猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

2000人の狂人

2022-10-30 22:02:30 | 日記
1964年のアメリカ映画「2000人の狂人」。

車で旅行中に南部の小さな村に迷い込んだ6人の若者たちは、折しも村で
開催されていた「100年祭」の主賓として歓迎される。しかし、実はこの
村の住人たちは全員、100年前の南北戦争当時に北軍によって虐殺されて
いた。亡霊となって復活した村人たちは、若者たちを陽気に殺戮していく。

スプラッター・ホラーだが、スプラッター・コメディと言ってもいいかも
しれない。タイトルが印象的。南部のある田舎の村で、男が道路標識を入
れ替えて、通りかかった車を自分たちの村に誘い込んでいた。車に乗って
いるのは旅行者たちで、3台の車にそれぞれカップルが乗っていた。カッ
プルたちは村に入り込むが、そこで大勢の人々に大歓迎される。なんでも
その村ができて100年の祭りの最中だということだった。6人の若者は半
ば強引に宿泊していくように勧められ、ホテルを紹介される。
村はものすごいお祭りムードで、若者たちはあちこちに案内され、はしゃ
ぐ住人たちとゲームやダンスなどに興じるが、彼らは次第に不審なものを
感じるようになる。歓迎されすぎているのだ。変な村ね、と話し合う。や
がて1人また1人と若者たちは殺害されていく。この村の住人たちは100年
前の南北戦争当時に北軍によって全滅させられていたのだった。そして亡
霊となって復活し、北側から来た者たちを招き入れていた。そうとは知ら
ない若者たちは亡霊たちのえじきになっていく。
かなり古い映画なので、今観るとやはりチープである。血の色なんかいか
にも絵の具という感じだし、スプラッターと言っても大したことはない。
むしろ笑えるシーンも多く、バカバカしい感じもする。とにかく村人たち
のはしゃぎようが尋常ではなく、こんな村を訪れたら誰でも気味が悪いと
思うだろう。けれどもこの物語は虐殺された南部の住民による北部の人間
への復讐という重いテーマもあり、そこがポイントとなっているのだろう。
オカルト系でもどんなジャンルでも、アメリカ映画は戦争を絡めてくる映
画は多いな、と思った。南北戦争は珍しい感じだが。
南北戦争に何の関係もない若者たちは不運だった。何故殺されたのかもわ
からないままだっただろう。B級っぽいが、こういうカルト的な人気のあ
る映画も結構おもしろい。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ある公爵夫人の生涯

2022-10-26 22:42:19 | 日記
2008年のイギリス・アメリカ合作映画「ある公爵夫人の生涯」。

18世紀後半のイギリス。貴族の娘ジョージアナ・スペンサー(キーラ・
ナイトレイ)は、17歳の時に最も裕福な公爵の1人であるデヴォンシャー
公爵(レイフ・ファインズ)の元へ嫁ぐ。聡明で美しい彼女は公爵夫人とし
てイギリス中の人々に愛されるが、夫のデヴォンシャー公爵はジョージア
ナに男子の後継者を生むことだけを望み、自分はエリザベス・フォスター
(ヘイリー・アトウェル)という女性との愛人関係を続ける。

故ダイアナ妃の祖先にあたるデヴォンシャー公爵夫人のスキャンダラスな
実話を映画化。貴族の娘ジョージアナは有名なデヴォンシャー公爵の元に
嫁ぐが、公爵は彼女に関心を持たず、後継ぎの男子を生むことだけを要求
した。ジョージアナは17歳と若く、公爵はいくつかわからないが割と年
を取っているように見える。年の差婚のようだが、どうして美しいジョー
ジアナに関心を持たなかったのかわからない。ジョージアナは母親に公爵
の興味は犬だけよ、と言う(公爵は犬を2匹飼っていた)。ジョージアナは
やがて妊娠するが、2人続けて女の子で、公爵は苛ついていた。
そんな時ジョージアナはエリザベスという女性と知り合う。男の子が3人
いるというエリザベスをジョージアナは羨ましく思うが、エリザベスの夫
には愛人がおり、暴力も振るわれ、子供たちにも会わせてもらえないのだ
と言う。同情したジョージアナはエリザベスと仲良くなり、親友のような
関係になる。ところがエリザベスが城に出入りしているうちに、公爵と関
係を持ってしまう。ショックを受けたジョージアナは公爵に「私のたった
1人の友達と関係を持つなんて」と抗議し、エリザベスにも「あなたが私
を裏切るなんて」と泣きながら責める。エリザベスは「公爵くらい権力の
ある人に頼まないと子供に会わせてもらえない」と言う。
このエピソードは本当にひどい。この時代の貴族には側室がいて当たり前
だったのだろうが、何も妻の友達に手を出さなくても、と思う。そしてジ
ョージアナがエリザベスに「城から出ていって」と言っても彼女は出てい
かず、そのまま城に居座るのだ。ジョージアナは彼女にとても良くしてあ
げていたのに、恩を仇で返すとはまさにこのこと。私はエリザベスに腹が
立って仕方なかった。でもそのお陰でエリザベスは子供たちに会えたのだ
から、余程会いたかったのだろう。その気持ちもわからなくはない。そし
て公爵、ジョージアナ、エリザベスは広いテーブルで3人で食事をするよ
うになり、何とも妙な光景になるのだ。
ジョージアナと公爵の関係は最初から冷え切っているようなものだった。
その後ジョージアナには待望の男の子が生まれ、公爵も喜ぶ。けれどもジ
ョージアナにとっては娘も息子も平等にかわいい大切な存在だった。公爵
は娘たちのことはかわいがらなかったが。そしてジョージアナは昔なじみ
の男性と不倫をし、彼の子供を妊娠してしまう。それを聞いた公爵は生ま
れた娘を相手の男の家にやれと言う。ジョージアナは泣く泣くそうするし
かなかった。
ジョージアナの人生が不幸だったのかは一言では言えないと思う。裏切っ
た親友エリザベスも、終盤ではジョージアナを庇う行動をして、側に寄り
添っていた。完全に憎しみ合った訳ではないのかもしれない。それでもや
はりジョージアナに同情するが。ジョージアナの人生は何となく子孫であ
る故ダイアナ妃と重なってしまう。ちなみにダイアナ妃の結婚前の名前は
ダイアナ・フランセス・スペンサーである。映画はお城やドレスや社交界
の様子がとても豪華で目の保養になった。第81回アカデミー賞の衣装デ
ザイン賞を受賞しただけあるな、と思った。


うちのにゃんこたち写真の大きさがまちまちなのは何故かわかりませ
ん。gooブログの仕様が変わったようです(´・ω・`)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛する人に伝える言葉

2022-10-22 21:53:53 | 日記
2021年のフランス映画「愛する人に伝える言葉」を観に行った。

39歳で膵臓がんを患ったバンジャマン(ブノワ・マジメル)は、母・ク
リスタル(カトリーヌ・ドヌーヴ)と共にがんの権威であるドクター・エ
デ(ガブリエル・サラ)の元を訪れる。しかし「ステージ4の膵臓がんは
治せない」と率直に言われる。自暴自棄になるバンジャマンに対し、
エデは病状を緩和する化学療法を提案する。エデの助けを借りながら、
クリスタルは息子の最期をできる限り気丈に見守ることに決める。

重たい映画だった。演劇講師をしているバンジャマンは、人生半ばにし
てすい臓がんだと告げられる。セカンドオピニオンとして母・クリスタ
ルと共に名医と言われているドクター・エデの元を訪れるが、ステージ
4のすい臓がんは治らない、そして余命は半年から1年くらい、と言わ
れる。バンジャマンとクリスタルはショックを受けるが、緩和ケアの提
案を承諾することにする。バンジャマンは辛い体ながら演劇講師として
生徒たちに真剣に向き合っていく。
バンジャマンもクリスタルも余命を知っているのだから、2人ともどん
なにか辛く苦しいだろうと思う。クリスタルには慰める言葉も励ます言
葉も思い浮かばない。もし自分がバンジャマンと同じ立場になったらど
うするだろう、と考えてしまう。受け入れられるだろうか。バンジャマ
ンは自暴自棄になりつつも、次第に自分の運命を受け入れていく。けれ
ども体の不調は容赦なく襲いかかってくる。エデは素晴らしい医師だと
思う。常に患者たちの気持ちに寄り添っているのだ。
一方で、クリスタルには気がかりなことがあった。息子の病気は自分が
過去に息子にかけた心労のためではないかと悩むようになる。バンジャ
マンは若い時に当時の恋人との間に息子ができていた。だがクリスタル
はバンジャマンの将来を考えて、恋人と無理矢理別れさせていたのだっ
た。それ以来恋人が1人で息子を育て、バンジャマンは息子に会ったこ
ともなかった。クリスタルは元恋人に一応バンジャマンのことを電話で
伝える。ミュージシャンをしている息子は1人で会いにいくと言ったが、
結局病室の前まで行って会わなかった。
演劇の生徒たちが皆で写真を撮って、「早く戻ってきて」と書いたその
写真をバンジャマンは病室の壁に貼っているのだが、そのシーンはとて
も悲しかった。生徒たちはバンジャマンが重い病気だとは知っているが、
助からないとは知らないのだ。バンジャマンが少しずつ衰弱していく様
子は見ていて辛い。静かに流れていくが、悲しみに覆われた物語である。
バンジャマン役のブノワ・マジメルもだが、クリスタル役のカトリーヌ
・ドヌーヴ、エデ医師役のガブリエル・サラと、メインキャストの演技
が素晴らしい。ラストシーンも良かった。深く心に残る映画である。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

悪のクロニクル

2022-10-18 21:58:44 | 日記
2015年の韓国映画「悪のクロニクル」。

模範警官として名誉ある大統領賞を受賞し、昇進を目前にした刑事の
チェ課長(ソン・ヒョンジュ)は、同僚たちとの会食の後、帰宅途中の
タクシーの運転手にナイフで襲われる。乱闘の末に運転手を殺してし
まったチェは昇進への影響を恐れ、証拠を隠滅してその場を後にする。
ところが翌朝、チェが殺した運転手の死体が、警察署の目の前にある
工事現場のクレーンに吊るされた状態で発見される。チェを中心とし
てオ刑事(マ・ドンソク)や後輩のドンジェ(パク・ソジュン)たちと特
別捜査班が組まれるが、チェは事実を隠し通すべく奔走する。そんな
中で不可解な出来事が続発し、チェは次第に追い詰められていく。

サスペンス映画。冒頭である男が12人を毒殺した容疑で逮捕され、
男の息子(小学生くらい)がその様子を雨に打たれながら見ている様子
が写し出される。そのシーンは後に重要な意味を帯びてくる。
変わって現代、名誉ある賞を受賞した刑事のチェ課長は、同僚たちと
食事に行き、皆から祝われる。その際ネクタイピンを贈られる。帰宅
のためにタクシーに乗り込んだチェは家族に電話をした後ひと眠りす
るが、目を覚ました時タクシーが自宅とは別の方向へ走っていること
に気づく。チェは「この道じゃない。どこに行くんだ」と運転手に文
句を言うが、運転手は山道に車を停めて、ナイフでチェに襲いかかっ
てくる。そして揉み合った末にチェは運転手を殺してしまう。昇進が
気になるチェは指紋を拭き取り、立ち去る。
ところが翌朝、運転手の死体がクレーンに吊るされているのが発見さ
れ、街は大騒ぎになる。警察署長はその猟奇的な事件を警察の威信を
かけて解決するようにと、チェをリーダーとした特別捜査班を組む。
若手の刑事であるドンジェはタクシーを調べている時に皆でチェにプ
レゼントしたネクタイピンを見つける。ドンジェは考え込むが、誰に
も知らせずに隠し持った。このネクタイピンのことでチェが事件に関
わっているとドンジェは気づくが、何故誰にも言わないのかがわから
ない。ドンジェはチェを尊敬しているので、庇うつもりなのか。
物語はテンポ良く進み、次から次へと事件が起きる。タクシー運転手
の方から襲ってきたとはいえ、結果的に彼を殺してしまったチェ。自
分の痕跡は消したはずだが、少しずつほころびが見えてくる。チェが
焦っている様子、追い詰められていく様子にこちらも緊張してしまう。
チェ、ドンジェ、オ刑事のメインキャストの演技がとてもいい。冒頭
のシーンはどう関わってくるのか、その真相に驚かされる。韓国のサ
スペンス映画にしてはおとなしめというか、きつい暴力描写などはな
いが、おもしろかった。そしてラストはとても切ない。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリーピー 偽りの隣人

2022-10-14 22:05:34 | 日記
2016年の日本映画「クリーピー 偽りの隣人」。

元刑事で犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)は、以前の同僚である野上刑事
(東出昌大)から6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、唯一の
生き残りである長女の早紀(川口春奈)の記憶を探るが、真相に辿り着け
ずにいた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子(竹内結子)は、
隣人の西野(香川照之)一家にどこか不審なものを感じていた。未解決の
一家失踪事件と隣人一家の不可解な関係。2つのつながりに高倉が気づ
いた時、康子の身に深い闇が迫っていた。

前川裕氏の小説「クリーピー」を黒沢清監督が映画化したサスペンス・
ミステリー。ある事件をきっかけに警察を辞めた元刑事の高倉は、現在
は犯罪心理学を大学で教えていた。高倉と妻の康子はある日新居に引っ
越し、隣家とその隣に引っ越しの挨拶に行く。隣家は留守であり、その
隣の家では初老の女性が出て来て、「うちはこういうお付き合いはして
いないから」と言って手土産を突き返される。高倉と康子はちょっとシ
ョックを受け、隣家にはまた明日行ってみようと話す。
翌日康子が隣家を再び訪れると、主人の西野に会う。しかし西野は会話
がかみ合わず、康子は違和感を抱く。康子は高倉に「お隣の西野さんっ
て感じが悪かった」と話した。後日高倉も西野と出会うが、やはり西野
はどこか変な印象で、高倉も康子に「あの男は何かおかしい。近所付き
合いはやめておけ」と言う。この後の康子の行動がよくわからないのだ
が、西野を気持ち悪いと感じ、夫からも付き合うなと言われたのに、シ
チューを持っていったり、西野の家に上がったり西野とその娘を自宅に
上げたりと、親しくなっていく。
全体的に不可解なシーンが多く、よくわからない映画だった。「クリー
ピー」とは「ぞっとする、ぞくぞくする」という意味で、タイトル通り
最初から不穏な空気が漂い、ぞっとする感じである。さっぱりわからな
いという訳ではないが、登場人物たちの行動が皆おかしい。どうしてそ
こでそうするの?どうして単独行動をするの?といった具合。刑事たち
も考えが足りないというか。何だかそれぞれにイラッとする。
康子は生活に不満を持っているようなのだが、それがどんな不満なのか
よくわからない。夫が刑事時代多忙であまり一緒にいられなかったから
なのか?でも今は刑事を辞めているのに。それに若くない夫婦なのに子
供がいないのも気になった。子供は作らずに夫婦で楽しむ主義なのか?
一家失踪事件の生存者の早紀がいくら傷ついているとはいえ何故あんな
に高倉に事情を聞かれるのを嫌がるのか。「アナタが話さないと事件解
決の糸口が掴めないでしょ」と言いたくなる。
高倉は野上刑事と一緒に捜査をしていくうちに(と言ってももう刑事で
はないので調べるのにも限界はあるが)、隣人の西野一家と一家失踪事
件につながりがあることに気づく。前半はいかにもミステリーという感
じでおもしろいのだが、終盤がちょっと有り得なさすぎるというか現実
離れしているというか、ちょっと興ざめな感じがした。西野は明らかに
サイコパスだが、事件の真相は「西野がサイコパスだから」で片付ける
しかないのだろうか。キャストの演技は皆とても良かったが(特に香川
照之の演技は本当に怖くて不気味だった)、何だか不完全燃焼という感
じで残念だった。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング









コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする