚しようと考えており、セニアからも離婚を迫られてい
た。ある日夜中にクリスチャンの携帯電話にメールが来たことで、レオノ
ラは彼の浮気を疑う。

不倫をテーマにした心理サスペンス。建設会社の社長クリスチャンは自分
の会社に勤める若くて美人なセニアと不倫していた。セニアからは「いつ
奥さんと別れるの?」と迫られ、クリスチャンも早く妻のレオノラと離婚
したいと考えていた。ところがある日セニアが夜中にメールを送ってきた
ことで、レオノラはクリスチャンの不倫を疑う。更にはパーティーの時に
クリスチャンとセニアが関係を持っている現場をレオノラが目撃してしま
う。レオノラが見ていることに気づいたセニアは挑戦的な視線をレオノラ
に送り、レオノラはショックを受ける。
夫婦の息子のヨハンは幼い時に大病を患い、レオノラはヨハンの看病や世
話のために仕事を辞めキャリアを捨て、ずっと家族に尽くしてきたのに、
夫に裏切られたことに激怒する。そしてレオノラは以前夫が金融詐欺事件
を起こした時も隠ぺいを手伝っていた。レオノラは愛人と別れないならそ
のことを警察に通報すると脅す。だがクリスチャンはセニアと別れること
ができない。レオノラとセニア両方から決断を迫られ、窮地に立たされた
クリスチャンはレオノラを殺害することを決意する。
女って怖い、と思わされる映画だった。セニアは愛人の立場なのに早く離
婚することをクリスチャンに迫るし、レオノラは夫の過去の犯罪を脅しに
使って愛人と別れさせようとする。不倫したクリスチャンが1番悪いのだ
けど、強い女たちの板挟みになっているクリスチャンが少し気の毒に思え
てくる。クリスチャンはちょっと気が弱いタイプのようだ。そんな男が強
い女たちから迫られたら、生きた心地がしないだろう。彼はレオノラ殺害
を実行に移すが、とんでもないミスをしてしまう。
物語は中盤からどんどんおもしろさが増してくる。そしてゾッとする怖さ
もある。クリスチャンはレオノラの昔の同級生に会って驚くべき話を聞か
される。レオノラにも大きな秘密があったのだ。レオノラはサイコパスで
はないだろうか。好きな男に対する執着というか独占欲が異常に強いよう
だ。レオノラのような女と結婚し、うっかり不倫をしてしまったクリスチ
ャンにはご愁傷様としか言いようがない。これからクリスチャンはどうや
って生きていくのだろう。彼が不倫をしてしまったのが悪いのだが、地獄
のような生活が待っているであろう彼には同情を禁じ得ない。おもしろか
った。




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