猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

狂気の行方

2024-08-17 21:22:31 | 日記
2009年のアメリカ・ドイツ合作映画「狂気の行方」。

サンディエゴの閑静な住宅街で殺人事件が起きる。実母を殺した
ブラッド・マッカラム(マイケル・シャノン)は何者かを人質にと
って自宅に立てこもる。ヘイヴンハースト刑事(ウィレム・デフ
ォー)らはブラッドの説得にあたる一方で、現場に駆け付けたブ
ラッドの婚約者イングリッド(クロエ・セヴィニー)やブラッドを
よく知る舞台演出家のリー・マイヤーズ(ウド・キア)、そして事
件現場となった向かいの家の住人ロバーツ母娘から、事件に至る
経緯を聞く。

1979年にアメリカで実際に起きた実母殺害事件から着想を得た、
サイコ・サスペンス。監督はヴェルナー・ヘルツォーク、製作総
指揮にデヴィッド・リンチ。過干渉な母親と2人暮らしで極度な
マザコンだったブラッドは、ペルーに行ってから人が変わったよ
うになり、異常な言動を繰り返していた。また、舞台俳優だった
ブラッドはギリシア悲劇の主演俳優として稽古に参加していたが、
母殺しの役を演じる中で更に言動が異常なものとなっていき、遂
には役を下ろされてしまう。
ブラッドの異常さに恐怖を感じた母親は、ある朝、向かいのロバ
ーツ家にブラッドと共にやってくる。ところがロバーツ母娘と4
人でコーヒーを飲んでいる最中、ブラッドは舞台で使うつもりで
叔父からもらった剣で母親を殺してしまう。海外に旅行したのを
きっかけに人が変わったようになるというのはたまに聞く話だが、
そこまで影響を受けるともはや精神病なのではないかと思う。帰
国してからブラッドは自分が演じるギリシア悲劇の主人公と自分
を重ね合わせていたのではないかと思う。
主人公がどうして母親を殺すのかはわからないが、ブラッドは日
頃から過干渉な母親とマザコンである自分に嫌気がさしていたの
ではないだろうか。そして母親を殺し、自宅に人質をとって立て
こもってしまう。ヘイヴンハースト刑事は説得にあたるが、ブラ
ッドはピザを注文しろなどと言い、ヘイヴンハースト刑事は銃を
置いてブラッドにピザを渡す。ブラッドの目的が何なのかわから
ず、刑事たちは困惑する。ブラッドの婚約者のイングリッドや舞
台演出家たちがやってくるが、イングリッドは極度なマザコンの
ブラッドとよく婚約する気になったなあと思う。
私はヴェルナー・ヘルツォーク監督の映画を知らないので、この
映画がヘルツォーク監督らしい映画なのかわからない。私から見
ればデヴィッド・リンチ・ワールドだ。色使いなんかも、ブラッ
ドの異常な表情なんかも。ブラッドは間違いなく統合失調症だと
思う。実際の母殺し事件に着想を得ているそうだが、どこまで参
考にしているのだろう。オチまで一緒だったとしたら、その事件
の犯人は相当頭がおかしい。まさか一緒ではあるまい。デヴィッ
ド・リンチの妙な映画、という感じだったが、それほどおもしろ
くなかった。



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シチリア・サマー

2024-08-11 21:43:55 | 日記
2022年のイタリア映画「シチリア・サマー」。

1982年、初夏のイタリア・シチリア島。バイク同士で衝突し、気を
失った17歳のジャンニ(サムエーレ・セグレート)に、16歳のニーノ
(ガブリエーレ・ピッツーロ)が駆け寄る。生い立ちも性格も異なる
2人は惹かれ合い、芽生えた友情は激しい恋へと変化していく。一緒
に花火を打ち上げたり、秘密の約束を交わしたりするなど、2人で過
ごすかけがえのないひとときは、しかし、ある日突然終わりを迎える。

実話を基に、少年たちの初恋を描くラブストーリー。舞台は1982年
初夏、16歳のニーノはバイク同士でぶつかり、気絶して息もできな
くなった17歳のジャンニに駆け寄り、人工呼吸を施し命を救う。2
人は育ちも性格もまるで違うが、この運命的な出会いをきっかけに、
友情が芽生え瞬く間に激しい恋へと変化していく。ニーノの家族は両
親と姉、姉の幼い息子。家族は庭で昼食を摂るが、ニーノの両親はニ
ーノに卒業祝いのプレゼント、オートバイを用意していた。
両親や親戚からたくさんの愛情を注がれ、明るく素直に成長したニー
ノはさっそくバイクの試運転に出かける。一方別の町で整備工場に勤
めるジャンニは、ゲイであることをからかわれていた。その頃、ジャ
ンニは町から遠く離れた客の家に、バイクを納車しに行くよう指示さ
れる。ジャンニは出かけようとするが、知り合いの男から体の関係を
迫られ、激しく抵抗したジャンニは納車するバイクで走り出す。激怒
した男はバイクで追いかけ、しつこく絡んでくる。そこへ帰宅途中の
ニーノと出くわし、道に倒れ込む。男は逃げるが、呼吸が苦しそうな
ジャンニにニーノは人工呼吸を施す。
そして自分の不注意だったからと、何かあったらすぐに連絡するよう
にと、連絡先を書いたメモをニーノはジャンニに手渡す。ジャンニも
得意先へ無事バイクを納車し、帰宅する。ジャンニはまた問題を起こ
したら矯正院へ送り返すと、整備工場の経営者から言われていた。ジ
ャンニはバスに乗ってニーノの家へ行き、花火師であるニーノの父親
にここで働かせて欲しいと頼む。父親は花火師の仕事は間に合ってい
るが、別の仕事を紹介すると約束する。そしてニーノの家族と昼食を
食べ、ニーノに「いい家族だね」と言う。
ニーノの父親は自分の兄が責任者をしている採石場で働くよう勧める。
ニーノはジャンニの仕事が終わる頃やってきて、ニーノが独り占めし
て泳いでいる川の入り江に連れて行く。そこで泳いだり、ニーノは自
分の夢は花火師の父親の跡を継ぐことだと話したりする。2人の友情
が恋に変わるのに時間はかからなかった。2人はかけがえのない時間
を共にするが、彼らがゲイだという噂が流れる。40年前のイタリア
は保守的だったのだろうか。宗教的なものもあったのかもしれないが、
同性愛者は嫌悪されていたようだ。シチリアの青い空と海、新緑、美
しい風景がたくさん見られるからこそ、ラストシーンは悲惨だ。これ
が実話だと思うと尚更かわいそうである。何故2人の少年はあんな目
に遭わなければならなかったのだろう。重たい映画だった。



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コンクリート・ユートピア

2024-08-03 21:56:59 | 日記
2023年の韓国映画「コンクリート・ユートピア」。

世界規模の大災害により壊滅した韓国・ソウル。唯一崩落しなかった
マンションには生存者たちが押し寄せ、様々な犯罪が横行する無法地
帯となっていた。危機感を抱いた住民たちは代表を立て、居住者以外
を追い出し、住民のためのルールを作って「ユートピア」を築くこと
にする。住民代表に選ばれたのは、902号室に住む冴えない男・ヨン
タク(イ・ビョンホン)だった。しかしやがて彼はユートピアの権力者
のように振る舞い出し、その狂気をあらわにする。

大災害により荒廃した韓国・ソウルを舞台に、唯一崩落を免れたマン
ションに集まった生存者たちを描くサバイバル・サスペンス。世界を
未曾有の大災害が襲い、韓国の首都ソウルも一瞬にして廃墟と化した。
唯一崩落しなかったファングンマンションには生存者が押し寄せ、不
法侵入や殺傷、放火が続発する。危機感を抱いた住民たちは主導者を
立て、居住者以外を追放して住民のためのルールを作り、「ユートピ
ア」を築くことに。住民代表となったのは、体を張って火事を消化し
た902号室に住む職業不明の冴えない男ヨンタクで、住民投票によ
って選ばれた。
602号室には公務員のミンソン(パク・ソジュン)と看護師のミンファ
(パク・ボヨン)の若い夫婦が暮らしていた。マンションには他の倒壊
したマンションの住民たちが助けを求めて避難していた。住民には飲
み水が配給され、食料などは物々交換が行われていた。ミンソンの部
屋に隣の倒壊したマンションの住民である少年とその母親が「子供が
寒がっている」と助けを求めてきた。ミンソンは追い返そうとしたが、
ミンファは2人を部屋に泊めてあげることにした。
マンションの住民たちは集会を開き、今後マンション以外からやって
きた部外者の対応について話し合い、投票の結果追い出すことに決ま
った。代表のヨンタクは火事の消化の時に協力したミンソンを防犯隊
長に任命し、兵役経験者を防犯隊員に選出する。やがて住民たちと部
外者たちの間に大乱闘が勃発するが、ヨンタクは部外者全員を追放す
る。ヨンタクはマンションは住民たちのものだと叫び、住民たちは「
ヨンタク万歳」と称えるが、ミンファはその光景を不安そうに見つめ
る。
ヨンタクは権力者として君臨していくうちに次第に狂気をあらわにし
ていく。そんなヨンタクに傾倒していくミンソンと、不信感を抱くミ
ンファ。だが、ヨンタクには秘密があったのだ。人間は極限状態にな
った時に本性が出る。代表に選ばれたヨンタクは、マンションを自分
のものだと思ったのだろう。そしてミンソン始め彼に追随する人々も
次第に行動が過激になっていく。最後の方は本当に悲惨だ。ユートピ
アではなくディストピアである。ヨンタクが代表になったからそうな
ったのか、ヨンタクでなくともそうなったのか。ラストシーンには一
筋の光が射すが、それでも悲惨なことには変わりはない。壊滅したソ
ウルの映像は圧巻で、おもしろかった。ミンソン役のパク・ソジュン
がかっこよかった。


しばらく体調不良のため、ブログの更新も皆さまのブログへの訪問も
できませんでした。またよろしくお願い致します。

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