2021年の日本映画「草の響き」を観に行った。
工藤和雄(東出昌大)は、昔からの友人で今は高校の英語教師をしている佐久間
研二(大東駿介)に連れられ、病院の精神科にやってくる。和雄は東京で出版社
に勤めていたが、精神のバランスを崩し、妻の純子(奈緒)と共に故郷の函館に
帰ってきたばかりだった。医師の宇野(室井滋)から自律神経失調症と診断され、
運動療法として毎日ランニングをするように言われる。街を走り始めた和雄は、
雨の日も真夏の日もひたすら同じ道を走り続ける。その繰り返しの中で、和雄
は徐々に心の平穏を取り戻していく。やがて彼は、路上で知り合った高校生た
ちと不思議な交流を持つようになる。
佐藤泰志氏の小説を斎藤久志監督により映画化した人間ドラマ。精神に変調を
来した和雄は休職し、妻の純子と共に故郷の函館に帰ってきた。和雄は友人の
研二に一緒に病院に行って欲しいと頼み、精神科を訪れる。和雄はそこで医師
に自律神経失調症だと診断され、治療のために走ることを勧められる。和雄は
投薬と共に毎日函館の街を走り続け、次第に心に落ち着きを取り戻していく。
自律神経失調症で運動療法としてランニングを勧めるって本当にあるのだろう
か。私は運動が大嫌いなので、私だったらいくら医師に言われても絶対走りた
くないのだが。
最初の方で高校生が上手にスケボーをしているシーンがあり、私は初めそれを
和雄の高校時代の回想かと思ったのだが、現在進行形の話だった。その少年が
少し東出昌大に似ていたのもありそう思ったのだが、これはあえて似た俳優を
起用したのだと思った。彼が和雄の投影図になっていくのは観ていくうちにわ
かっていく。和雄が走っている時、広場で花火をしていた高校生たちが一緒に
走り出す。この日を境に3人は時々一緒に走るようになる。高校生たちもまた
悩みを抱えていた。
和雄の妻の純子は孤独だった。東京出身の彼女には夫とその両親以外頼れる人
はいない。研二はよく和雄の様子を見に来てくれるが、やはり研二は和雄の友
達である。和雄が病院に行くのを自分ではなく研二に頼んだことも、純子にと
っては複雑だっただろう。純子は献身的に和雄を支えるが、純子の心の支えは
飼い犬だけである。支えられる和雄と支える純子。東出昌大と奈緒の演技がと
てもいい。やがて純子の妊娠が明らかになるが、どうして夫が自律神経失調症
という不安定な状況で子供を作るのかなあ、と思う。和雄は本心では嬉しいの
だが、困惑してしまい、それが純子を傷つける。夫婦の心は次第にすれ違って
いく。
ある日スケボーのうまい高校生が海で死んでしまい、それをもう1人の高校生
から泣きながら聞かされた和雄は愕然とする。その謎の死は和雄にとって大き
なショックであり、和雄は薬を大量に飲んで救急搬送されてしまう。病院のベ
ッドに拘束された状態で目を覚ました和雄に、宇野医師は「工藤さん、大変な
ことをしてしまいましたね」と厳しく言う。昏睡状態の和雄を見つけたのはも
ちろん純子だが、純子がこの時自分の無力さを痛感したのは想像に難くない。
動くことを許可された和雄が純子の携帯電話の留守電にメッセージを入れるシ
ーンは本当に切ない。ラストで走り出した和雄の晴れやかな顔にストップモー
ションがかかり、それがとてもいい。ハッピーエンドにはならなかったが、希
望を感じさせるラストである。
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工藤和雄(東出昌大)は、昔からの友人で今は高校の英語教師をしている佐久間
研二(大東駿介)に連れられ、病院の精神科にやってくる。和雄は東京で出版社
に勤めていたが、精神のバランスを崩し、妻の純子(奈緒)と共に故郷の函館に
帰ってきたばかりだった。医師の宇野(室井滋)から自律神経失調症と診断され、
運動療法として毎日ランニングをするように言われる。街を走り始めた和雄は、
雨の日も真夏の日もひたすら同じ道を走り続ける。その繰り返しの中で、和雄
は徐々に心の平穏を取り戻していく。やがて彼は、路上で知り合った高校生た
ちと不思議な交流を持つようになる。
佐藤泰志氏の小説を斎藤久志監督により映画化した人間ドラマ。精神に変調を
来した和雄は休職し、妻の純子と共に故郷の函館に帰ってきた。和雄は友人の
研二に一緒に病院に行って欲しいと頼み、精神科を訪れる。和雄はそこで医師
に自律神経失調症だと診断され、治療のために走ることを勧められる。和雄は
投薬と共に毎日函館の街を走り続け、次第に心に落ち着きを取り戻していく。
自律神経失調症で運動療法としてランニングを勧めるって本当にあるのだろう
か。私は運動が大嫌いなので、私だったらいくら医師に言われても絶対走りた
くないのだが。
最初の方で高校生が上手にスケボーをしているシーンがあり、私は初めそれを
和雄の高校時代の回想かと思ったのだが、現在進行形の話だった。その少年が
少し東出昌大に似ていたのもありそう思ったのだが、これはあえて似た俳優を
起用したのだと思った。彼が和雄の投影図になっていくのは観ていくうちにわ
かっていく。和雄が走っている時、広場で花火をしていた高校生たちが一緒に
走り出す。この日を境に3人は時々一緒に走るようになる。高校生たちもまた
悩みを抱えていた。
和雄の妻の純子は孤独だった。東京出身の彼女には夫とその両親以外頼れる人
はいない。研二はよく和雄の様子を見に来てくれるが、やはり研二は和雄の友
達である。和雄が病院に行くのを自分ではなく研二に頼んだことも、純子にと
っては複雑だっただろう。純子は献身的に和雄を支えるが、純子の心の支えは
飼い犬だけである。支えられる和雄と支える純子。東出昌大と奈緒の演技がと
てもいい。やがて純子の妊娠が明らかになるが、どうして夫が自律神経失調症
という不安定な状況で子供を作るのかなあ、と思う。和雄は本心では嬉しいの
だが、困惑してしまい、それが純子を傷つける。夫婦の心は次第にすれ違って
いく。
ある日スケボーのうまい高校生が海で死んでしまい、それをもう1人の高校生
から泣きながら聞かされた和雄は愕然とする。その謎の死は和雄にとって大き
なショックであり、和雄は薬を大量に飲んで救急搬送されてしまう。病院のベ
ッドに拘束された状態で目を覚ました和雄に、宇野医師は「工藤さん、大変な
ことをしてしまいましたね」と厳しく言う。昏睡状態の和雄を見つけたのはも
ちろん純子だが、純子がこの時自分の無力さを痛感したのは想像に難くない。
動くことを許可された和雄が純子の携帯電話の留守電にメッセージを入れるシ
ーンは本当に切ない。ラストで走り出した和雄の晴れやかな顔にストップモー
ションがかかり、それがとてもいい。ハッピーエンドにはならなかったが、希
望を感じさせるラストである。
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